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教師の陰謀  作者: 谷川 亮輔
第一章
5/5

観察

九月一日


始業式当日。隼人は別室で担任を待っていた。


これから教室に入って自己紹介をすることになっていたが、そういうことには慣れていたので特に緊張はしていなかった。


数分して担任が入ってきた。


「片桐、いよいよ行くぞ。みんないい奴らだから気楽にいけよ。」


聞き飽きたような励ましの言葉を受けながら隼人は担任とともに教室に向かった。


「よしみんな席座れー。転入生だ。」


教室に入ると、右奥の席に一昨日会った新堂がヘッドフォンにパーカーのフードをかぶりパソコンに夢中になりながら座っているのが見えた。校則はまだよく見ていなかったがどうやら隼人の以前の高校よりゆるいらしい。


しかし新堂を含めた数人以外の約二十人ほどは、担任が声をかける前にほぼ全員が普通の身だしなみで静かに着席していた。


「えーと、初めまして。今日からこの高校に転入することになりました、片桐隼人といいます。よろしくお願いします。」


特ににこやかに言うこともなく名前だけを伝えたからなのか拍手などは起こらず、ほぼ全員が真顔で見つめていた。新堂は相変わらずパソコンを見ていた。


「みんな、仲良くしてやってくれよ。お前の席はあそこだ。」


担任は前から二列目の、黒板から見て右側にある窓側の席を指差した。この時期の転入であるから一番後ろの隅の余った席にでも座れるのではないかと期待していたのだが、教室の一番端の席であるからまだマシであった。


隼人はゆっくり席に着いた。隼人が新堂にも劣らない無愛想な人間であったからなのか、もう転校生などに興味を持たない年頃であるからなのか、小中学生の時のように隼人の周りの席の人達が話しかけてくることもなかった。


隼人の方も友達をつくることには興味がないので話しかけようともしなかったし、部活動など人と関わるものに所属しないことに決めていた。


担任の話が終わったあと全員で教室を出た。始業式は体育館で行われるらしい。


転校して初日の始業式、隼人はいつもクラス全員の後ろに着いていき、自分のクラスにはどういうグループがいくつ存在するかを観察し、クラスの大体の雰囲気を掴むことが癖になっていた。


今回のクラスも今まで隼人がよく見てきたようなグループ分けだった。いつも一緒に行動を共にする二人組、取っ組み合いをしながら歩く男三人組、リーダー的女子とそれについて行く女子三人の四人組、他にもいくつかのありふれたグループがあった。


しかし今までと違うのは孤立している人がなかなか多いところだ。大抵は孤立している人など一人か二人でその中にいじめられっ子が一人ぐらいはいたものだが、今回のクラスは今確認できるだけでも五人ほど一人で静かに廊下を歩いている。その中にはあの新堂も含まれていた。おそらく一人が好きなのだろう。


皆で仲良くしようなどの風潮はなく、それぞれが思うままに学生生活を送るクラス。そんな雰囲気を感じ取りながら隼人は誰とも話すことなく体育館へと向かった。


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