裏ピースとフェイクニュース
大変、お待たせしました。
突然ですが、新モブキャラ出ます。
~105~
裏ピース。手の甲を相手側に向けるピースサイン。
イギリスやオーストラリアでは、×指を立てる行為に相当する。つまり喧嘩を売る行為。
イギリスに在る某収容所内のある牢屋では――虜囚の身となった二人の男性将校らが、牢屋を通っていく職員に向かって挑発行為を繰り返していた。裏ピースで!
それも「くたばれ、おらぁ!」とサインの意味をそのまま口に出して……。
二人の内、一人はクリストファー・マイヤーズというイギリス海軍の少佐。
もう一人はケネス・グレイというオーストラリア海軍の少佐。
そんな二人を面白く思った宇宙人側の従軍記者が、その二人に――
「おーい。自分側にも裏ピース頂戴! 笑顔でね!」とお願い。
二人はこのお願いを即時に快諾! にっこりと笑って、その記者に裏ピース!
――見世物上等、宇宙人達なんて恐くない! という意味を込めて……。
それから翌朝、テレビ視聴を許されていた将校二人は、いつものように朝食の際にテレビを見ていた。少しでも脱出の機会に関係する情報を得られないかと思ってだ。
「おい、ケネス。宇宙のある星じゃぁ、裏ピースは忠誠や臣従を意味するらしいぞ」というマイヤーズの問いかけに、グレイは「そうらしいな」と応えるだけ。
――今日も他愛のない話をして朝が過ぎていく。そう思った二人の目の前に……。
「本日も、我が国に加わった新たな同志達を紹介します。先ずはこちらの二人から。
一人はイギリス海軍のクリストファー・マイヤーズ少佐。
もう一人はオーストラリア海軍のケネス・グレイ少佐です。
この写真の通り、彼らは自身の二本指を捧げて我が国への忠誠を示しています。
ですが前王朝に対する敬意から、彼らは年が改まるまでは収容所にいるそうです――」
宇宙人側の報道担当者の口から発せられる内容に、二人は時間を止められてしまったかの如く固まった。今、彼らの口からは味が吹き飛んでいる……。
~106~
とんでもない内容を見せつけられたマイヤーズとグレイ。
その日の労働や自由時間において――別の牢屋内に収容されている者は、話題になった二人を見ると、何とも言えぬ厳しい視線でじっと睨みつけてきた。
そんな視線を受けた二人は、「これは宇宙人の罠だ!」と弁明していった。
しかし、弁明を受けた側全員の視線を変えるには至らなかった……。
そんな翌朝に、マイヤーズは自身の牢屋を通り過ぎるに向かって――
「昨日の朝はとんでもねえ謀略をしてくれたな!」と吠えた!
これにグレイも勢いよく裏ピースして――
「でも残念だな! あんな捏造じゃ、味方は騙せねえよ!」と続く。
これらを受けた職員は「俺に言われても……」と困って果てている。
「だったら、収容所の味方に片っ端から訊いてみろ!」と諦めないマイヤーズの気迫に、職員は押されながらも「嫌だよ。めんどくさい!」と抵抗。
そして職員は「そもそも二人を覗いて収容者全員、自国に付いて収容出ちゃったし!」と答えた。
これにグレイは「嘘つけ! そんな謀略に騙されるか!」とキレて、テレビのスイッチをオンにした。――もう職員と喋りたくないと思って……。
そういてスイッチがオンになったテレビからは――
「本日も、我が国に加わった新たな同志達を紹介します。
昨日のクリストファー・マイヤーズ少佐らがいる収容所から、お二人を除いた全員です。彼らは昨日中に新王朝に臣従の意を表しました。既に全員は該当の収容所から――」
この真実を見たマイヤーズは、職員に向かって――
「今日も謀略か! そうだろ?」と強がった。
グレイも同じく「金に糸目をつけないところは褒めてやるよ!」
そんな二人に職員は「あんたら目が泳いでるけど……」と告げた……。
次回予定:真実は常に残酷――かもしれない……。




