暴食の軍勢
絶望が再び現れます
7
「魔王様、暴食閣下の軍勢が整ったそうにございます」
魔王と呼ばれたその人物はその玉座の上で自分に声をかけたそのデーモンに目を向けると
「此度は少しは役に立つのだろうな?」
「前回のゴブリンキングの軍勢に比べたら暴食閣下が気を悪くなさいます、魔王様自ら選ばれた暴食閣下
でございますれば我等魔族をこの辺境へ追いやった者たちに目に物を見せるどころか恐怖に落とすことで
しょうそれにまだ軍勢の整っていないほかの閣下達も用意が整い次第出陣される予定ですしこれからを楽
しみになさいませ」
「確かにそうかまだ我等の戦いは始まったばかりなのだからな見ていろ我等魔族の祖先をだましこの瘴気
渦巻く地へ追いやったもの達め肥沃な大地は我等の物だ」
瘴気渦巻くその場所で世界に知られることなくその野望を掲げているころ
闇の底死した者達の悲鳴と怨嗟の声にめを細めながらその存在は笑みを浮かべる
「愚かな魔王よ踊れ踊れ死の舞踏をお前が野望を遂げようと道なかばで倒れようともどちらでもよいのだ
最後は全て我の物となる我をこの様な所に閉じ込めた者達の末裔達め仲間同士で殺しあうがいい」
彼の者はこの世界においてかつて神だったしかしその心は闇その物であった、己の遊興のためある時は
人々を殺し合わせまたある時はモンスターを操って国を襲わせた民の慟哭は天地に響き遂には最高神おも
動かしたここに至ってもその心を改めなかったその者から最高神は神の力と神席を奪い世界の民達ととも
に闇の底へ追放し世界に平穏を取り戻したそして世界の民達に告げる「今彼の者は闇の底へ追放されたこ
れは皆の力があってこそである故に心せよ世界が乱れる時かの者はこの世界に近づくことを忘れることな
かれ世界乱れ力ある民が損なわれる時かの者はこの世界に舞い戻るともに生きよ皆独りになることなかれ」
遥かなる時の果てこの言葉を覚えているものはいまや僅かである
瘴気渦巻く魔族の国とそのほかの種族の国との国境にある砦
そこにはさまざまな種族の兵士達が詰めていた時折魔国から押し寄せる凶暴化したモンスター達を迎え撃
つ為己が使命に誇りを持つ者達が命を懸けて集まっていた
その日は朝日とともに訪れた最初彼らを見た砦の兵士達は大規模氾濫に備えてその場所へ向かう世界有数
の精強な魔国の部隊が出陣していく物とある者は歓声をある者は敬礼をもって彼らを迎えるだがそれはま
もなく打ち破られる御輿とともにひときわ大きいオークが現れるとそのオークの前に整列する多数の完全
武装したオーク兵達、そしてその数は明らかに常軌を逸していたまるでほかの種族の領域を侵略するかの
ように増えていくそして御輿のオークが咆哮するのと同時にその軍勢は砦に襲い掛かり数の暴力を以って
文字どうり蹂躙するそして砦は日が正中に座すころには逃げ出した僅かな兵を残し陥落した
そして逃げ出した兵士達によってそれぞれの母国へと伝えられていく魔国が侵攻を開始したとその先鋒
オークの軍勢の威容と共に魔国以外の国、ヒューマンの帝国、エルフの樹国、ドワーフの鉄国、獣人の獣
国、ドラゴンの龍国、人種にこだわりのない王国は連絡を取り合ったがモンスターの大規模氾濫の際戦力
のほとんどを魔国に頼っていた帝、樹、獣、鉄の4国と中立を貫いて来た龍国は対応に追われた、いち早
く王国が各国の冒険者ギルドを通じて共闘を呼びかけるが足並みは揃わず各国がそれぞれ兵力を出しそれ
が敗走を重ねる悪循環が繰り返されていた
事ここにいたっても足並みを揃えない王国以外の各国に対して最高神を崇める教会が立ち上がる法王自ら
各国に掛け合い説得し仕舞いには説教までして手を合わさせるここに世界同盟は成り侵攻に対抗するが世
界のほとんどの要衝はすでに魔国の手に落ち人々は教会総本山である大神殿と冒険者ギルド本部のある王
国を目指して自主的に避難を始めるここに至り人々の間からこの世界の黄昏と物語中の存在と成ってし
まった邪神が復活し世界を滅ぼすと言う考えにとらわれ始めるまさに絶望が世界にあふれ始めたのである
絶望あふれ始めた世界だが抗う人たちは居るものです
次回反攻開始