オーストリア
予定を早めて――いざオーストリアへ!
~50~
腹切くんがイタリア王に即位して――その翌日のこと。
イタリア王国首相兼占領軍副司令官たる参謀長の官邸(キージ宮殿)のある一室で、腹切くんと万歳くんの二人は宇宙人達から与えられる“お勉強の時間”が始まるまでの間に、イタリア視察の構想について互いに話し合っているところであった。
そんな部屋に地球総督が仮面越しに血相を変えて飛び込んで――
「“勉学”中止!急ぎオーストリア帝国を復活させるぞ!」と第一声を放った!
「!?」
直後――観光が吹っ飛んだ!と言いたいばかりに顔を曇らせる腹切くん!
「言い方を変えよう。一週間後にグラーツに来てもらう!そこで戴冠式を敢行する!」と続ける総督に、「何があったのです?」と万歳くんが訪ねてみると……。
「宇宙人達の“神”が……この地球に御降臨あそばす時が近づいてきたのだよ!」と総督は仮面越しに神妙な面持ちで答えた!
さらに「というわけで、一週間以内にイタリア各地で即位式を上げまくるぞ!」と続く総督の言葉に、二人は同時に「マジすか……!?」と思わず顔を曇らせて訊き返した。
これから二人にとって怒涛の一週間の幕が開ける……。
~51~
総督から“怒涛の一週間”という予定を聞かされた腹切くんと万歳くん。
腹切くんは即日――ローマのヴェネツィア宮殿内でローマ皇帝に即位!
その翌日からナポリ王、シチリア王、ロンバルド=ヴェネト王、エトルリア(トスカーナの古名)王、サルデーニャ王とイタリア各地で即位しまくった!
万歳くんもそれらの即位式に随行。それら全ての進行役を務めた。
そうして“怒涛の一週間”の内、一日を残して早めに終わらせた腹切くんと万歳くんの二人。
そんな二人に対する総督の第一声は「今すぐグラーツ行くぞ!」というもの。
総督のこの台詞に腹切くんは「一日だけでも観光したかった……」と顔を曇らせ、万歳くんも「頑張って予定早めたのに……」と溜め息を吐いた……。
イタリア王国を発って翌日の旧オーストリア共和国のグラーツの王宮。
そこで総督は午前中に戴冠式を敢行してオーストリア帝国の復活を宣言!
そして腹切くんの頭の上に、新たに作った“帝冠”を被せた。
それと同時に、万歳くんもオーストリア帝国の“摂政”を兼ねる羽目にもなった。
戴冠式が終わった直後――腹切くんと万歳くんの二人は総督に連れてかれ、オーストリア帝国保護者兼占領軍司令官の官邸(ホーフブルク宮殿)があるウィーンへ。
その日の晩に官邸で催されたオーストリア帝国復活を記念した夜会に、二人は総督と共に出席。その夜会を存分に楽しむ時間的余裕はなかったが、オーストリア=ハンガリー帝国時代の“海軍元帥”の礼服を着れたのが唯一の救いだった……。
~52~
腹切くんがオーストリア皇帝に即位した翌日――彼は飛行機内の人となってゆったり。
総督と万歳くんは腹切くんの両脇側の席でゆったりとしていた……。
そんな機内で腹切くんは最近のストレスが残っていたのか――
「よっしゃ~っ!日本に戻ったら先生のアニメ化と書籍をぶっ潰した奴らを拷問したり一族郎党皆殺してやるぞ~っ!」と独白する始末……。
そして――その独白は近いうちに実行される……。
また総督はその独白を「遠慮しなくていいからね!」と支持する始末……。
その本心は――今の内にしか、過剰な地球人を大量に処分できないからね……。
「ああっ!大事なこと思い出した!君に会わせたい人がいるんだ!」
突如――この言葉を腹切くんにいきなり投げつける総督。
これに腹切くんは「神のことですか?」と訊き返す。
「いや……君の“孫”だよ!」という総督の返答に、腹切くんは目を丸くして――
「へ……!?」と素っ頓狂な声を上げて固まった……。
「……!!」
万歳くんに至っては「ギクッギクッ!!」と体を震わして――固まった……。
「色々を詳しく訊きたいことがあると思うが、万歳くんがその件に一番詳しいから!」
まるで万歳くんに説明責任を丸投げするような総督の言葉。
これを聞いた腹切くんはいつも以上に悪い目つきを万歳くんに向けて――
「お前……日本に帰ったら――後の台詞は言わなくても分かるな……?」
この腹切くんの言葉に、万歳くんは俯いたまま「へい……」と応じるのみ。
その後の空の旅が万歳くんにとって重苦しい旅になったことは記すまでもない。
次回予告:万歳くんに色々と訊きたい腹切くん……。




