取り調べ
皇帝でも勉強しなきゃいけないことは――腐るほどあり!
寿命が尽きても、それは尽きない……。
~41~
旧フランス共和国大統領府にして、現フランス帝国保護者官邸であるエリゼ宮殿。
本日、腹切くんと万歳くんの二人は総督に招かれて、この宮殿にやって来た!
「先の作戦で我々の侵略が完全になったとはいえ、まだフランス帝国内には数多くの抵抗運動が残っている。
今日、君たちにはその取り調べを見学して頂こう!」と総督がノートパソコンを用意。
腹切くんと万歳くんはそのノートパソコンを見た。
そのノートパソコンの画面には、よく刑事もののドラマで見たような無機質で金属的な取調室に、宇宙人側の将校がある男を尋問している様子だった。
その男は電気椅子らしき機器に座った状態のまま――拘束されている。
「解放されたいだろ?君の司令部の場所を吐いたらどうだ?」という将校の言葉に――
「ふん……無駄なことだ!どうせなら、俺をこの世から解放してみせるんだな!」と拘束された男が強がって返す。どこか勝ち誇ったような笑みと共に……。
――俺が死ねば、俺の口から“旗艦がマルセイユの港に潜んでいること”は絶対に漏れない!というのがこの拘束された男の絶対の自信である――はずだが……。
その男の自信は、彼の頭に装着されている特製のヘルメットによって読み取られていた。
読み取られた情報は、取り調べの司令部に漏らされてしまい――
「急ぎ、司令部に!『抵抗運動の旗艦はマルセイユの港に在り』と!」と取り調べ司令部の指揮官から、その占領軍司令部に報告されてしまう始末。
その一連の流れをノートパソコン上で見た腹切くんは――
「こうして俺の頭の中が……」と、どこか感慨深そうに呟いた。
その翌日、また一つの……抵抗運動が鎮圧された。
拘束された男は訳の分からぬまま釈放されたものの、自らの組織の生き残りに“裏切り者”と断じられ――殺された。その生き残りの内の男全員はこれを罪状に銃殺刑に処された。
ちなみに残りの女全員は――宇宙人に都合のいいように記憶を改竄された……。
~42~
次の取調室。今度も同じように拘束された別の男が、別の将校から尋問を受けていた。
「いい加減、君の司令部の場所を教えてくれないかな?」という将校の言葉に――
「言うものか!いっそ死体から聞いてみたらどうだ?」と男は強気で応じる!
「そういうことなら――君は我々の友人の練習相手になってもらおう!」と将校がドアの方へ合図を送ると、ドアの方から一人の男性同性愛者がやって来た。
「あなたのような強い男――好みよ~っ!」と感情を爆発させて……。
「やってみろ!どんな目に遭おうと――俺は言わない!俺はそういう男だ!」
今も不退転の決意を崩さない拘束された男に、将校は――
「では女にしよう!連れてきた彼は医者なんだ!」と言ってのけた。
当の男性同性愛者は「あたし腕はいいわよ~!」とやる気満々。
「言うから頼む!言うから頼む!司令部は“リヨン”にあるから、やめてくれ!」
こうして拘束された男は泣きながら……あっさりと決意を崩した……。
尋問を担当した将校は「“リヨン”ね……」と復唱して、携帯端末で上層部へ連絡。
男性同性愛者の医者は「幻滅~」と先の泣いている男に失望……。
以上のことを画面で見ていた腹切くんは「哀れ……」と先の拘束された男に同情……。
~43~
さらに次の取調室。今度も同じように拘束された男が――
「俺は今までの裏切り者共みたいに軟弱じゃない!拷問でも何でもかかってこい!」と今にも自身への尋問を担当する将校に食って掛からんばかりの勢いで挑発する!
「じゃぁ俺達は君に何もしない。もちろん水や食料も上げない……」と将校の言葉に――
「上等だ!俺は餓死なぞ恐れない!」と男はさらに気丈に振る舞う!
それからその男の身は独房に移され――拘束されたまま三日間程放置された。
時間どころか日が出ているかさえ分からない独房で……。
そして三日目が過ぎた頃、げっそりと憔悴しきった男が将校に――
「頼む……誰か来て……。餓死させてもいいから……。一人が怖いんだ……」と降伏。
どうやらこの男の弱点は“孤独に耐えられない”ことのようだ……。
「じゃぁ君の組織の司令部の場所を教えて」と将校が問うと――
「パリの16区……」と男は答えてしまう……。既に陥落された済み。抵抗力――無し!
以上のことを画面越しに見ていた腹切くんは「孤独に負けたか……」とその男に同情した。
ちなみに腹切くんは“孤独”なぞ百年味わっても正気を保てる域に達してしまった……。
次回予告:まだフランスの回!腹切くんはここを楽しみたいが……。




