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また病院

 結局、リハビリとはなんだったのか。うごご…。

 かなり無理して食べたおかゆはダメだったので、俺の食事はヨーグルトです。でも半分はダメです。


 母親はそれでも喜んでくれたけど、俺としては「おかゆ作らせておいて何なんだハゲ」って感じ。


 藪に相談したら、「姉ちゃんが妊娠したとき、つわりでどうせ吐くからって、オレンジジュースばっかり飲んでたよ。吐くときにも美味しいから、だってさ?」


 おまえはまた、いらんウンチクを…、と思ったけど、オレンジ飲んだら吐くとき楽だったです。ありがとう。ありがとう、藪の姉ちゃん。





 それにしても、冴島のくれた歌をネットで調べてみたら、色々と分かった。この歌の作者は、式子内親王で、彼女は役職から恋愛も結婚も出来なかった。だからこれは、許されない恋の歌だ。


 相手とされる歌人、藤原定家とは両想いだったのではないかと言われている。…両想いかぁ。


 定家は有名人だけど、後世にはこの悲恋を扱う舞台もあって、それが少しオカルトチックで気が重くなる…。式子の亡き後、定家はわすられぬ恋人を想いすぎて、それがかずらとなって式子の墓に絡み、成仏を妨げてしまうという。

 いくらお祓いしてもまた蔓延はびこかずらに、坊さんもお手上げだ。とんだストーカーだぜ。


 俺は定家みたいにはならないから、安心しろ、冴島。


 ネットでそれらを調べていく途中、よくあるお祓いとかの業者ページも出てくるわけだけど、理不尽系ホラー映画に出てくる、都市伝説とか呪いって、大抵お祓いの意味ない。


 だから、全く興味なかったんだが、「呪いなんて、閉じ籠れば大丈夫。ヒキニート最強」って書いてあるサイトが気になって、覗いてみることにした。


 …………………。

 これは。もしこれが本当なら、運が良ければ予言にある死を回避できるかもしれない。


 思えば、冴島の行動は正しかったんだ。

 だが、あと一歩だった。


 ただ、『死にかた』から溢れ出す悪意と同じように、死の予言も曖昧でじ曲がっている…!

 だから、本当に回避出来るわけじゃないだろう。試してみる気には、なれないな。


 悪魔的に願いを叶えるウィッシュ・リングみたいなもんだ。正確に、他の意味に取られないように、聞き間違えられないようにはっきりと、願いを口にしないと破滅を呼ぶ悪魔の指輪。

 例えば、「冴島さえを生き返らせてくれ」と願ったとして、その冴島は、俺の知らない別の冴島さんかもしれないし、ゾンビかもしれない。いつの記憶を持っているのか、はたまた自分の意思も持たない人形なのか、生き返ってすぐに死ぬかもしれない。そんな感じ。


 だから、『死にかた』の予言を回避するためにはこのサイトにある通り、徹底的にやらないと。曖昧で付け入る隙があれば、予言は必ずそこを通してくる。俺には分かる。


 誰かに、誰かに伝えないと…。

 そうだ、学校の裏サイトに書き込みを…!


 スマホを取ろうと、立ち上がった途端にやってくるこのぐんにゃりした感じ。ヤバイ。頭の片隅で警報が鳴るが、体は既にコントロールを離れている。

 駄目だ、意識は手離すな。

 床に打ち付けられた一瞬、頭だけは打たないように受け身を取る。結局は打つはめになったけど、直にじゃないから勢いは殺せた筈、だ…。

 ……………

 ……………………。





 誰かが俺の頭を撫でている。

 やめてくれ、もう、休みたいんだ。


「古賀ちゃん、起きてよ、古賀ちゃん」


 冴島さえ…?


「そうそう。オレオレ」


 何だ、特殊詐欺か。危なかったな。


「ちょ、ちが…」


 デカイ男が泣くんじゃねえよ、気持ち悪い。

 あれ、俺は何をしてたんだっけ?


「覚えてないの?」


 すごく大事なことを考えてた気がするんだけどな。何だっけ…思い出せないな。


「頑張って思い出して!」


 …無理。


「はやっ!? …もしかして、オレの告白の返事だったり、しない?」


 ………。

 ごめん、俺、本命の嫁がいるんだ。


「そのひと画面から出てこないじゃん!?」


 恥ずかしがりやなんだ。


「もう! 古賀ちゃんの意地悪。どんな返事でもいいからさ、聞かせてよ…」


 あー。うん、そう、だな。

 ちゃんと考える。


「うん! 古賀ちゃんはそろそろ起きなくちゃいけないから、オレも行くね。藪によろしく!」


 あ、待てよ…。冴島さえ…?





 また病院…。


 こいつ、何回運ばれてくるんだろうって思われてるだろうよ。点滴してもらう。今回は色々と検査もされたさ。

 夜中に倒れて運ばれて、翌日の夕方に解放されるという…。俺が馬鹿なんですかね、どうなんですかね。頭にも包帯巻かれてるし。


 藪が見舞いに来てくれていた。


「古賀、頭、大丈夫か?」

「お前がな」

「えっ」

「見舞いサンキュ」

「お、おう」


 母親から聞いたりして来てくれたんだろうか。マメな奴め。


「なんか、オマエんチ行ったら、デカイのが居てさ。ここ教えてくれた」

「……高尾?」

「多分な」


 …なんでやねん。

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