表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

連悪幻夢

婚約破棄

作者: DirtyTom



「ただいま」

「お帰りなさい。遅かったのね。飲んでるの」

「ああ」

「どうしたの。思いつめた顔をして」

「転勤が決まったんだ」

「何ですって。いつ、何処へ」

「明日の朝、仙台だ。君が眠っているうちに出ていく」

「急すぎる」

「本当は一週間前に告げられていた。でも君の悲しむ顔を見るのがつらくて言いだせなかった。くそ、課長の奴、何かと目の敵にしやがって。婚約の報告をしたとたんにこうだ。こんな嫌がらせまでするなんて……」

「私もいきたい」

「それじゃ、ルール違反だ」

「ルールなんてどうでもいい。私はあなたのことが……」

「駄目だ。僕の都合に君までつきあう必要はない」

「でも」

「僕だってつらい。君なしの生活なんて考えられない。でも、仕方がないんだ。君はここに残るべきだ」

「そうだったわね。ごめんなさい」

「謝らなければいけないのは、こっちの方だ」

「あなたは悪くないわ。謝らないで」

「すまない」

「いつかまた会えるかしら」

「僕のことは忘れて、早く新しい恋人を見つけてくれ」

「そんなこと言わないで」

「君には幸せになってほしいんだ。僕にはもう何もしてやれないからな。本当は今にも心が張り裂けそうだ」

「まあ。これから淋しくなるわね」

「ああ。淋しくてたまらないよ」

「元気でね」

「君も」

「馬鹿ね、私は関係ないでしょ」

「そうだったね」

「心配しないで。次の人とうまくやるわ」

「ああ。君のことは一生忘れないよ」

 それから彼女は音もたてずに部屋から出ていった。

 彼は部屋に一人残って、いつまでも彼女のことを考えていた。

 もう二度と彼女のような女性には出会えないだろうと思った。

 しかし何だって、急に転勤なんかになったのだろう。会社に逆らって、この社員寮に無理やり残ることもできない。

 ふう、と煙草の煙を吐き出す。


 そもそも今回の転勤とは、彼と彼女を引き離すために、彼の上司がわざと仕組んだものだった。

 ただし、決して嫌がらせなどではなく、あくまでも彼の身を案じて。


 お察しの通り、彼女とはこの部屋に居着いた地縛霊である。





かなり前に書いたものの手直しです。ありふれたオチですみません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=700314536&s
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ