3刀、人間不信の木刀使い
ぼちぼち更新して行くので読んでくれると幸いです。
取り敢えず次の目標を立てられる程歩いているが路地裏はまだ抜けれそうにない。
ただ、俺は少し驚いている。人を、骨が砕けるくらい強く殴ったのに何の忌避感も感じていない。
まず、凶器を持った奴に対して恐れずに走って行き、ぶん殴るなんてあっちじゃ全然出来なかった。多分俺は人殺しも躊躇せずに出来るだろう。
よくある、転移者が人を攻撃することに忌避感を感じて怖気ずくなんて事は無さそうだ。
なんというか、地球での常識や感性が、異世界での常識や感性に入れ替わっている気がする。
閑話休題
俺と赤髪の彼女との距離は3メートルくらい空いている。俺は彼女を全然信用していないし、彼女としてもいきなり出てきた俺が敵なのか味方なのかハッキリしないだろう。
俺は有無を言わさず敵を倒した為、どちらが法律上正しいかわからない。もしかしたらこの女が犯罪者で、あの二人組はこの女を討伐に来た冒険者だったのかもしれない。
ただ、それだと面倒くさいな、犯罪者になるかもしれない。彼女のためにそこまでする必要は無かったかもな。
俺は取り敢えず彼女について行く事にしたが、信用は最初からしてない。あっちの世界で狂った奴に殺された記憶が戻ってきた時、他人を信じたく無くなってしまった。
ハッキリ言って、彼女とあの二人組、どっちが正義でもいいし、彼女が裏切る......いや、信用してないから裏切るも何もないか。
もし彼女が嘘吐いてるなら何処かで隙を見て逃げればいい。大勢で襲って来ても傷だらけになるだろうが、逃げる事は出来ると思う。
この空気に痺れを切らしたのか彼女が話しかけてくる。
「あの、冒険者なんですか? 」
「いや、ちょっと特殊な育ち方をしてね、腕っ節しか無いから冒険者にでもなってその日暮らしでもしようかなって思ってさ。今日試験を受けようと思ってな」
当然俺の地球で手に入れたスキル「愛想」を使って話す。
敬語は俺の柄じゃないしな。
俺は少し嘘をつく、育ち方は普通だがそれ以外は全部本当のことだ。さっきの戦い? の結果最弱の魔物ぐらいなら撲殺出来そうだと感じた。
普通の人なら武器の手入れや、買い替え、修理でその日暮らしもやっとだろうが、俺の木刀は違う。
さっきついたあの二人の血はいつの間にか無くなっていた。まさか、木刀が血を吸っているとか? あり得るな、ただ、手入れは必要なさそうだ。
目に見えるデメリットがあるか今度検証してみるか。
「とても強いので、すでに冒険者かと思っていました。今日登録試験を受けるならどうします? 途中で武器屋に寄ったりしますか? 」
育ち方についてスルーしてくれたのは良かった。ここで聞き返してくるならこれ以上話す必要は無かったからな。
さて、彼女がこんな事を聞くのは、冒険者になる為の試験の一つに実技試験があるからだ。だから木刀、つまり『そんな木刀で大丈夫か』と聞きたいのだろう。
だから俺は「大丈夫だ。俺はこの木刀があれば十分戦えるから」と答える。
この世界に木刀という概念はなく、これは一般的に見れば少し太いだけの唯の木の棒だ。戦いに身を置いている人が見れば殺傷能力が少なからずある事を理解できるだろう。
トンファーは有るのに何故木刀が無いのかは謎だな。
まぁこの世界刀が常識の中に無いから、広まってないだけなのかな。
だとするとこの木刀はあたりだったのかもな。
おっ、そろそろ路地裏を抜けられそうだ。
余談だが、この路地裏は大通りから奥に行くにつれて狭く、汚くなっているようだ。ただ、この世界は他の転移者、転生者の手によって、水洗式では無いが、トイレ事情がしっかりしていてスラム街でもなければ一家に一台?トイレは付けられている。
常識って便利だな。ただ、これって誰の常識なんだろう? ステータスに書いてあれば説明が読めるんだけどな。
やっと路地裏を抜けられたようだ。前世? で、路地裏で殺されたこともあって凄い気持ち悪かったからな、やっと出れてよかった。嘘つかれてもなさそうだしな。
「このまま真っ直ぐ進めば冒険者ギルドが見えてきますよ」
説明をしてくれるのはありがたいが、大通りに出たあたりで常識によってある程度の情報は入ってきたので、その説明は意味なかったな。
「ありがとう、あなたが居なかったら俺はここまで来れなかったよ」
俺は今日初めて彼女の目を見て、一応本心から礼を言った。
まあ時間さえかければ路地裏から出るのはそこまで難しくなかったけどな。
「いいえ、私の方もあなたが居なかったら少々めんどくさい事になっていたわ。だから礼を言っておくわね。 私を助けてくれてありがとう」
そのまま彼女は冒険者ギルドの中に入っていった。
「ッッ」
彼女はお礼を言って微笑んだ。彼女の微笑みを見た時俺は息を呑んだ。彼女の微笑みは美しさを超え、もはや神々しくもあった。
どっかの女神のイタズラっぽい笑顔よりも数倍美しかった。
もしかしたら俺は惚れっぽいのかもしれない。一目惚れだなんてありえない。ただ、打算を考えた結果、一緒にいても不快ではないくらいに考えられるものだと思っていた。
だが、違った。一目惚れは存在した。
俺が生きてきた中で初めて、『好き』だと思った。
しかし、初恋は実らないと言うのも本当らしい。
ただの低ランク冒険者、しかも見てくれがいい女性が一人で路地裏を歩ける程こっちの世界は安全じゃない......あっちの世界も危なかったし、五人くらいいた中で、俺は真っ先に刺されたわけだからな。
それに彼女はさっき、『少々めんどくさいことになる』、と言った。裏を返せば、少しめんどくさいがどうにでもなるという事だ。
俺の予想では彼女は高ランク冒険者だ。そんな彼女と志が低い俺ごときがお近づきになれるわけ無いし、こんな美人だ、多分彼氏とかが居るんだろう。
惜しい事をした。疑っている暇があったらもっと話しておけば良かった。一応二人きりだったから彼女に惚れている人からしたら金をはらってでもあの時間が欲しいという人はたくさんいるだろう。
まず、名前も知らない人を好きになる時点で俺はおかしいのかもしれないな。
何故か冒険者の名前は常識に無かった。マジで誰の常識か気になる。
ただ、やっぱり俺は冷めているようだ。せっかくの初恋なのに気持ちが落ち着いてきた。
どうやら本格的に人間不信になっているのかもしれない。少なくとも俺が二回目の恋をする事は有るんだろうか? 無いだろうな。
まぁあっても俺如きじゃ付き合うなんて無理だろうな。
そんな事を思いつつ俺はギルドの扉を開ける。するとそこには......「おい、お前みたいなヒョロい奴が冒険者になれる訳ねぇだろ。おとなしく家に帰って母ちゃんにでも慰めてもらえ! ぎゃはハハハハハ!! 」
厳つい筋肉質なおっさんに低俗な言葉、俗に言う『テンプレ』にあっている俺と同い年くらいの黒髪の少年だった。
俺はそーっとギルド内に入り、野次馬に紛れて彼を観察する。
どうやら俺はテンプレを見る側の人間になったようだ......
読んでいただきありがとうございます。
主人公はなんのフラグも立てずに失恋しました。そして失恋の先にあるのは地球人っぽい人のテンプレ。
主人公っぽくない主人公を書きたいので頑張ります。
誤字脱字教えてくださると幸いです。




