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邪神皇帝腹切くん!  作者: 希紫狼
孫娘と神祇の章
30/34

カツ丼戦記

今回は予定を変更して――

別の絶望に立ち向かった男性のお話です。

~95~


 今回は、宇宙人達に捕らえられた某国の特殊部隊の将兵の日記の内容の一部をご紹介。

 ちなみに今回の更新分全てがこれと同じテーマ。


 宇宙人達やつらに捕らえられて七日目の朝。今朝の朝食もアンパン。

 囚われの身になって以降、毎食、「アンパン」しか出されない日々だ。


 しかし、毎回同じ食事メニューしか出されない拷問ことが、こんなに苦しいとは。

 これなら野草や蛇とか、一般人が食べたくない食事メニューが遥かにマシだ。

 もし隊(所属の特殊部隊)に戻れたら、この拷問ことに堪える対策を練らなくては。



 もう隠しても無駄だから書く。俺が知っている軍事機密が宇宙人達やつらの狙いだ。

 先の食事は思いの他、精神的に苛烈な拷問と言える。だが、俺は喋るわけにはいかない。

 敗れた祖国の再興がかかっているはずだ。最悪の場合は墓場まで持っていく覚悟だ。

 例え俺が“最後の一兵”になったとして。いや、もう俺はその一兵になっているだろう……。



 宇宙人達やつらに捕らえられて十四日目の朝。昨日は一睡もできなかった。

 宇宙人達やつら、俺のガードが固いと思ったのか、今度は睡眠を妨害してきた。

 ここ十五日目から毎夜、俺を眠らせないと躍起やっきになっている。


 昨日は主に、スリッパで頭を叩かれた。堪えるられる痛みだった。

 とはいえ、スリッパがこんなにも軽視できない武器にもなるとは、思ってもみなかった。



 他にもこれ以前に、俺はプロレス技をかけられたり、自分の尻や股間に攻撃を受けたり、バズーカや電流で攻撃されたり、逆に何かしそうで何もしなかったり……。

 その拷問方法メニューを挙げれば、一冊の日記に収まらない。

 特に熱々のろうで攻撃された日は――何故か興奮して寝れなかった。

 確実に俺は狂い始めている。だがそれでも、喋らない! 安易に死ねない!



~96~


 宇宙人達やつらに捕らえられて二十一日目の夜。もう俺は限界だ。

 ――毎食のアンパン。毎回の睡眠妨害いやがらせ

 特に家族や仲間からの手紙――からの睡眠妨害いやがらせは、思ったより効いた。


 他には、「ズール・シュトレミンゲル」という陸上で生活でき、見た目はゾンビみたい魚を紹介された時は――そいつのあまりの臭さに、自白と自殺衝動に駆られた。

 どうやら、シュールストレミングより臭い瓦斯ガスを出せるらしい。

 だが、この俺には自白したり、安易に自殺できない理由がある! これも任務の内だ!


 そんな毎日を過ごして、身も心もボロボロな俺は――その日の夜に取調室に連行された。

 何でも宇宙人達やつら、まだガードが固い俺を攻略すべく増援を呼んだ。

 誰を呼んだかは知らないが、全くの無駄だ。既に自殺も辞さない覚悟を決めている。



 そうして呼ばれてきた増援あいつら取調室ここに来た。

 自己紹介も省いて増援あいつらは、いきなり俺に向かって――

「お前はカツ丼(Katsudon)! お前はカツ丼! お前はカツ丼! お前はカツ丼!」

「Katsudon, Katsudon, Katsudon, Katsudon, Katsudon, Katsudon, Katsudon, Katsudon……」



 宇宙人達やつらに捕らえられて二十八日目の朝。

 Katsudon, Katsudon, Katsudon, Katsudon, Katsudon, Katsudon, Katsudon, Katsudon…….



 宇宙人達やつらに捕らえられて三十日目の朝。俺は“カツ丼”。

 今朝、取調室で担当官から「君の国の核兵器とか秘密兵器とかの隠し倉庫の場所って、分かる?」とかれたから、全部の場所を教えたら、満足して部屋を去っていった。

 そして数時間後に「裏もとれたし、現場も抑えたから――取調は今日で終わりだよ! 協力ありがとう!」と嬉々として礼を言われて、俺は牢屋に戻された。

 何か大事な事を忘れているような気がするが、よく考えれば“カツ丼”に大事な事はない。


 もうこのページで日記が終わるようだが、一つ前のページは「Katsudon」という単語だけでびっしりと埋め尽くされている。誰が書いたのだろうか。怖い悪戯いたずらだ。

 こんなページが三十以上確認できた時点で、読むのをやめた。これ以上は絶対に気が狂う。


 最後に――明日から俺は精神科で入院生活を送る予定ことになったらしい。

次回予定:まだまだ欧州で仕事しないといけない腹切くん……。

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