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悪役令嬢、領地を満喫する①

 

 王都を去り、ローランド領地で暮らし始めて八年が経ち、私も十五歳になった。

 この国では、十二歳で社交界デビューをし、十五歳で学園に通い、十八歳で成人とされている。

 社交界デビュー?勿論、していない。お茶会だの、舞踏会など、パーティーには一度も参加していない。招待状は度々届くが、丁重にお断りしていた。

 その頃は、丁度隣国の学園に留学していたから、行くにも行けないし、元より行く気もなかった。社交界デビューは向こう(隣国)で済ませたし問題ない。


 私は考えたのだ。このままでは、社交界デビューで王都に行かなければいけない。そうなれば、嫌でもレオン殿下と顔を合わせる事になる。

 更に十五歳になれば、強制的に乙女ゲームの舞台である学園に入学する事になる。

 シナリオを避けようにも避けれない事態がやってくるのだ。私が学園でヒロインと絡まなくても、レオン殿下を避けて過ごそうとも、乙女ゲームの補正力でどう転ぶかわからない。

 どうすれば、社交界デビューをしなくて済むか、学園に通わなくて済むかを考えに考え、国の法律や歴史、読める物は全て読んだ。


 そして、私は結論に辿り着いたのだ。


 アスタルト王国は十五歳から三年間学園に通う。貴族は結婚でもしていない限り、絶対に通わなくてはならない。でも、隣国はアスタルト王国とは違い、子どもの学問に力を入れていて、十二歳から十七歳までの六年間学園に通い、その後は就職もしくは専門的な知識をより詳しく学ぶ為に、一年間学院に通える制度があった。そこは前世と少し似ている。

 更に嬉しい事に、隣国の学園には飛び級という制度もあった。

 そして、アスタルト王国から留学する際は、社交界デビューはしなくても良いという書物も見つけた。アスタルト王国の宰相である父にも確認済み。

 そして学院まで進み卒業出来れば、アスタルト王国に卒業証明書を提出すれば、学園には通わなくても良いと分かったのだ。

 この事実を知った時には、私の為の法律だと一人泣いて喜んだものだ。


 勿論、私は十二歳なるとすぐに手続きを済ませ、隣国へ留学した。

 父と叔父には『もっと沢山勉強をして、お父様と叔父様のお役に立ちたいの』と、涙ながらにお願いしたら即OKを頂いた。

 そして、四年後無事学院まで行き、めでたく最年少首席で卒業させてもらった。

 学園と学院を普通に通えば、七年在籍する事になる。けれど、私は前世の記憶と今世の必死の勉強のお陰で、飛び級しまくり半分の四年で卒業した。

 前世で大学まで出てて良かったとこの時ばかりは思った。

 そして、私は今日長かった留学生活を終え、ローランド領地へ戻ってきたのだ。

 まあ、長期休暇の際は必ず領地に帰って来てたけどね。



「お嬢様、お帰りなさいませ。ご卒業おめでとうございます」

「ありがとう。爺や」


 馬車の長旅を終え、邸の前へ着き馬車を降りるとすぐに執事長である、カタールが出迎えてくれた。

 私の持っていた鞄を受け取ると、邸まで歩き出した。


「おう、帰って来たか。卒業おめでとう。早かったな」

 庭の方から声が聞こえて来たので、私は声のした方向へ振り向くとそこには黒髪を一つに束ねた長身で目付きが鋭く、ラフな格好で桑を担いだ男性が立っていた。

 私は久しく見る彼の姿に自然と笑みが溢れる。


「あら、オルガ。久しぶりね。貴方は相変わらず、目付きが悪いわね」

 私がオルガと呼んだ男性は、私よりも十歳年が離れていて、ローランド家の庭師兼番人として仕えている。風貌からは想像出来ないが、世話好きで兄というよりお母さん的存在だ。


「相変わらず口の減らねぇ、お嬢様だな」

「ふふっ、それは褒め言葉かしら?それより、貴方がお探しの方なら、まだ馬車の所にいらしたわよ」

「そうか。どうせ、アイツの事だから荷卸しに手間取ってんだろ。ちょっと行ってくるわ」

 私の言葉にオルガはニヤリと笑うと、私はオルガが探しているであろう人の居場所を教えてあげる。


「一ヶ月ぶりの再会ですものね。()()()と一緒にゆっくりして来たらどうかしら?貴方の事ですもの。もう仕事は終わらせているのでしょう?何かあれば、私は執務室にいるから」

「すまない。彼奴にも伝えておくが、お嬢も無理するな」

「ありがとう」

 私の言葉にオルガの表情が柔らかくなるのがわかった。オルガは申し訳なさそうに私にお礼を言うと、馬車の方へと歩いて行った。

 何を隠そう、オルガと叔父様は恋人同士なのだ。

 叔父が今だに独身の理由は、その彼がいるからだった。この国は男同士の恋愛は問題ないのだが、法律上結婚は出来ない為、叔父は未婚のままなのだ。

 因みにオルガは二十五歳、叔父様は三十歳で、勿論二人の立ち位置はオルガの年下攻め一択である。

 叔父は三十歳の割には若く見え、その上色気まであるので、令嬢達から人気があるのだが、本人曰く女性はガツガツ来られるので苦手なのだと。

 若い頃はそれなりにお付き合いはあったらしいが、結婚までは行かず、そんな時にオルガと出逢い、今に至るらしい。


 そして、叔父様は私の卒業式典に参加するべく、領地から半月かけて此方に来てくれた為、往復して一ヶ月領地を空けていた。その間、二人は一ヶ月間離れていた為、久しぶりの再会なのだ。恋人同士、久々の再会なのだから私なりに気を遣っている。

 オルガと叔父様が恋人同士なのは、邸の者も承知済みで、邸の女性達は彼らをいろんな意味で温かく見守っている。勿論、この私も。

 リアルBLに悶え苦しみながら、時には影から覗っ……見守りながら楽しく過ごしている。


 邸へ入ると、使用人達に盛大に出迎えてられながら、お土産を渡して行くと、その足で私は自室ではなく、執務室へ向かった。



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