2刀、木刀使いの冒険者
次は少し遅れそうです。
「ガッツポーズして決意してくれたとこ悪いけど、肉体を構成するんだ……後数分はかかるよ」
俺は恥ずかしすぎて顔を真っ赤にし、静かに椅子に座った。
「てっきり既に完成してると思ってたんですが……他の人もこんなに時間かかるんですか? 」
「普段は私の姿を見るかのくだりでもっと時間を消費したり、どのガチャを引くかもっと悩んだりしてるからね。君はあっさり決めすぎだったね」
俺、あっさりしすぎてたのか
「あの、俺のトラウマってどうなるか聞いてもいいですか? 」
俺は異世界生活で重要な事を質問した。
「それも君の記憶の一部なんだから当然戻るよ、ただ精神力を強くしてあげるから、数分はきついと思うけどそれを乗り切れば廃人まではならないかな」
廃人まで行かないのは嬉しいけどやっぱり戻るか。
それよりも勝手に能力を上げていいのか?
「精神力を強くするっていいんですか? 」
「うん、大丈夫だよ。もともと私たち転生、転移担当の女神は知力、精神力、度胸、勇気の中から一つステータスにかかれない加護をつけることが出来るんだ。ただ、これは私達が気に入った子にしか授けないから持っている人は少ないけどね」
俺はラッキーってことか……でも俺のどこを気に入ったんだ?
「それで、俺はその中の精神力を授かったんですね。でも、俺のどこを気に入ったんですか? 」
「面白かったし、加護を授ければその子のことをいつでも見ることが出来るからね。一本しか入ってない呪いの武器を引いちゃう子なんて面白いに決まってるじゃないか、これからもちょくちょく笑わせてもらうよ」
クソッ!この女神様性格悪いぞ!
しかもいつでも見る事が出来るだと……プライバシーなんて無いじゃないか!!
「さて、そろそろ本当にお別れだね。異世界へは君の愛用してた無地の真っ黒いジャージで送ってあげるし、お金も少し渡してあげる。異世界での常識は異世界に着いた瞬間わかるようになってから安心してね」
そろそろ行くのか、では行きますか!!
「では改めて、行ってきます」
俺の足元に金色の魔法陣? が広がり光が溢れる。
「あ、それと大サービス私の姿をあなたにだけ見せてあげる」
おい、今なんて……その瞬間光りに包まれた俺は女神を見た。
◇◇◇
「な!触らないで!! 」
俺の目の前で人が叫んでいる。
……どうやら俺はテンプレに出くわしたらしい。
--数十分前
召喚された場所から俺は殆ど動かず路地裏で考え事をしていた。
……確かに女神様は美少女だった。
艶やかな腰まで届くほど長い黒髪、形のいい眉。大きく、綺麗な黒眼、しっかり通った目鼻立ち。小ぶりで柔らかそうな桃色の唇。小顔で身長は百七十センチメートルくらい、可愛いと言うより美人そのままの顔立ち。
正に大和撫子みたいだった。
地球で見たどのアイドルよりも、キャラクターよりも美しかった。
まだ脳裏に焼き付いている。もう消える事は永遠にないのかも知れない。
確かに廃人になっても見たいほどの美貌かもしれない。でも押し付けは酷いと思「ッッ!!」酷い頭痛が俺を襲う。
「ぐ、グアアあああ!!」死んだ時の記憶、感覚が俺を襲い、そこに女神様の姿を見た代償が追加される。
「ぐう!! アアア!!!! 」
俺は路地裏で倒れる。
「もう二度と殺されて、たまるか!! 」
◇◇◇
痛みが止んだ後、俺はステータスを出した。『体力が減っていて気づいたら死んでた』なんて事には本当になりたくないし、やっぱりステータスとか見て見たいからだ。
「ステータス、オン」
別に言葉に出す必要は無いが敢えて出して見た。
「おお……」
思わず声が出てしまう。広げた掌から青色の板が出現したからだ。ステータスは自分にしか見えず、他の人に見せる時は、許可を出さなければいけない。
不思議とステータスの文字は頭に入ってくる。
◆◆◆
(見やすいように、新しくなった所には★をつけていきます。主人公には見えません)
名前 ツルギ
種族 人族
所属 一般人
レベル 1
職業 無職
能力値
体力 80/80
魔力 50/50
能力値
筋力 46
守備 27
知的 30
魔力 20
魔抗 20
俊敏 35
器用 40
技術 50
犯罪履歴 無し
スキル
「ツルギ流木刀術」・・・木刀で戦う時我流奥義を使える。レベルにより奥義解放
「憧れ」・・・毎日日課をこなせばその日はステータスアップ、日課をこなさないとステータスダウン。 回数は百回以上
「愛想」・・・愛想笑いが上手くなる。 ★
「生活魔法」・・・生活に便利な魔法を使える。 ★
経験スキル
「龍線」・・・剣に雷龍を纏い敵に神速の突きを繰り出す。
固有スキル
「精神汚染」・・・状態異常に掛かりにくくなる。精神力向上。★
武器 黒刀 (龍)
◆◆◆
俺は自分のステータスの結果に驚いていた。
この世界のどこの常識か知らないが、その知識の中にあるステータスと比べても俺は高い方だった。
能力値はレベル1、無職の平均よりも高く、スキルの数も多かった。
何故か我流木刀術を作ってしまっているし、経験スキルまで持っているが、俺の地球での頑張りは無駄では無かったのだと実感する事が出来た。
「憧れ」のスキルは過去に憧れた勇者とか英雄への憧れだと思う。
でも、戦えることがわかったのは良かった。俺が苦しんでる時確認できた中だけでも四人俺に絡もうとしてきたが、半狂乱でのたうち回っている俺を見てビビって帰っていった。
ただ、今考えると木刀が出たのは良いことだった。トラウマから刃物を見ることまでは出来ても絶対に触れたくなくなってしまった。
これで「聖銀の剣」とか引いてたら俺の異世界生活終わってたかもしれない。いや、それを売って暮らすとかか?
まあいいや、俺は地球でやっていた様に今やるべき事をメモ帳……持ってないから脳内で過剰書きする。
・木刀を召喚する。
・路地裏から脱出する。
・身分証を作るために冒険者に成る。
こんなところか……一個めからやって行くか、木刀の取り出し方は感覚ですぐにわかった。
目の前の空間に手を伸ばすと硬い何かに触れた。それをしっかり掴み引き抜くと……俺の手の中には真っ黒い木刀--黒刀 (龍)があった。
これでチンピラに脅されても逃げるくらいはできるかな? 倒せそうなら倒して、現金でも奪うか。
この世界の常識の方が強く出ているので戦闘や、その後の行為に対する忌避感は無くなっていった。
路地裏を木刀を持ちさまよっていると前方から声が聞こえてきた。
◇◇◇
それで現在に至るわけです。
俺がこっそり声のする方向を見ると路地裏の一本道で多分二十歳くらいの皮の鎧を着た。背の高い赤髪ロングの美人が、背の低い悪党っぽい服装奴と口論していた。
俺は颯爽と助けに行く--なんてことはしない。俺の主観だと赤髪の美人さんは悪そうに見えないが、もしかしたら悪党っぽいやつが正しいかもしれないからな。決めつけは良くないから、何も知らない奴は関わらないのが一番なんだ。
おっ悪党っぽい奴が剣を抜いた。赤髪の美人さんは武器を持っていないようで後ろの道から逃げようとしている。
しかし、後ろの道からも両手斧を持った俺と同じくらいの背の高さの男が現れて絶体絶命ってところだな。
うーん、助けるか迷うな。でもここで助けておけばフラグ立ちそうだし、この路地裏から脱出出来そうだな。
俺は無言で静かに駆け出し背の低い男の首を木刀で横薙ぎにぶっ叩き意識を消し飛ばす。武器スキル「手加減」を使い死なないようにする。
「な!! 誰だてめぇ!! 」
仲間を吹っ飛ばされキレたもう一人が斧を振りかぶる。俺は木刀を両手で持ち、その斧に対抗して、下から振り上げる起動で対抗する。
叩き潰す為の起動で放たれる大振りの鉄の両手斧と下から掬い上げパリィする起動の黒い木刀が打ち合う。
どちらが砕けるかなんて一目瞭然だった。
ガキンッッ!!
激しい音がなり両手斧は石でできた道を深々と抉った。
赤髪の美人も、敵も驚いていた。その隙に俺は体制を立て直す。
俺がやった事は、下から木刀を掬い上げ、斧の面の部分に当て、振り落とされる地点を俺の体からずらし、衝撃が俺に響く前に木刀を空間にしまっただけ、タネを知っていたら凄いことはないが、知らない人からすれば斧が弾かれ、弾いた木刀は塵一つ残さず消えるという驚きの現象が起きたのだ。
「な!!消えた!!?」
敵は油断からか驚愕からまだ立ち直れず斧をかまえるのも時間がかかっていた。
俺は敵に向かって駆け出し右手に木刀を召喚する。
敵がようやく斧を振り上げた頃にはすでに俺は射程内にいた。
俺は無言で敵の顎を下からすくい上げる。骨が砕けた感覚と共に敵が数メートル先に吹っ飛ぶ。
俺は戦闘に勝利したみたいだが、当然ファンファーレも無ければレベルアップ音もなかった。
しかし俺がステータスを確認すると……
◆◆◆
名前 ツルギ
種族 人族
所属 一般人
レベル 3
職業 無職
能力値
体力 80/100 20アップ★
魔力 50/50
能力値
筋力 50 4アップ ★
守備 27
知的 33 3アップ ★
魔力 20
魔抗 20
俊敏 38 3アップ ★
器用 40
技術 53 3アップ★
犯罪履歴 無し
スキル
「ツルギ流木刀術」・・・木刀で戦う時我流奥義を使える。レベルにより奥義解放
「憧れ」・・・毎日日課をこなせばその日はステータスアップ、日課をこなさないとステータスダウン。 回数は百回以上
「愛想」・・・愛想笑いが上手くなる。
「生活魔法」・・・生活に便利な魔法を使える。
経験スキル
「龍線」・・・剣に雷龍を纏い敵に神速の突きを繰り出す。
固有スキル
「精神汚染」・・・状態異常に掛かりにくくなる。精神力向上。
武器 黒刀 (龍)
◆◆◆
やっぱりレベルが上がっていた。ステータスとはその人の経験によってレベルが上がったり、能力値が上がったりする。何も敵を殺す必要もなければモンスターを狩らなくてもいい。これは嬉しい仕様だった。
今の戦いで俺は魔法を使わなかった。だから魔法関係は上がっていない。初めの方だからレベルはサクサク上がっていきそうだが、能力値の上昇も高くない。上級冒険者はステータスは余り目安にならないようで、ステータスを身分証明書にしかしていないらしい。。
「あの、助けていただきありがとうございました。私はレインと言います。あなたの名前を伺ってもいいですか? 」
改めて赤髪の美人--レインを見る。丁寧な口調とは裏腹につり目ぎみの目をしておりその美人な顔の構造と相待って少し怖い印象を受ける。
顔は地球だったら百パーセントアイドルをやっているレベルの顔の持ち主で凄い美人だ。身体つきも出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる。
痩せているが病的な痩せ方ではなく、スラッとしている。
何らかの皮でできた鎧を着ており『冒険者』と言った感じだった。しかし武器は持っていなかった。
因みに人族だった。
「俺の名前はツルギ、助けたのはこっちにもメリットがあった、だから気にしなくていい」
そう、美人と出会えたのはとても大きな幸運だが、俺はそれよりも困っている事があった。
「私を助けるメリットって?」
レインがそう尋ねてくる。
「ここから出る方法を教えてください」
俺は早くここから出たかった。敬語なのはこちらが恩人でも人に物を頼むのだから命令は良くないと思ったからだ。
「そ、それだけでいいの、それぐらいだったらいいけど」
少し驚いた感じだったがすぐに了承してくれた。
それならもう少し頼んでみるか。
「あと出来れば冒険者ギルドに連れってくれるとありがたい」
「うん、私も行く予定だったしそれくらいならいいよ。それじゃあ案内するね」
「頼む」
レインがさっきから木刀が気になっているようでチラチラ見ている。
それもそうだ。この世界で木刀を使うなんてそんな常識無視してる奴いるのか? しかも、それが命がけでモンスターを狩る冒険者だぞ。反対の立場だったら俺は間違いなく『こいつマジか? 』と思うだろう。
なんであるのか知らないが俺の中にあるこの世界の物語の記憶で、木刀を使ってるやつなんていない。
でも、俺はなってやる『木刀使いの冒険者』に
読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字教えて頂けると幸いです。