イケメンと美少女
イケメンと美少女がいました。
付き合ってました。
二人とも、周囲から美しいと言われ、自分でもけっこう自覚してました。
それゆえ、やがて出会い、やがて友人となり、やがて恋人となりました。
並んでいると、お人形さんが並んでいるみたいでした。
実際それぞれ、お人形さんのように大切に育てられました。
なので二人とも、苦労なんか知らないような、深く悩んだことなんて一度もないような雰囲気でした。
そのことが、彼らの人形のような美しさを際立たせていました。
彼ら自身、そんな人形のような生き様を愛するようになっていきました。
ゆえに二人の交際は、ガツガツしたところがなく、淡白でした。
メッセージの交換も最小限でした。互いの内面にはほとんど興味がなかったのです。
ただ、写真投稿サイトにプライベートアカウントを作って、一緒に写った写真を大量に投稿しつづけました。
様々な旅行先の写真を二人で見返すのが大好きでした。
二人が暮らす部屋には、二人が写った写真が壁中に貼られていました。
ちょっと気味悪いですね。
二人は、心というものに興味がありませんでした。
互いに思いやり深く振る舞うことも、実は一つの様式美としてでした。
彼らはそんな生き方に疑問を持つことがなかったし、大いに満足に日々を送りました。
末長く幸せに暮らし、天寿を全うして亡くなりました。
老いてなお、イケメンはイケメン、美少女は美女でありつづけました。
起承転結のない、ある二人のお話でした。