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入力してみた

 ゲーセン帰りに冴島が、スマホをそっと差し出してきた。なんだよ、と思って見てみると、画面には女の子好きがしそうなキラキラしたキャンディやらジャムでデコられたアプリのトップ画像だった。


「なになに? 『今日の死にかた占っchao!』って…何じゃこりゃ」

「流行ってるらしい…」

「で?」

「や、怖くね?」

「ねーわ」

「いてっ」


 俺は冴島の額に手刀を叩き込んだ。…ウソ、ただ当てただけ。痛いもんかよ。

 ホントこいつは、変なアプリばっかり見つけてきやがって。しかもまたぞろ俺を巻き込むつもりだな?


 流行に乗ると言うが、俺から見たら流されっぱなし。冴島に誘われて始めたアプリゲーなんて、せっかく勉強の合間にやっちゃあアイテム流してやっても途中で飽きてやめちまいやがんの。


「もう俺は協力しねー」

「ちょっ、違うんだって。これは別にゲームじゃなくて、名前入れたら勝手に占ってくれるんだって」

「はぁ? 占いぃ?」

「そうそう」

「何占うんだよ」

「だから、死にかた」

「はぁ!?」


 ホンマ、はぁ? ですわ。

 何言ってんのか分かんね。


「や、だからさ、ウーン…」

「んだよ?」

「遊びでさ。今日の死にかたはこれです! みたいな。で、見て笑うってゆー…」

「ふーん、やれば?」

「えっ」

「えっ、てお前、やるために見せたんじゃねえの?」

「いや、実はこっちは前フリで、本命は別にあるんだ~」


 知らんわ!


「へへ、こっちは『今日の告白 flyingフライン dateデー』っていう…」

「フライデーって金曜じゃん、今日のって、意味分かんね」

「ちが、フライデーじゃなくて、フラインデーね」

「今日のって付くやつ、シリーズなん?」

「違うけど。じゃなくて、古賀ちゃんにこれやってみて欲しいんだって…」

「『死にかた』?」

「『フラインデー』の方」

「俺が?」

「うん…」


 俺は「うわぁ、うぜー」って顔をしてみせた。いつもならここで引く冴島が、なんか今回は唇をへの字に結びつつ、俺にスマホを押し付けてくるので、俺は仕方なく受け取った。こいつでも食い下がることってあんだな。


 二年に上がってから何となくつるむようになった冴島は、運動の出来る帰宅部だ。こいつ曰く、部活するとテストが致命的らしい。勉強もしろし。

 俺は運動出来ない帰宅部、つーか本当は古典文学研究会所属だけど、一人だしね。内申書のためだしね。


 っつーワケで、学校()けたら教室で宿題したり、コンビニで菓子の新作見たり、漫画読んだり駄弁ったり…。なかなか高校生活楽しんでるワケですわ。女っけだけが無い。悲しい。


 さておき、マジかボケか知らんが冴島はこの『今日の告白 flyingフライン dateデー』ってやつを俺にやって欲しいらしい。


 フライングデータかデートか知らんが、何で彼女もいない、告白する予定もない俺に?

 冴島が何を考えてるのか、さっぱり分かんね。


「つかさ…俺だけ? お前もやれよ」

「あー、オレやった後」

「マジかー。見せろよ」

「スクショしてないし!」

「へこむ。あ、ならさ、お前はあっちやれよ、『死にかた』!」

「えっ、ヤだ」

「ちょっ…」


 即答かよ! ノリ悪ぃぞ!


「んだよ~。お前がやんないなら、俺だってやんねぇし」

「え~。そんなんズルいっしょ」

「ズルくはねぇよ」


 冴島はぶすくれた顔になったが、何かを言いたいようだったので待ってみる。


「…だって、それ。…噂あんだもん」

「ウワサ?」

「『死にかた』やってると、たまに変なバグみたいになって、表示の文字がさ、赤くなるんだって」

「で?」

「それ出たら、………ホントに死ぬって」


 あまりにも冴島が本気にしている風だったので、俺はつい吹き出してしまった。


「びびってんの!?」

「や、マジでヤバいんだって!」

「ぶはははは! は、腹いてぇ!」

「ちょ、笑うなよ! わーらーうーなー!!」


 冴島が肩をユサユサ揺すぶってくる。やめ、ちょ、お前の力強すぎんだよ!


「古賀ちゃん!」

「…んだよ」


 顔が近い。

 冴島は俺を怖がらせようとしてか、額がくっつく程に、ってかくっついてる! 近いわ!

 くそ、力が強すぎて振りほどけねぇわ。俺、非力ヒリキング!


「マジ、聞いて?」

「ん…」

「アプリの制作者さ、死んでるみたいなんだよね…。ネットの掲示板で一時期話題になってた」

「はぁ…」


 ネットのいた情報なんて眉唾ばっかじゃん?


「制作者の友達が書いてて、制作者も赤文字が出てきて笑ってたんだけど、『死にかた』の通りの日時に、同じ死にかたしたって…」

「は…。ウソくさ」

「本当なんだって!」

「うるせぇ」

「あ、ごめ…」


 冴島の顔が離れる。ふぅ、ようやく解放されたぜ。

 俺は掴まれていた二の腕をさすった。


「じゃあさ、やめとこうぜ」

「え…」

「冴島が嫌なんじゃしょうがねぇよ」


 俺もせずに済むしな!


「む~~~」

「何だよ」

「…かったよ、やるよ! やればいんだろ?」

「いや、別に…」

「オレのケータイでやってよ。オレ、古賀ちゃんのでやるからさ!」

「あー、うん…」


 何でこいつは、また…こんなにマジなんだろうね?

 まさかイジメでやらされて、とかじゃないよな?


 俺は鞄からスマホを取り出して冴島に渡した。で、さっきから押し付けられて持っていた冴島のスマホのロックを解く。ま、スライドしたら解けるからロックってもんじゃないけど。


 アプリ一覧の中に、『今日の告白 flyingフライン dateデー』を見つけて起動する。これまたキューピッドやらハートやらがキラキラしたトップが目に入る。…女子じょしかっ!!


 名前を入れる欄があって、俺は迷ったがフルネームを入れた。古賀 正芳っと…。

 ロード長げぇよ、通信量目一杯か!


 ぴろりん、と軽快な音がして、画面が表示された。

『おうちデートで初キッス! chu-chu』


 うはー。

 何だこれ。

 ないわー。


「古賀、ちゃん…」

「ん?」


 振り返ると、鞄を足元に落とした冴島が、青い顔して立っていた。差し出されたスマホには………


『冴島 あきら:5月20日 午後23時59分 

 死にかた:女の人に殺されchao!』


 ふざけたアプリだ。

 なにが殺されchaoだよ。


冴島さえ、気にすんなって…」

「字、が…」

「え?」

「字が、赤い…!」


 確かに、その画面の文字は、赤かった…。

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