イタリア
腹切くん――いざ、イタリアへ!
~47~
ストラスブールの欧州都督府(ロアン宮)で、宇宙人達との戦闘で発生した――旧フランス共和国の一千万人程の戦死者(“消滅した魂”込み)と、旧ドイツ連邦共和国の七百万程の戦死者(“消滅した魂”込み)に対する追悼式典という名の“戦勝式典”が行われていた……。
宇宙人達に死刑を受けた戦死者の中には――魂だけ消滅するのはまだ温情的。
その戦死者の一族郎党(一般的な若い女性は除く)の皆殺しもだ。
重い刑だと、墓に名を刻まれることすら許されないどころか、あらゆる媒体上に刻まれた“存在した証”さえも消え、関係者の記憶から“存在”を消されてしまう。
最悪の場合には、一族が眠る墓さえ、存在した記録ごと消されてしまう。
つまり……その戦死者は――完全に削除されてしまうのだ……
そんな戦死者さえも一時的とはいえ“数字”で追悼される。都合が悪い、気に食わない敵に対して容赦ない宇宙人達にしては――非常に慈悲深いことである……。
「勇敢なる魂達よ……今は安らかに眠れ。君達は遙か彼方の世界に召されて、我々の力の及ばぬところで――“次”の生への門を潜ることになろう……。
故に……もし運命が許すなら、敵味方問わず――また相見えよう!」
総督の空虚ながらも、どこか重みのある弔辞が式場に響いていく……。
ちなみに先の犠牲者の中には、宇宙人達に激しく抵抗した上で降伏を申し出た戦死者達もいたが、宇宙人達側の事情により抹殺されることになった。
「限りある食料を――最後まで抵抗した戦士に渡したくない!」というのが宇宙人達に最も共通する理由の一つ。「降伏するなら最初から!」という話であってほしいのだ。
だが無抵抗な者を殺した“功”が誇れる程、宇宙人達は狂っていないので――
「絶対に降伏しなかった――勇敢な戦士である!」と偽っておくのだ……。
そうすることで「そんな勇敢な奴らを倒した俺達は――もっと勇敢!」と誇れるのだ!
~48~
ストラスブールでの戦勝式典から数日後……腹切くんと万歳くんは総督に連れられて、いつの間にか復活していた『イタリア王国』のピエモンテ州の『トリノ』に来ていた。
そのトリノ市内の中心部のカステッロ広場に面する王宮で――戴冠式が執り行われた!
主催者は総督。そしてイタリア王へ即位するのは――腹切くん!
そうして総督が直々に即位させたイタリア王になった腹切くん!
万歳くんも同王国の摂政に就任!これで彼は“大日本帝国の摂政”と“ドイツ帝国の摂政”、さらに“フランス帝国の摂政”まで兼ねる羽目になった……。
とはいえ万歳くんの「摂政」と名の付く全ての肩書は――お飾り。
所詮、彼の存在は……腹切くんの保険程度と見なされている――はずである……。
戴冠式を終えて――腹切くんと万歳くんも二人は、今度も総督に連れられた。
場所は同王国の保護者兼占領軍司令官の官邸(クイリナーレ宮殿)があるローマ!
そこで腹切くんは総督から、ヴェネツィア宮殿を自らの離宮として与えられた!
ちなみに腹切のイタリアでの本宮は、トリノの王宮である。
その離宮が気に入ったのか……。上機嫌になった腹切くんは、ファシズム時代の同王国の大元帥の軍服を着用して、離宮をバックに記念撮影!
一緒に撮られる万歳くんも同王国の海軍元帥の軍服を着用していた!
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親切で陽気な国と言われているイタリアでも、抵抗運動が全くないはずがなく、イタリア王国復活直後では二百万に上る戦死者(消滅した“魂”込み)を出していた。
一方で、宇宙人達に真面に反撃できずに降伏した日本でも三百万に上る刑死者を出していた。占領後の抗議やデモ等の非暴力抵抗運動が、宇宙人達に「気に入らない!」とか「邪魔だ!」等で消去の対象になったのだ……。
宇宙人達は死者さえも裁くことができる……。それも神の名において……。
例えば、ある非暴力抵抗運動に参加して――処刑された者がいた。
その者の遺体は、棺桶に納められたまま裁判を受けた……。
そしてそのまま「有罪」とされ……その死で罪を償ったことにされた……。
そうして処刑された者の大半が、どこぞの楽園の住民のように「話せばわかる!友になれる!」と言って、同胞に対して武器を使わぬように押し付けた者達ばかりであった……。
宇宙人達とて地球人の話が分かる者がいる。それも多数。
しかし、話が分かったところで“友”になれたとしても、“今”の宇宙人達にとって、地球人は友人に該当しない。協力者か奴隷だ。
愛玩動物に至っては家族同然に、自らの都合のままに可愛がってくれる。
今回で腹切くんは一旦休載し、魂魄双伝を再開する予定です。
次回再会時構想:イタリア編が終わったら、オーストリアへ移ります。
当然、腹切くんは復活したオーストリア帝国の皇帝に即位します!




