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8.お弁当を作りますか? いいえ、作りません。

高校生活の楽しみの一つと言ったら、昼食の時間ですよね。

今日は、未那さんの手作り弁当を教室でまどかさんと私と未那さんで食べています。

鳳凰院家のお嬢様なのに、料理上手だっていうのはビックリですね。

「このほうれん草のおひたし美味しいわね」

「私はこの出し巻き卵が」

「このお米はアレね。『パンダさんの笹の葉』でしょ?」

「そうなのですか?銘柄までは知らないですわ」

うちのお米もそうです。やはり、特Aを取るお米は違いますね」

「『ドリーム・マイ』も美味しいわよ」

「『癒しの米』は、藻塩を使って美味しいって聞いてるので食べてみたいですね」

「なんでお米の話題になっているんですの?」

「このおにぎりの塩加減がお米の美味しさを引き出していて、美味しいからです」

「自分で作れって言ってお母さんがうるさいけど、やっぱり料理はおいしく作る人に作ってもらうから美味しいのよね」

私は頷きながら、お弁当を食べています。

そこに、荻堂一真が遠慮なしに現れました。心遣いや気遣いが相変わらずできない人ですね。

「おい、愛梨。その弁当が美味しいなら、俺に弁当を作ってこいよ。お前のくそまずい料理を食べてやる優しい奴は俺しかいないしな。いいな」

と言って、返事を待たずに教室を出ていきました。

「愛梨、アイツにお弁当を作るの?」

「イヤです」

「ですよねー」

「でも、愛梨さんの作ったお弁当美味しかったですわよ。作ってきても問題ないのでは?」

「未那は、私のは美味しくないと」

「そんなことないですわ。まどかさんのも美味しかったですわよ」

「というわけで、未那さん」

「はい」

「荻堂一真の食べるお弁当を作ってきてください」

「でも、愛梨さんが頼まれたのでは?」

「私は作る義理が全く存在しないですし、なにより『弁当を作ってこい』と言いました。私に作ってこいとは言っていません。作ってあるお弁当を持ってこればいいんです」

「それもそうね」

「そんなわけで、お願いします」

「わかりましたわ。でも、よろしいんですの?」

「これで、荻堂一真の胃袋をゲットです。好感度もきっと上がりますよ」

「ガンバレ」

私とまどかさんで無責任なことを言い、未那さんを丸めこんで翌日荻堂一真にお弁当を作ってもらうようお願いしました。


翌日。

荻堂一真は、私のところにお弁当を取りに来ました。なので、未那さんが作ってくれたお弁当を渡しました。渡そうとすると、乱暴に奪い去っていきました。

そして放課後、まどかさんと未那さんとおしゃべりしているところに荻堂一真が現れました。

「おい、愛梨。お前の激マズ料理を食ってやったんだから、感謝しろよ」

と言って、急にお弁当箱で私の頭に殴りつけようとするのをまどかさんが止めに入りました。

「もう、女の子になんてことするのよ。副委員長としては、クラスメイトに暴力を振るおうとするのは見逃せないわ」

「お前には関係ないだろ。引っこんでろよ」

「関係ないわけないじゃない。それにそのお弁当作ったの、鳳凰院さんよ。彼女にお礼でも言ったらどう?」

まどかさんがそういうと荻党一真は急に慌てだし顔を真っ赤にして、未那さんに謝りました。

「悪いな。愛梨コイツが作ったと思ったんだ。本当はすごく美味しかった。ありがとう、鳳凰院さん」

「お粗末さまでした。でも、愛梨さんをお弁当箱で殴ろうとするのはいけないですわよ」

「いや、それは愛梨コイツが悪いから。俺が悪いわけじゃない」

自分に都合の悪いことを誤魔化すように、荻堂一真は慌てて帰り支度をして教室を出ました。


そして次の日、荻堂一真は私のところまで来て、

「次はズルをしないでちゃんと弁当を作ってこいよ」

「イヤです」

「馬鹿じゃねえの?お前の食えない料理を食ってやるって言う、俺の優しさを無駄にするわけ?」

「食えない料理なら、私が作る必要ないじゃないですか。食えない料理なので、そんなこと要求しないでください」

ここで、話が平行線になると判断したまどかさんが、話に割って入って来ました。

「愛梨、一回だけ作ってあげれば?それなら納得するでしょ」

「仕方ないですね。一回だけなら。でも、一回だけですよ。それ以降は、絶対に作りません」

「はぁ、俺の優しさを無駄にするお前の神経分からねえわ。仕方ないから一回だけ我慢してお前の不味い弁当を食ってやるよ」

「次からは絶対言わないでよね。いちいち、子ども会話の仲介なんてしたくないから」

「わかったよ」

上から目線で、終始不機嫌に言って荻堂一真は自分の席に戻っていきました。

「ごめんね、愛梨。次の授業までアイツが粘ってもイヤでしょ?」

「気にしないでください。次の授業の先生が来るまでここに馬鹿がいたら、怒られるのは私ですから」


仕方なく次の日には、次からは絶対に荻堂一真のお弁当は作らないという制約のもと、これまでの思いを込めたお弁当を作って来ました。やはり、お弁当を渡そうとしたところ、先日のようにお弁当を奪い去って来ました。

「ところで、愛梨。どんなお弁当を作ったの?」

「やはりこの愛梨さんの作ったお弁当美味しいですわね。次は、まどかさんの番ですわよ。楽しみにしてますわ」

「何気にハードルを上げないでよ...」

「そうそう、私も一真様にどんなお弁当を作ったのか気になりますわ」

「白い御飯を敷き詰めました」

「それで」

「その上に、市販の昆布巻きを乗せて藁人形に見立てておきました」

「それだけ?」

「もちろん」

「このお弁当との落差がありすぎますわね」

「そのお弁当なんか呪われそうね」

「呪詛を込めながら作ったので、うまくいけば呪いがかかってるかもしれません」


私が作った手抜き弁当を食べたらしい荻堂一真は憤怒の形相で、お昼休み終了の少し前に教室に入って来ました。それを見たまどかさんは、急いで荻堂一真のもとに行きお弁当箱を奪って、ヤツに何か言って戻って来ました。その後、ヤツは顔を真っ青にしていました。

「愛梨、もうアレのお弁当を作らなくていいわよ」

「なにを言ったんです?」

「ヒ・ミ・ツ」


まどかさんは何を言ったか教える気がないようです。私は荻堂一真のお弁当をこれ以降作らなくてよいということで、聞かないことにしました。ヤツのことにこれっぽちも興味ないので、どうでもいいことですからね。

森川まどかが荻堂一真に言ったことは、主人公を好きな彼が主人公に知られたくないことです。なので、顔を真っ青にして黙ってしまいました。

もちろん、主人公は何を話したのか正確には分かりませんが、ある程度の予想はついてます。

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