動物園
腹切くん in 動物園!
~25~
東京都内の某動物園に、地球の総督が自身のお供ごと訪れていた。
「こ……これは総督閣下!遠い宇宙からお越し頂き……感謝してもしきれません……」
園長率いる園の幹部団は、総督達にビビりまくり。総督が仮面着用ならなおさらに。
ちなみに総督の仮面は、元は総督自身の出身民族内では“文官”や“武官”を表す証。
敵をビビらせるために被っているのだから、相手がビビるのは大満足の総督。
「貴様、『閣下』だと⁉ 総督陛下とお呼びしろ、『陛下』と‼」と一人のお供がキレて園長に銃を向ける!総督とほぼ同じ仮面をつけているが、怒りが顔から滲み出ている!
これに園長は絶望気味に両手を挙げて「申し訳ありません!」と泣いて謝罪。
園長に銃を向けたままのお供が「こちらの御方は――」と言いかけたところで――
「いいよ君。今の私は総督『閣下』だよ」と総督に声を止められた。
園長は「ありがとうございます、総督閣下!」と総督に感謝しつつ――
「ところで本日はどんな御用で、こちらに……?」と総督に尋ねる。
すると総督は「では早速だが少しの間、余った檻を我々に貸してほしい」と返す。
その日の内に園内では……大日本帝国の現皇帝である腹切くんの展示が始まった……。
~26~
同日、動物園を訪れている若い男達。その内の男Aが――
「ちくしょーっ!なんで宇宙人達……俺たちの日本を!」と憤慨!
すると男Bが「へ……。弱かったからだろ……」と冷たく応じる……。
「それよりも宇宙人達よりむかつくのが、あの偽皇帝(腹切くん)だ!
もし会ったら、刺し違えてでも――」と男Aが胸中の決意を言葉にしようとした瞬間!
男Bが「お……おい、あれを見ろよ!」とある方向には指し示した!
その方向には強化ガラス越しに展示されている大日本帝国皇帝――腹切くん!
ご丁寧に彼が「大日本帝国熊王朝太祖光斌皇帝腹切臨」と仰々しく書かれた看板まである。
それを見た男Bは「て……展示されてるぜ……」と驚きの声を漏らす。
その時、ゲームをしていた腹切くんは暢気に「ん?」と男二人を見る。
「ある意味こいつが君主で……よかったかもな‥…」と男Aの力なく呟いた。
すると男Bも――「そうだな……」と力なく応じる。
その時の男Aと男Bの双方とも……目が死んでいた。それらが表すは“絶望”のみ……。
~27~
「うははははっ!超受ける!」と大笑いする男C。目の前には展示されている腹切くん!
「よし!あの××を撮って俺も受けちゃうぞ~!」と男Cはスマホを片手にするが……。
「あれ……檻の中にいないぞ……。いつのまに引っ込んだ……?」と呟いた男C。
確かに腹切くん展示用の檻に、肝心の腹切くんはいないが……。
「そのまま……ゆっくりと振り向け……」
「⁉」
後ろから聞こえてきた声と「ガチャ」という銃の気配に、急速に血の気が引いていく男C。
誰の声かは知らないが、銃を持った腹切くんであることは察してしまった……。
~28~
「あのあのあのあの……こ、これにはこれには深い訳が……」と腹切くんの方にゆっくりと振り向いた瞬間、激しく動揺しながらも誤り倒す男C。
そんな男の目の前には散弾銃を装備している腹切くんが……。
腹切は、本気でキレている時のギラギラした目で――
「誰にだって間違いはある……。今なら土下座で――」と男Cに話しかけるが――。
「すいませんでしたああああっ‼」と男Cが渾身の土下座を披露するが……!
「バアアアアアアンッ‼」と腹切くんが散弾銃で撃って、男Cの頭部を吹き飛ばした!
男Cだった肉塊に、腹切くんはこう話しかけた。
「ふ……苦しまずに殺されるとは……安上がりな手を選んだな……。
二億円(分割払い可)払うなら、確実に無害で許してやったものを……」
とんでもない猛獣がいたことを知らなかったが故の悲喜劇。人の話は最後まで聞こう。
次回予告:腹切くん絶賛展示中!