海難法師
最恐の回かも!
~60~
質と回数が上昇していくロシア帝国内の抵抗運動。
これらの対する報復としてロシア帝国のバルト海側の飛び地である“カリーニングラード州”がドイツ帝国の飛び地である“プロイセン州”に変更。
この州も極東の旧クリル三地区(旧北方領土)と同様に、反抗する住民は皆殺し。それ以外の住民もほんの一握りの“帝国臣民”を除いた――全員が追放されてしまった……。
さらにドイツ帝国領に関わらず、現地人はそこへ誰一人として入れない。
――プロイセン州を非地球人だけの地にして、この後の植民計画の拠点に改造させる。というのが宇宙人達の植民計画。
だから“プロイセン州”復活を喜ぶ現地の方々は誰もいない……。
結局、プロイセン州も真にドイツ人の手に戻らない天命を受け入れる他ない……。
~61~
カリーニングラード州の喪失に、怒りを覚えたロシア帝国内の抵抗運動がさらに活性化し、地下に潜っていた殆どの組織が地表に現れ始めた!
これを好機と考えた総督は「禁断の兵器の封印の解除」という進言を採用。
直後にロシア帝国内の地下などに秘匿された要塞砲が地上に姿を現す!
その要塞砲の名は――「邪霊砲」!
欧州で使用された「邪恨砲」の強化版である!
基本的な使い方や効果、その代償までも邪恨砲と同じ。人の恨み辛みを核とする点も……。
しかし――邪恨砲が生きた人間の“魂”をそのまま“弾”として発射するのに対して、邪霊砲は生きた人間の“魂”を生きた“悪霊”に変化させた弾を発射するという恐ろしい兵器。
質が凶悪になった分、効果と有効範囲は邪恨砲を軽く上回る。
味方と女性(敵側含む)にやさしい安心安全設計とはいえ、それを扱う際の精神的重圧は邪恨砲よりも重いため、担当する将校の人選も厳しくなっている……。
~62~
邪霊砲によって、ロシア帝国内の抵抗運動が壊滅しかけている頃……東京都内の赤坂離宮に総督がやってきて、腹切くんに――
「最近、物騒になっているからね。君の影武者を連れて来たよ」と告げる。
そんな世の中を物騒にしている一番の元凶である総督に対し、腹切くんは――
「あ……ありがとうございます……」と謝すという無難な言動しかできない。
「海難法師の両手水皿くんだ!!」
「初めまして。両手水皿です!! 分かりにくい名前なのでお皿くんと呼んでください!!」と総督の紹介に応じて自己紹介する海難法師ことお皿くん。
その姿は黒い布らしき物体に覆われ、顔面に当たる部分も頭巾で覆われている。
腹切くんは「見たら死ぬ霊じゃん、それ!!」と必死に両目を手で覆っている。
「大丈夫だよ。宇宙には様々な『海難法師』と呼ばれる生物が住んでいるが……。
その力を制御できるようになっている海難法師しか連れてないよ」と総督の捕捉に、お皿くんも「見ても大丈夫です!!」と腹切くんに声をかける。
これらに対し、腹切くんは「本当に……?」と恐る恐る両目から両手を離すが……。
「彼が本気を出せば、千人は軽く殲滅できる。影武者としての力は申し分ないぞ!」という総督の追加補足に、「やっぱり怖い!」と腹切くんは再び両目を両手で覆った……。
~63~
「そういえば総督。そのお皿くんがどう自分の影武者を務めるので……」
「彼は本来――スライムのように定まった姿を持たない海難法師だ。
だから他社への返信も容易だ」と腹切くんの質問に答える総督。
「ただ心臓の弱い人は、自分の影武者を見ない人がいいと言われている」という総督の説明。
これに腹切くんが恐る恐る「それはどうして……?」と訊き返すと……。
「こんな伝説があるじゃないか。自分のドッペルゲンガーに出会ったら死ぬと……」
「そうですね……」と総督に答える腹切くん。そんな彼の後ろには――
「うししっ……!」と笑うもう一人の腹切くんが……。腹切くんは振り向けなかった……。
次回予告:海難法師の威力!




