魔力ゼロの落ちこぼれ
コンコン・・・ドアの叩く音で目を覚ます。
一週間くらいだろうか?基本的に本を読み、食事を持ってきてもらい、風呂に入って時々寝る。
そんな生活を繰り返していた。
「クーナ頼んだ。」
「かしこまりました。」
おそらく食事だと思うのでクーナに取りにいかせ、自分は再び本を読む。
少し経った所でクーナが奥から老人を連れて戻ってきた。
食事じゃなかったのか・・・
「何か御用で?」
本を読みながら老人へ問いかける・・・クーナがなんかオドオドしてるけどなんだ?トイレか?
「ほっほっほっ・・・いや何、一緒に食事でもとな」
食事のお誘いでしたか・・・でもまだ本読み終わってないしなー。
「まだ、勉強の途中なのですが・・・」
「構わん構わん、本を持っていけば良いだろう?」
・・・なるほど、一理あるな。
「・・・分かりました。」
「うし、それでは行こうかの」
老人に連れられて部屋を出て行く・・・所でこの人誰なんだ?
「・・・クーナ」
小声でクーナを呼ぶ。
「どう致しました?」
「この人誰?」
そう言って老人を指すと、クーナは頭抱えて教えてくれる。
「こちらはこの国の元王のグラン・イザルーク様です」
「へぇ、王族か・・・しかも元王が俺なんかを食事にねぇ」
何かあるのか?・・・俺との繋がりか?いやそれはないな・・・既に父と繋がりがあるからこそ今こうやってここにいるんだから・・・
そんな事を考えているとどうやらさっきのやりとりが聞こえていたようで
「安心せい、ただお主と飯を食いたかっただけじゃよ・・・お主と同じ年の孫も居ての、仲良くして欲しいんじゃよ。」
・・・本当か?イマイチ信用しきれないが、そこはいいとして
「俺は作法を完璧にこなす事なんてできないぞ?」
家では2歳を過ぎてから一人で過ごしてたし・・・
「別に構わんよ。5歳児に何を求めるのじゃ・・・ほれ、着いたぞ。」
そう言って食堂と思われるドアを開けると同い年位の女の子が2人グランに抱きつく。
「「おじいちゃん遅いー」」
そう言って上目遣いでグランを見る・・・おいグラン、鼻の下伸びてるぞ。
「遅いですよ父さん・・・その子は?」
中を見ると椅子に座っている人が4人、先程話した人の後ろに2人・・・おそらくこの人が現国王だろう。
「ああ、こやつがスルース家の次男のラストじゃよ、飯に誘ったら来てくれたんじゃ。」
「初めましてー、ラストといいますー。」
若干棒読み気味で自己紹介を終えると、現国王様が全員の紹介を始める。
「僕は、この国の現国王のジースだ。隣にいるのが僕の妻のサーシャで向かいの2人が長男と長女のノアとミサで今父さんにくっついているのがリーナとサナだ。それで後ろの2人が僕の側近のギースとランディだよ」
ジースの紹介とともに一人一人お辞儀をしている・・・流石は王族だな
・・・なんかランディさんにメッチャ睨まれてるし。
「ほれ、取り敢えずそこに座れ。」
グランに言われてサナの隣に座って本を読み始める。
「ハハハ・・・本当に勉強熱心なんだね!」
そこからは一家団欒のような感じだった。
時々家の事について質問されたりするが基本一言二言で終わらせる。
そんな感じで15分くらい経ったあたりでランディさんがいきなり怒鳴りつけてきた。
「貴様!!いい加減にしろよ!!スルース家、魔力ゼロの落ちこぼれの分際で!!」
「ランディ!!」
ジースが止めるが時既に遅し、俺の耳には届いている・・・そんな風に広がっているのか・・・いいねぇ
フフフ・・・おっと、また顔に出てしまったかな?
本も読み終わったし部屋に戻るかな・・・
「失礼します。」
ドアを開けて自分の部屋?へ戻る。
王族と食事なんて本当にロクな事がない。
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何故だろうか・・・僕は今この日記を書いている。
書くのは父さんが連れてきたスルース家の次男、ラスト君についてだ。
彼はとても勉強熱心で、私たちと食事の際も本を読んでばかりいた。
だが、それが気に食わなかったのだろうランディが彼を怒鳴りつけた。
彼は魔法に恵まれずに知力をつける事を目的としてウチに来たのだ、彼はその事を気にしているだろうと思って話題には出していなかったのだがランディがその事を彼に言った。
僕は直ぐに謝罪しようと思ったて彼を見たのだが・・・
彼の口元が少し笑っていたように見えた・・・
その後彼は自分の部屋に戻って行ったのでよく分からなかったが、何となく彼には何かあるのではないかと思った。
だからこの日記を書いた・・・
ジース・イザルーク