フランス
腹切くん、いざ――フランスへ!
~38~
欧州内の反乱分子等が戦争作戦によってほぼ根絶された数日後……ベルビュー宮殿内で新ドイツ帝国憲法発布式が行われていた。
以前の新大日本帝国と同じように、総督から現ドイツ皇帝に授けるという形である。
現ドイツ皇帝である腹切くんと、その摂政である万歳くんの二人は旧ドイツ帝国(第一次世界大戦以前)の“海軍元帥”の礼装で出席している。
「さ、陛下!この国でも我々が創った憲法を受け取ってくれたまえ!」と総督から憲法手渡された腹切くんは「拝受します」と台詞を言うだけ。
当然、憲法も『ドイツ帝国は全権力をマルケルデ総督府に委任する』だけ!
その後は、腹切くんは先の軍装のまま撮影会。意外と人が来て儲かった。
それから腹切くんと万歳くんは、総督に案内されて邪恨砲を見学!
総督からその砲の簡単な説明を受けた腹切くんは――
「うわぁ……すごく非人道的兵器……」とビビりまくり!
そんな腹切くんに、総督は仮面を外して穏やかな表情を見せて――
「そう怖がることはない。味方には一切の被害がない安心設計だ。
私の許可なくして“弾”が発射されることはあり得ないよ。
それに攻撃される側も女性だけは確実に助かるようになっている」と補足。
しかし腹切くんは「それって“命だけ”の話だったりして……」と邪推を口にした。
その邪推を聴いた総督は、どこか恥ずかし気に仮面をかぶりなおして――
「御明察!命は助かっても、苦痛のあまり心が壊れて社会復帰が絶望的な状態になる女性も少なくないな……。噂によれば――“陣痛”の三倍の痛さだとか……」と返答!
この返答に万歳くんは「う~ん……」と小さく呻き声を上げて――
「俺たち“男”には絶対分からない例えだ……」と頭を悩ませた……。
~39~
邪恨砲の説明受けた腹切くんと万歳くんは、その翌日に総督に連れられてフランスへ。
そしてその翌日に、ヴェルサイユ宮殿の“鏡の間”で戴冠式が行われた。
それに出席した腹切くんは、此度も総督から直々に――
「“フランス皇帝”、“兼任”おめでとう!」と冠を戴いた。
その戴冠式の後に、腹切くんと万歳くんは祝典用の改造オープンカーに乗ってパリへ向かっている。二人ともフランス第二帝政時代の海軍元帥の大礼服を着ている。
ちなみに総督は別の改造オープンカーに乗って、パリを目指している。
彼らはパリで行われるパレードにそのまま乗り込むのだ。
その道中に万歳くんは、腹切くんに向かって――
「その頭……絶対にヤバいよね……」と話しかける。引き気味で……。
腹切くんは「うん……。心もヤバい……」と死んだ目で万歳くんに返した。
今、腹切くんの頭には――第二次世界大戦頃のフランスの戦艦“リシュリュー”のプラモデルが載っている。総督の戯れで載せられてしまったのだ……。
現地の十八世紀頃の、“実際”の髪型にちなんでいるようだ……。
~40~
その頃、フランス帝国の保護者兼占領軍司令官と同国首相兼占領軍副司令官たる参謀長の官邸があるパリ市内では、市民達が口々に宇宙人達への不満を漏らしていた。
男性市民Aが「ちくしょ~っ!何勝手に帝政復古させてんだよ!」
男性市民Bが「それも日本人(腹切くん)を皇帝に据えるなんて――訳わからねえ!」
男性市民Cが「あいつ(腹切くん)に会ったら――絶対に殺す!」
そんな男性市民達の許へ別の男性市民Dが駆け寄り――
「大変だ!総督がパリに来るぞ!皇帝(腹切くん)も一緒だ!」と叫ぶ!
これに市民Aは「本当か⁉さっき戴冠式の中継が終わったばかりだぞ‼」と驚く!
市民Bは「行ってみよう!」と走り出し、市民Cも「一泡吹かせてやる!」と続く!
そして彼らがパレードが行われている路に着いて、腹切くんらを見ると――。
オープンカー上の総督と、別のオープンカーに乗っている上の腹切くんと万歳くんが!
しかし路上の群衆のほとんどが彼らにドン引きしている……!死んだ目で……!
何しろ腹切くんの頭には戦艦の模型が載っているではないか!奇抜すぎる……!
それは先の男たちも同様に腹切くんにドン引き!市民Aは仲間達に――
「もうあいつ(腹切くん)に関わるのやめない……?」と話しかけた。
「そうしよう……。知り合いにレジスタンスの一員がいるけど……。最近になって連絡が一切取れないんだよ……」という男Bに、残りの市民らも「ああ……」と賛同……。
次回予告:フランスの都市と言えば――パリ!他に有名な都市と言えば~?




