新しい宗主国
大変おまたせしました。
腹切くん初の長話です。
~20~
日本以外の世界がどうなっているか記していこう。
国際連合が消滅した直後、宇宙人達は地球の各地に自らの占領機関を設置してその支配力を強めた!
旧国連のジュネーブ事務局に副総督たる分総督府(太陽系を管轄)が、ブリズベンには副分総督たる高等弁務官府を設置!
さらに上海に大都督府(地球全体を管轄)を設置!
その大都督府の支部機関として、都督府を以下のように設置!
ストラスブールに欧州都督府(ヨーロッパ管轄)を。
重慶にはユーラシア都督府(欧州を除いたユーラシア大陸管轄)を。
ヌメアにはオセアニア都督府(オセアニア管轄)を。
ロサンゼルスには北米都督府(北アメリカ管轄)を。
コチャバンバには南米都督府(南アメリカ管轄)を。
ヨハネスブルグにはアフリカ都督府(アフリカ管轄)を――という具合に。
そんなユーラシア(欧州を除く)では、『モンゴル帝国』、『中華帝国』、『ベトナム帝国』、『インド帝国』、『ロシア帝国』、『ラオス王国』等の君主国が宇宙人達の手で復活!
ヨーロッパでも『ドイツ帝国』、『フランス帝国』等の君主国も復活!
南米でも『ブラジル帝国』等の君主国が復活!
しかし、以上の復活した君主国に君主は置かれず、それぞれの各国には『保護者』を兼ねた各々の占領軍の司令官に直接統治される羽目になる……。
そうして地球の支配機構が完成した頃に、一隻の……全長千五百メートルを軽く超す程の巨大な宇宙戦艦が地球の大気圏内にその艦体を沈めた。
その戦艦は太平洋の某海域にその艦体を浮かべると、その艦内からある一行が事前に用意していた自前の空母へと乗り換えた。
その空母には黒を基調とした幻惑迷彩が施されている。幕末の黒船を気取り。
その目的地も当然――日本の神奈川都(旧神奈川県)横須賀市の浦賀港。
「日本人達に早く……新しい宗主国を刻み込んでやる!」というのが、宇宙人達が“黒船来航”の再現に拘る理由である。
その空母は二十隻程の護衛艦隊と共に、目的地に向かっていった……。
そして数日後……空母とその護衛艦隊は無事に目的の港に到着。
港には日本の皇帝である腹切くんと、その摂政の万歳くん、さらに同国の保護者兼占領軍司令官や、同じく同国の太上大臣兼副司令官兼参謀長等の首脳部や政財界の要人、おまけに地方の有力者達までもかき集められている。
皆……これから“トップ”に会うだけあって、戦々恐々としている……。
首脳部の四人に至っては全員軍服。それも正装(最上級の儀礼服装)。
保護者兼占領軍司令官と太上大臣兼副司令官兼参謀長は自軍の正装で。腹切くんと万歳くんは戦前の海軍大将の正装で。
ちなみに腹切くんの正装は“大元帥”専用。腹切は着用を拒否したが……。
「格が低い正装を着てきたら、“取り返しがつかない程の失礼”と受け取られても文句が言えない」という万歳くんに説得され、渋々着用した……。
また万歳くんも自身の正装に戦前の“元帥”徽章を着装している。
空母からある一行が港に上陸してきた。
その一行とは地球の総督とその護衛達である。
「捧げ銃!」と保護者兼占領軍司令官が声を上げた瞬間、待機していた日本占領軍の儀仗部隊が一斉に敬礼!それも着剣された小銃で……。
「……!」
初めて見た総督に怯える腹切くん。
何しろ総督の頭部が先を曲げた尖がり頭巾に覆われて、顔に当たる部分に仮面で隠されているのだ。宇宙人と分かっていても異様な外見である……。
首から下は、黒を基調とした豪華な軍服とそれに付けられている数多の勲章。
しかし、先の仮面のせいで当の軍服と勲章が目に入ってこない……。
「怖がることはないよ、陛下。我々は家族同然だ。そう簡単に切り捨てることはせんよ」
腹切くんの反応を見て、このように腹切に話しかける総督。
地球人達が聞けば、男性と分かる声である。
――だったら、仮面だけでも外してくれ……。と心中でぼやく腹切だが、当の総督が自身を……それも目の前で無意識に圧倒しているため、声が出ない……。
「だって君は……我々の大切な――“傀儡”だからね……」と続けて腹切くんに話しかける総督。仮面越しとはいえ、その目が“人”に向ける視線を放っていないことは、他人にあまり関心がない腹切くんでも分かった……。
次回予告:総督の日本視察。