ロシア帝国とモンゴル帝国
皆様、大変お待たせしました。
今回をスランプから抜け出せればいいなと存じます。
~102~
ロシア帝国の首都――サンクトペテルブルク近郊のアレクサンドロフスキー宮殿。
この宮殿にて、ロシア皇帝としての腹切くんの戴冠式が行われていた。
腹切くんと同帝国摂政に就く万歳くんは――同帝国の海軍元帥の礼装で身を包んで戴冠式に臨んでいる。既に二人とも、同帝国の大元帥号も授与されている。
そんな戴冠式を認めないであろう現地人は――ほぼ殲滅されている。
奇跡的に生き残った者達も、今はその全員が牢の中の人。そんな人達の運命は二つに一つ。
――己の祖国に殉じるか、宇宙人の帝国に甘んじるか……。
それから総督からの戴冠を受けて、戴冠式が終わっても、腹切くんらに休む暇はない。
その直後にはロシア帝国国家基本法(憲法)の発布式。
その次には就寝の時間まで、サンクトペテルブルク市内でロシア皇帝の展示会。
この時、腹切くんは牢に入れられて、のんびりとゲームするだけ。
その上、次の日にはモンゴル帝国まで飛行機で行く予定もある。
戴冠式が終わって部屋に戻った直後から、万歳くんらはその仕度に追われている。
こうして何も思い出を作る暇もなく、腹切くんらのロシアでの一日は過ぎ去った……。
~103~
「皆さん。私、度重なる宇宙人達の圧政に堪えられなくなりました。
それに今、世界中の一部の方々にとって――日本人は『宇宙人達の手先』!
こんな認識を覆すために、今から宇宙人達に向かって×指を立てます!」
ある動画公開者が、知人の手を借りて生配信している。その冒頭で上記の台詞。
彼らにとって、自身らは一世一代の抗議をしに行く――志士。
しかし視聴者にとって、彼らは悲惨の末路を迎える――馬鹿。
そんな動画公開者が手近にいた宇宙人の一将兵に向かって――
「おっらあぁっ!」と×指を立ててみせた!
その瞬間。突如、街頭テレビからの以下の内容が放送された。
「全宇宙の同胞達にお知らせです。昨年から編入に伴い、本日の現時刻をもちまして。
×指を立てるジェスチャーが原因で人に危害を加えた場合、処罰の対象となりますのでご注意ください。なお家畜からされて場合でも、罰金刑の対象となります」
この放送の直後、×指を立てられた将兵は何事もなかったかのように、その場を去った。
後には×指を立てたまま、状況を理解できず停止している動画公開者とそれを生配信している知人が残されているのみ……。
以上の配信は動画投稿史上、ある意味最高の瞬間として永く語り継がれた。
~104~
ロシアでの戴冠式の数日後の――モンゴル帝国のウランバートルのボグドハーン宮殿。
そこでモンゴル皇帝としての戴冠式を終えた腹切くんらは、ある一室であのお知らせを聞かされた。中指を立てられても報復してはいけない件だ……。
「――という訳なのでご注意を。これが原因で英米では反乱が多発しています」
このように伝えた将校のように、「へー」と他人事のように返事する腹切くん。
続いてモンゴル帝国の摂政に就いたばかりの万歳くん―が―。
「しかしまぁ……宇宙は広大とはいえ、左様な法ができるとは……」と驚きの声を漏らす。
「宇宙ではこれが敬礼になっている構成領や民族がいるからね。
彼らが自国に加わるに当たって、先の法が最低限の条件だったからね。
まぁそれ故に……犯罪やらかした者はこの指を切断されるんだけどね」
この総督の説明に万歳くんは「左様ですか」と応えつつ――心中でこう誓った。
――もう×指立てるのやめよ……。と。腹切くんも心中でそう誓った。
次回予告:次の戴冠式は満王朝中華帝国。




