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悪役令嬢、領地を満喫する②

 

 執務室へ着くと、机の上には大量の書類が私を待ち構えていた。

 私がローランド領地へ来るまでは、伯父様が領主代理として領地経営をしていたが、流石に七歳の私が領地へ来てすぐに領主の仕事が出来るわけもなく、私は出来る範囲で叔父の仕事を手伝いながら、少しずつ領主の仕事を覚えていった。

 隣国へ留学してからは、領地の為に役に立つ授業を選択し、専門的な事も学んだ。

 長期休暇の際には領地へ戻り、学んだ知識と前世の記憶を頼りに領地改革に力を入れた。

 私の考えに叔父も賛成してくれて、力を貸してくれた。在学中でありながら、途中からは私が領地経営の殆どを任されるようになっていた。

 叔父は私が学園へ戻っている間に、私の考えた提案を進めてくれていたりと、補佐として回ってくれる様になった。

 そのお陰で、仕事が上手く回る様になり、ローランド領地も八年で大分変わった。良い方に。


 ローランド領地はアスタルト王国最北端にある辺境の地で、周囲は険しい山と年中荒れた海に囲まれている。

 夏はそこまで暑くなく快適だが、冬になれば極寒の地へと変わる。毎年沢山の雪が積もり、作物も上手く育たない為、その分冬に備えて貯蓄が必要になる。それに寒さを凌ぐ為の薪も必要なので、冬が来る前に食料と薪を集めるのに時間が取られてしまい、他の事に手が付かず、道路の整備や領民の家の補修などが後回しになっていた。

 医療関係も揃っていない為、数年に一度は伝染病が広まり、病と飢えに苦しむ時期もあった。平民の為の学校もなく、子ども達も大人と一緒に働いて暮らしている現状で、ローランド領地にはこれといって特産品もない為、収入も得られない。ましてや、この辺境の地にわざわざ山を越えて商人が来る事もなかった為、自給自足の生活が強いられていた。

 思っていた以上に、ローランド領地は深刻な問題を抱えていたのだ。


 そこで、私はローランド領地が豊かに領民が安心して暮らせる様にするにはどうすれば良いか考えた。

 忘れていたが、この世界には魔法がある。しかし、魔法と言っても生活に役立つ程度のもので、使える人も限られていたし、人を攻撃をするような威力の魔法は存在しなかった。

 私も魔法は使えなかった。乙女ゲームのシナリオでも、悪役令嬢である私は魔法が使えないと分かっていたので最初から諦めていた。

 なので、そこまで魔法に気に留めていなかったのだが、この世界には魔法とよく似た魔石という物もあって、魔石はその名の通り石に魔力がこもっていて、その石を使うと、お湯を沸かせたり、食材を冷やしたり、暗い所を明るく照らしたりと魔法と違ってすぐに魔力切れを起こさず、持続性のある役に立つ石だ。

 そして、驚く事にローランド領地にはその魔石が大量に取れる鉱山があったのだ。領民達は魔石をただの黒い石だと思って気にも留めていなかった。

 叔父にその事を話すと、叔父は目を丸くして驚いていた。寧ろ、何故今まで分からなかったんだと言いたいが、叔父は領民達と共に朝から晩まで働いていた。

 少しでも領民達の暮らしがより良くなる為に、寝る間も惜しんで考えていたのだ。そこまで気が回るはずもない。

 そう思うと、私は王都でなんて贅沢な暮らしをしていたのかと思い知らされた。父はローランド領地がこんな状態と知りながら、領地を叔父に任せて宰相になり王都でぬくぬくと暮らしていたのかと思うと悲しくなった。

 すると叔父は私に優しく微笑みながら話してくれた。


『君の父上は、兄さんはローランド領地を捨てた訳ではないよ』

 そう言って優しく私の頭を撫でながら、叔父は教えてくれた。

 父は宰相の傍ら、ローランド領地の為に資金や物資などを毎月送っている事、少しでも領民の為にと商人がローランド領地へ来られるように道路の整備をするのに、資金と人材派遣を国王陛下に直談判していたらしい。しかしローランド領みたいに問題を抱えている領地は幾らでもいる。

 アスタルト王国が一つの領地だけを優遇する訳にもいかず、それでもローランド領地の為に出来る限りの事を父もしてくれているのだと、叔父は教えてくれた。


『それにね。リリーが領地へ来てくれたお陰で、今ローランド領は少しずつ良い方向に変わろうとしている。僕は今まで領地を見て来たつもりでいたけど、何も見れていなかった。君が魔石の事を教えてくれなければ、一生知らずにいたかもしれない。兄さんにも勿論感謝はしている。けれど、リリーが此処へ来てくれた事にも本当に感謝しているんだ。ありがとう、リリーベル』

 叔父のその言葉に私は涙を流した。

 悪役令嬢だから、死ぬのが嫌だから、断罪イベントを回避したいから、なんて理由で王都から逃げるように領地へ来て、来てみたら領地は予想以上に大変な状況で悩む事もあるけど、領地を変えたいと思ったのは本心だから、私は領地の為に領民の為にもっと頑張らなくていけない。

 この魔石さえ上手く使えば、薪を集めなくても、部屋を温められる。大量にあるという事は、結界もどきが作れるのではないかと考えた。そうすれば、前世でいうビニールハウスみたいに冬でも作物を育てられる。

 冬の為に蓄えをしなくても済み、その分違う事に仕事を充てられると考えた。


 時間は掛かったけれど、もう冬の為に貯蓄をしなくても、薪を集めなくても良くなった。

 そのお陰で子ども達は大人と一緒に仕事をしなくても良くなり、ローランド領地に学校を作り、子ども達が通えるようになった。

 そして、新たに魔石を使った魔具の開発や、領地内の道路の整備、領民達の家の修繕、領地を囲む城壁を作り始めた。全て、ローランド領の者が請け負っている。領民に支払う賃金も、整備や修繕などに掛かる資金なども、新たに開発した魔石を使った生活用品を隣国に売る事で賄われていた。

 何故、自国で売らず隣国に売っているかというと、ローランド領地は最北端にある辺境の地であり、王都に行くよりも隣国へ行く方が早いし、運搬する時間も半分に削れる。それに隣国は貿易が盛んな国で、他国の往来も多い為、他国にも売れるのだ。

 それに隣国には私が設立した商会もある為に物が売りやすいのだ。私が設立したという商会も、隣国へ留学中に同じ学園に通う商会の息子と話していく内に意気投合し、一緒に商会を設立する事にしたのだ。

 ただ、アスタルト王国の貴族である私が堂々と隣国で商会の会頭として名乗る事は出来ない為、ベルという偽名を使う事にした。そして、私が会頭に彼が渋々副会頭になる事で商会が設立されたのだ。

 但し、卒業したら私は領地へ戻ってしまうのと、表に出られない私の代わりに経営は彼に任せ、魔具や商品の生産など、運営は私がする事で話はまとまった。


 こうして、私は留学中も領地経営の傍ら商会の運営と多忙な日々を送りながらもそつなくこなしていた。


「我ながら良く頑張ったわ」

 これまでの事を振り返りながら、ポツリと呟く。

 机の上に置かれた書類に一通り目を通した所で私は椅子に深く腰掛け、休んでいると執務室の扉を叩く音が聞こえた。



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