帝国の再興
宇宙人達の圧政が始まる!
~9~
宇宙人達は地球を占領すると、すぐに圧政を敷いた。
地球上のほぼ全ての共和国は解体され、残った共和国は自治領になった。
全ての君主国の方は宇宙人達の保護下に入り指導を受ける羽目に……。
地球は宇宙人によって『マルケルデ(Markerde)』と名付けられた。
当然、国際連合は自然消滅。国際連合本部ビルは宇宙人達に激安で売却された。
そしてそのビルは“マルケルデ総督官邸”と変化した。
こうして図らずもニューヨークは地球の首府となった……。
~10~
地球が『マルケルデ』と名付けられて数か月後の日本……の京都府京都市中京区。
そこの二条城では――なんと腹切くんの戴冠式が行われていた!
無論、宇宙人達とって都合のいい傀儡政権の主として……。
――大日本帝国を再興する!と野心を抱いていた腹切くん本人にとっても、この機会は渡りに船であったが……。今でも――自身は君主にふさわしくないと考えている身。
故にその胸中は複雑……。観衆からの「この売国奴ーっ!」という野次に気づかない程。
こうして図らずも京都府は“京都”と名称を改め、再び日本の首都となった(一応)。
~11~
「兄貴……なんで東京に戻ってきたんでい……?」と語りかける白長髪の美青年。
それも『総理大臣公邸』の執務室のデスクに腰を下ろしたまま……。
この男が宇宙人達によって新しく任命された大日本帝国首相(内閣総理大臣)である万歳悟という年齢不詳の男。スラっとして、腹切くんよりも背が高い。
ちなみに腹切くんからは――氏が『斯』、名は『大林』、字が『加給』と本人にとっては、ありがたどうでもいい別名も与えられている。
腹切くんとは義兄弟の契りを交わした仲であり、自身は腹切の弟分である。
「だって……京都にゃ、保護者がいて居づらいもん……。
この際、仮でもいいから……なんか頂戴よ。住むところ……」
この腹切の訪問直後の頼みに、――すっげっ……率直……。と虚を突かれて弱りつつも、その悩みをどう解決するか考えてくれる。
ちなみに、腹切くんの台詞の『うえ』とは『保護者』を表している。
大日本帝国にとって“保護者”様とは宇宙人側から派遣された高官で、同国の最高指導者にして監察官である。とどのつまり、皇帝である腹切くんの上司である……!
故に京都の二条城は“保護者”様の居城と化してしまった……。
「……じゃぁ赤坂の迎賓館やるよ!元は離宮。正式な宮殿にしても問題ないでしょ!」
万歳くんが一分弱で編み出した提案に、腹切くんは――
「ありがたいぜ、義兄弟!」と大喜びして礼を述べた。
こうして赤坂の迎賓館が、腹切くんの正式な居城になるかは――今後の展開次第……。
これに「ちょっとは考えろ!紫狼!」とキレる腹切くんを――
「よせや義兄貴。作者でも一歩先の未来は分からないもんさ……」と万歳くんがどこか諦めたような上目つきで宥めてくれる……。
~12~
「この××野郎共おおおおおっ‼」とキレて、某諸勢力の施設を破壊しまくる腹切くん!
自ら“軍”を率いての親征を敢行している真っ最中の様子……!
その軍も、爆撃機や戦車等の完全武装の精鋭である……。
「全ての野郎共の愛する党とか国とかを消し去り……存在した歴史さえも無にしてくれるわ~っ!」と自らが生み出した瓦礫の山の上で、拳を片手に誓う腹切くん……。
いつものキレている顔に若干浮き出ている血管から、積年の恨みだと伺える‥‥…。
「はっ……!変な夢見ちゃった……!」と赤坂の仮宮殿(旧迎賓館)内の寝室で目覚める腹切くん。どうやら、先のことは腹切くんの夢の中の話のようだ。
そして気を落ち着かせた腹切くんはベッドから起き上がったままの態勢で独り――
「もう野郎共の全て……無くなっちまったのにな……」と呟いた……。
次回予告:曲がりに曲がって再興された大日本帝国では……。




