表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/17

「芦屋さん、さっきの話…」

「ああ。やっぱり、事件性はないみたいだな」

「それじゃあ、死因は不明のまま、急死ってことですか?」


 二人は、狂ったように泣き叫びながら、古賀 正芳のせいだと喚いていた冴島の母親を思い浮かべた。


「殺人を示す証拠は何も出なかったし、そもそも頭の傷は死後のものだったんだ。古賀君がどんなに手際が良くとも、無理だったさ」

「実際、古賀 正芳は高校生とは思えない程、的確な処置をしていましたしね…」

「良すぎる、か?」

「ええ。ですが、いかがでしたか?」

「わたしの勘ではシロだね」

「そうですか…」


 杉野は事情聴取にあたり、長く少年科でろくんできた芦屋に、古賀少年の当たりを見極めてもらおうと連れてきたのだ。


「それにしても、アプリとはね…。よく分からんな」

「ちょっと見てみましょうか?」


 杉野は慣れた手つきでスマホを操作し、アプリを検索した。しかし、画面に写し出されたのは、


『Not found』


「おかしいな…見つかりませんね」

「そう、か…」





『冴島死んじゃったね』

『殺されたって話、ほんと?』

『違うだろ、心臓マヒだろ』

『葬式、行った?』

『見た見た、冴島の母ちゃんがさ~、コガって奴に塩撒いてた』

『ブッ叩いてたね~』

『それで古賀くん休んでるんだ~』

『古賀って二組の? アイツなんかしたん?』

『冴島コロしたんだってさ』

『げ! マジマジ?』

『やめなよ、嘘ばっか!』

『実際は?』

『先生の話だとさ、アプリかなんか、呪いらしいよ?』

『意味不明ワロス』

『あれじゃね、『死にかた』じゃね?』

『なんそれ』

『知ってる。『今日の死にかた占っchao!』だわ』

『あー、マジで死人出てるっていう?』

『え、何それ』

『赤文字で表示されたら、本当に死ぬらしーよ?』

『はぁ? はぁ? はぁぁあ?』

『見つかんないよ?』

『下手くそかw ちゃんとあるじゃん。インストしよ』

『見つかんねって』

『ちゃんと探して~』

『古賀はヒトゴロシ』

『萎えるわ~』





 葬儀を終えて、焼き場までの車が出ていくのを、喫茶店の窓から見ていた。…冴島、本当にいなくなっちまったんだな…。


 胸のあたりがチクチク痛む。飲み下した筈の珈琲がせり上がってきて苦しい。

 俺はトイレで腹の中のもの全てをぶち撒けた。


 母親に無理言って連れてきてもらったけど、ちゃんとお別れは出来なかった。仕方ない…仕方ないよな。


 さっきから母親はずっと冴島の母ちゃんの悪口を言っている。俺が死んでたら、あんた、同じことしたんじゃないの?

 外面が良いから、泣き笑いで冴島に俺と別れの挨拶させてたかな…。


 とにかく、冴島の体が警察から帰ってくるまで丸一日以上かかったからな…。通夜をして葬儀を出して、今日はもう火曜日だ。昨日は学校休んだけど、さすがに明日は行かないと…。……。きもちわるい。


 夕飯も入らなかった。


 部屋に戻って、明日の支度をする。スマホを確認したら、何件かメッセージやメールが入っていた。クラスの奴とか、心配っつうか、 事情知りたい、みたいな…。


 その中に、冴島からのメールがあった。受信日時は、21日、午前0時00分。件名は……。


 俺は震える手でメールを開いた。


『誕生日おめでとう! 古賀ちゃん! 

 なんと、プレゼントを用意してマス!

 何だと思う~? ナイショだよ~』


「バカ冴島さえ…。時計だろ? 知ってるよ…」


 熱いものが目尻から零れていった。

 ヤバイ、冴島の声が聞こえてきそうだ。


 俺は朝までずうっと、冴島とのメールや、メッセージのやり取りを読んでいた。

 …すごく笑えて、すごく、泣けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ