1刀、プロローグ
短編で出したものを連載することにしました。
これは短編と同じ内容です。
巨大なスクリーンに一人の少年が映し出されている。
黒髪、黒目、顔立ちは平凡だが、少しはイケメンと呼ばれる程度の容姿を持つ、身長百七十五センチメール位の黒いジャージを着た少年がいた。
その少年は一心不乱に一言も喋らず木刀を振っていた。
この少年は小学校三年の時に『カッコいい』と理由で木の枝をひたすら振り回し始め、八年経った今では我流を名乗っても差し支えない程の腕前になっていた。
元から才能があった為、師が居なくてもここまで来ることが出来たんだと思う。
しかし、この少年が木刀を振る理由は変わらず『カッコいい』からだ。
少年は日課をこなし昨日書いた手帳を開いていた。
ーー剣城 新の一生
「これが次ここに来る人かぁ」
殺風景な真っ白い部屋で私はそう独り言を呟く。
◇◇◇
俺は日課の素振りを終え昨日書いた予定表を見る。
『日課を終えたら明日発売の新刊ラノベを買いに行く』
簡潔にまとめられたものを読み行動する。
ずっと楽しみにしていたラノベだからなぁ早く買いに行こう。
◇◇◇
俺は、普段は通らない人通りの少ない道を通り、家に帰っていたーーと言っても俺含め五人は歩いていた。
その理由は『早く帰って読むぞ!!』という簡潔なものだった。
俺がなぜこんなに、今回買ったラノベを楽しみにしているかというと、今回買った十四巻はヒロインの過去の話が書かれていて、とても楽しみにしていた。
もう一つの四巻目は『無能だった主人公が最強だった奴と再会する』という個人的に大好きなシュチュエーションだったから本当に早く家へ帰りたかった。
俺は気持ちが浮かれていた、そのせいで自分に迫る危険に気づけなかった……
◇◇◇
そして俺の家まで残り約五分のところまで来た時事件は起こった。
「とっ通り魔だ!!」 「ひっ人殺し!!」
そんな声が前から聞こえてきた。
(は? 人殺し? 通り魔? )
そう思いながら前を向くと……全身血だらけの黒い雨合羽を着た、血だらけの包丁を持った男がいた。
この男を一言で言い表すなら『通り魔』だった。そんな男が俺に包丁の先を向けてくる。
どう見ても俺を殺そうとしている。
(は!? 俺このまま死ぬの!!? い、嫌だ!! まだ生きていたいし今日買ったラノベだって読みたい、死にたくない!! 死にたくない!! 死にたくな……かはっ!! )
通り魔は俺に向かって走り出し俺の腹部に刃渡り十五センチメール位ある包丁が根元まで刺さっていた。
いっ痛い痛い痛いいたいいたいいたいいたい……
「ふふ、ふはっはあハッハハハハ!!!! どうだ! 俺はお前とは違うんだ!! 待ってろよ殺してやるから!! あはははハッハハハハ!! 」
は? 俺はお前なんて知らねーよ……「うぐ……」
あいつが包丁を俺の腹部から思いきり引き抜いた。「かひゅっ!」声にならない声が漏れて俺の血が噴水のように噴き出す。
(熱い熱い熱い熱い熱い熱いあついあついあついーー
今度は強い痛みよりもとても熱い高熱が俺の腹部を襲った。
視界が真っ赤に染まりぼんやりと走馬灯が浮かぶ 。
断片的な記憶の中で俺はラノベを読むか木刀を振り回しているくらいしかなかった。
(やっぱり……俺はま……だ死に……たくな……)
この瞬間世界からまた一人、人が死んだ。
◇◇◇
「んん」
(ここは、どこだ? )
俺は木の椅子に座っていた。俺がいる部屋は一面真っ白でとても殺風景だった。
「通り魔に殺されると言う無残な死に方をした者よ、あなたを異世界に転移させます。異論は認めません。これは確定事項です」
後ろから鈴のなるような綺麗な声でそう言われた。
(異世界に転移? 転生じゃなくて? )
俺は、この手のラノベはしっかり読んでいたので一瞬落ち着いたしかし--すぐに自分が死んだ瞬間の事を思い出した。
(そうか、俺通り魔に刺されて……う、うえぇぇえ)
俺はゲロった。つまり吐いたわけだ。
「うーん、説明するのにこの状態だとめんどくさいな、とりあえず『えい』っと」
その瞬間俺のトラウマが全て消え去った。その上死んだことを素直に受け止めることができた。
「うん、これで話せるかな。そろそろこっち向いてくれるとありがたいんだけどなぁ」
さっきから話しかけていた女神様? の方を向き俺は絶句した。
「め、女神様? 」なんたって女神様? は金色のオーブにしか見えなかったからだ。
「ん? ああ、この姿のことか。まあ君の考えた通り私は女神だよ。ただ、君が私の本当の姿を見ると精神が崩壊して廃人になっちゃうからフィルターをかけているんだ。たまに大丈夫な人もいるからチャレンジしてみるかい? 」
女神様が(多分)微笑みながらそう問いかけてくる。しかし、俺はもうあんな目にあいたくないしかもそれ以上とか本当に嫌だ。
だから--
「いえ、結構です」
俺はこう答えた。
「試してみる価値はあると思うよ。これでも周りから美人って言われているからね」
そうだめ押しされて俺の心は一瞬揺らいだが考えは変わらない
「俺の答えは変わりません。もうあんな目会いたくないので」
「そうか、君は面白いね。今までこの質問をした中で君だけだよ「挑戦しない』と答えたのは」
嘘だな。まず何人中かがわからないしもしかしたら無視したのかもしれないし。
「そんなにみんな挑戦するんですか? 廃人になる可能性高いのに」
「多分転移者選ばれて舞い上がってしまったんじゃないかな、なんか一人私のことを『君の姿を看破すれば女神ルート解放するのか。こんなのチュートリアルだな』とか言ってる人もいたからね。
まあそんなこと言ってる奴以外は挑戦前に止めてるんだけどね」
それってこの人をヒロインとして見ると廃人になるってことだよな……怖いな。
「じゃあ説明を始めるね。私は日本、高校生担当女神リーシャ、そして君にはこれから異世界に行ってもらいます。まあラノベばっか読んでる君には説明は必要ないと思うけどね〜」
リーシャって言うのか。でも、少しディスられた気がする。
「まず世界観は中世ヨーロッパ。でも、魔法と歴代転移者によってある程度文明は発達しているからみんな清潔だしリアルファンタジーにあるような皮肉めいた現実設定みたいな物はないから安心していいよ」
少しメタいがそれはよかった。道の至る所に排出物があるとか最悪だしな。
「それは良かったです。本当に……」
「当然、剣と魔法のファンタジー世界だからね安心していいよ。スキルとかレベルとかもあるし一夫多妻制もあるよやったね!! 」
おお!! そんな世界なのかやっぱりチートとかもらって俺TUEEEEEEEするんだろうか?
「やっぱりチートとかあるんですか? 」
「ふふふ、そろそろくると思っていたよ、その質問! その質問は『よくある質問』ランキング第二位だよ。
ちなみに一位は『そんな世界で戦えるんですか? 』で、第三位が『地球に帰れるんですか? 』だね。死んでるんだから帰れるわけないのにね〜」
「で、答えの方はどうなんですか? リーシャさん」
話がずれそうだったので元の話に軌道修正する。
「ああ、ごめんごめん、よくある質問ランキング第一位に対する答えは『ハイ』だよ。ある程度戦う力はプレゼントするから喜んでね。第二位に対する答えはガチャを引いてもらった結果次第だね。第三位は答えるまでもなくわかるでしょ」
まあ『帰れない』だろうなそれよりもガチャの方が気になるぞ。
「あ、あのっガチャって!」
そういう異世界転移特有の物を聞いてつい興奮してしまうのは仕方ないと思う。
「三種類あるガチャの中から一種類選んでそれを引いてもらい、そのまま異世界へ飛ばすよ。絶対に引き直しややり直しは聞かないからねよく考えて選んでね」
「一回、なんですよね」
当たり前のことだけどしっかり確認しとかないとな。
「生前一万人単位で人を救ったりしていたら二回弾けたりもできるよ、でも君じゃ無理だね」
まあそうだよな。
「じゃあ、ガチャ降臨!! そしてこれが説明書だよ」
赤色、緑色、青色のガチャガチャが出現した。
そして薄っぺらい本を渡された。
◆◆◆
NO.Ⅰ 種族ガチャ・・・種族を変更することができる。(人族と龍人族は対象外)全六種
目玉種族
悪魔族
(種族は多分全八種いるんだろうな、その中で悪魔族が強いというわけか。でもこれはいいかな)
NO.Ⅱ 魔法ガチャ・・・特殊魔法が必ず出る。全?種
目玉特殊魔法
惑星魔法
(魔法は憧れるけどハズレが怖いな使えない魔法だったら終わりだしな。ただ目玉だけ有って惑星魔法はやばそうだな、爆裂魔法とかあるかな? )
NO.Ⅲ 武器ガチャ・・・特殊武器が必ず出る。このガチャで出る武器は異世界では作り出せない。
全?種
目玉特殊武器
エクスカリバー
(うん、エクスカリバーはやばいよ、そんなん持ってたら俺でも主人公なれる気がするよ。ただ、ハズレでもそんな失敗しない武器ガチャを引くかな)
◆◆◆
(武器だな、魔法は特殊があるんだから通常魔法もあるだろう。それを頑張って取ろう。種族ガチャを引いて万が一オーク族とかあった日には終わるからな)
「では、武器ガチャを回します」
「わかったよ、じゃあ青色のガチャを回してね」
俺はガチャの前に立つそしてガチャの取ってを回す。
俺は深呼吸しながら回し切った。……すると金の光りが溢れた。
「これは最高ランクの特殊スキル確定だよ。ラッキーだったね」
リーシャは呑気そう言う。
ーーガチャから巨大な、世界樹の様な木が生えそこにに黒い雷が落ち、エネルギーが濃縮された。
そして派手な演出が終わった後、さっきまでガチャがあったところには、一本の黒い剣ーー黒く鋭い木刀があった。
俺は静かにその木刀を手に取る。雷が俺の体に吸い込まれる。
「嘘だろ……」
俺はこの木刀の説明文を読んで絶句してしまった。
「あちゃー」
リーシャもひたいに手を当てそう言う。
◆◆◆
名前 黒刀 (龍)
特殊能力 『絶対破壊不能』・・・絶対に壊れない、鉄のような質感になるが斬撃は出来
ない。
『手加減』・・・手加減がしやすくなる。
『雷光の導き』・・・自分の体力が三割以下になった時発動可能。武器に雷を纏
わせ切れ味がまし、飛ぶ斬撃を出せるようになる。
勝利への道筋が確率で見える。
『空間収納』・・・この武器のみ空間に収納できる
『???』・・・?????
常備効果 呪い・・・この武器を装備した者は一生この武器しか装備出来ない。持つと弾かれる。
この武器は装備解除出来ない。この武器の通常攻撃では斬撃は繰り出せない。
◆◆◆
俺が引いた武器は絶対に壊れない代わりに他の武器は装備できないし装備解除すら出来ないらしい。
「そ、それじゃあ頑張ってね。ツルギ君」
もう行くのか。
「ツルギって?」
「君の名前はツルギで登録してあるからね、それじゃあ異世界で幸せに生きてね」
「行ってきます」
待ってろよ異世界!! 俺の冒険はここからだ!!
名前 ツルギ
種族 人族 (17歳)
所属 一般人
レベル 1
職業 無職
能力値(偽装不可)
体力 80/80 (体力、無くなったら瀕死になる)
魔力 50/50 (無くなっても特に何もない)
力 46 (攻撃力)
守備 27 (防御力)
知的 30 (知識)
魔力 20 (魔力)
魔坑 20 (魔法防御力)
俊敏 35 (素早さ)
器用 40 (道具の作成)
技術 50 (武具の扱い)
犯罪履歴 無し(犯した犯罪が記される。しっかり贖罪すれば消える。偽造不可)
スキル (他人に見せるか変更可能)
「ツルギ流木刀術」・・・木刀で戦う時我流奥義を使える
「憧れ」・・・毎日日課をこなせばその日ステータスに補正あり、日課をこなさないとステータス弱体
後天的に手に入れたスキル。「生活魔法」は勇者が作った法律により、基本誰でも持っている。スキルの出現方法は不明だが、適正により獲得率が変わる。天才だからいっぱい持っているとかはない。
経験スキル (他人に見せるか変更可能)
「龍線」・・・剣に雷龍を纏い敵に神速の突きを繰り出す。
その人の経験により作り出されるスキル。
固有スキル
無し
女神に選ばれた者だけが持つスキル。
武器 黒刀 (龍)
読んでいただきありがとうございます。
不定期ですがエタらないように頑張りますのでよろしくお願いします。
誤字脱字等ありましたら教えていただけると幸いです。