7.入学式当日のお約束は避けられない!?
入学式当日の朝、昨日父と母は仕事の大事な取引が急に決まって一緒に入学式に行けないといってきました。これには困りました。入学式のある体育館まで、校内で迷う確率が上がりました。私はさっそくまどかさんに、家から学校まで一人で行かないといけないことを電話で伝えました。
「おはようございます。まどかさん」
「愛梨、どうしたの?」
「入学式に両親が参加できなくなりました」
「最悪じゃない。ヒロイン補正がさっそく発揮されたわね」
「どうしましょう?」
「今日持っていく物とスマホを忘れないようにしてね。いざとなれば、メールしてくれればいいわ。必ず、迎えに行くから」
「わかった」
「あとでね」
「はい」
学校について校内に入ると、予想通り体育館に行く途中で迷ってしまいました。
私は、まどかさんに迷ってしまったことをメールしました。返信メールでまどかさんはこれ以上迷わない様にここから動かないように指示してきました。
そしたら、生徒会長が声をかけてきました。
「おい、そこの女子生徒」
私の他にもいるかもしれないと淡い希望を抱いて辺りを見回していると、
「お前のことだ。こんなとこで何してるんだ?もうすぐ、入学式が始まるぞ」
「迷ってしまって...」
「学校は、広いからな。仕方がない、ついてこい」
と生徒会長が言ったとこで、
「光輝、こんなとで油を売っていたらだめだよ。入学式で生徒会長の挨拶があるのに」
と直樹お兄様が生徒会長に声をかけました。これは、フラグ折りのチャンス?
「直樹か。コイツが迷っていたから、送ろうと思ってな」
「おはよう、愛梨ちゃん。僕が送っていくよ」
「ありがとうございます。直樹お兄様」
「いや、俺様が責任を持って送る」
現実で俺様なんていう人初めて見た。爆笑の危機です。二次元なら萌えれますけど、三次元ではナシですね。今すぐ離れないと指差して笑っちゃうよ。直樹お兄様、今すぐこの人から離して。
「生徒会長なんだから責任を持った行動をしないと。生徒会のみんな、体育館で準備をしながら待ってるよ。ここはいいから、早く行って。新入生には、この入学式が大事だってこと分かってるよね?」
「わかった。後は、頼む」
生徒会長は直樹お兄様の笑顔を見て顔を青褪めながら、体育館の方向に逃げるように走っていきました。なんで、青褪めているのでしょうね?直樹お兄様に失礼です。
「それじゃあ行こうか、愛梨ちゃん」
「はい。でも、友達に迎えに来てもらう約束をしているのですが...」
「さっき、鳳凰院さんと森川さんに会ったよ。愛梨ちゃんが迷ったから迎えに行くって言ってたんだけど、新入生なのに遅刻したらまずいから、僕が代りに来たんだ。もうすぐ始まるから、急ごう」
「はい。直樹お兄様」
直樹お兄様に連れて行ってもらい、何とか入学式の開始時間に間に合いました。その時に、一緒に帰る約束をしてもらったのです。ありがとうございます、直樹お兄様。大好きです。
入学式はお決まりの校長の長い話に、生徒会長の挨拶がありました。
いつになっても校長の話って長いですね。 お約束の一つなのでしょうか?
入学式終了後に、どのクラスになるかの発表があります。
クラス発表が張り出される掲示板は、運動場にあるとのことです。
みんな一緒に移動すれば迷わないなと思い、呑気に移動しました。
そこで、まどかさんと未那さんと落ち合いました。
「愛梨、こっちこっち」
「まどかさん、未那さん、おはようございます」
「ごめんね、雲瀬先輩が愛梨を迎えに行くって言ったから、そのまま体育館に行っちゃった」
「大丈夫です。むしろ、アレが折れたので怪我の功名でした」
「ホント?よかったじゃない」
「アレってなんですの?」
「「こっちの話」」
「で、どこのクラスか早く探さないと」
「そうですわね」
「よろしくー」
「いや、あんたも探しなさいよ」
しばらくして、
「ありましたわ。二組ですわよ。まどかさんと愛梨さんも同じクラスですわ」
「やった」
「よかったわね」
そして、教室まで移動して中に入ると荻堂一真がいました。私は思わず、回れ右してしまいました。
「どうしたの?」
「天敵がいるんですよ」
「天敵?ああ、荻堂一真ね。いたんだ」
「ええ、一真さまも同じクラスですのよ」
どことなく嬉しそうな未那さんを見て私は遠い目になり、私の席までまどかさんに引き摺られていきました。
「気持ちは分かるけど、ちゃんと自分の席に座って」
「ありがとうございます。まどかさんは?」
「隣よ。帰るまで意識を飛ばさないでね。終わったら意識を飛ばしてもいいし、下駄箱まで引き摺って行ってあげるから」
「わかった」
担任の先生は柳塚雅人。ホストみたいな容姿の教師です。これが、攻略対象者様ですね。ロリコンですか?気持ち悪い。なるべく、近寄りたくないです。別にロリコンを否定はしてませんよ。先生と教師の恋愛なんて、ゲームだから萌える展開であって、現実ではありえないですよね。子どもより人生経験を重ねた大人が、お子様に恋をするなんて。とりあえず、私とまどかさんと未那さんと少しの女子以外は色めき立っています。どこに惚れる要素があるのか、私には分かりません。お子様だからでしょうか?
ホスト教師や他の生徒が自己紹介をし、私の番が来ました。
「神無月愛梨です。よろしくお願いします」
「あー、神無月。他にはないのか?」
「ありません」
「彼氏はいないのか?」
「セクハラで訴えますよ」
「次だ、次」
先生は焦ったように、次の人の自己紹介に移しました。高校に入ったばかりの生徒にそんなこと訊いてどうするのでしょうか?
あとは学校生活に必要なことを先生がはなし、委員長と副委員長を決めようということになりました。
「誰か、委員長と副委員長の立候補者はいないか? 誰もいない様だな。先生が決めるぞ。 委員長は長谷川、お前な。副委員長は、か」
と私の名前を先生が呼ぼうとしたので、私は隣のまどかさんの手を挙げました。
「ん?森川、お前がするのか。じゃあ、森川で」
それから、他の委員を決めていきました。私は、図書委員になりました。
帰宅時間になり、
「愛梨、なんてことするのよ」
「俺様生徒会長ルート...、副委員長なら生徒会に関われますよ」
とまどかさんに悪魔の囁きをしました。
「仕方ないわね」
そこで、未那さんが近づいてきて、
「すごいですわね、愛梨さん。まどかさん、よかったんですの?」
「仕方ないわよ。この子のやる気、リトマス試験紙並みに分かりやすいの知ってるでしょ?私がやった方がまだましよ」
「なるほど」
「ここはヤル気が全くない人よりも、デキル人を」
「開き直らないでよ...」
話してる最中に荻堂一真が近づいてきて、
「愛梨、お前体育館に行くのに迷ってただろ?一緒に帰ってやるよ。お前みたいな馬鹿は、俺しか送っていく親切な奴はいないしな」
「なに、婚約者様の前で言ってるんですか?馬鹿ですか?それに私、雲瀬先輩と一緒に帰る約束をしたので」
「なに勝手にそんな約束してるんだよ!馬鹿じゃねえの。断ってこいよ、俺が一緒に帰ってやってやるって言ってるんだから」
「余計なお世話です。未那さん、この馬鹿と一緒に帰ってください。お願いしますね」
「わかりましたわ。一真様、私と帰りましょう」
と未那さんが、荻堂一真を引っ張っていきました。荻堂家よりも、鳳凰院家の方が権力があり、逆らえないのでされるがままです。ありがとうございますと心の中で、未那さんを拝みました。
「行こう、愛梨」
「はい」
と校門まで、まどかさんと行きました。いつも間にか、私の保護者化しています。それを言うと、「迷子になるって分かっててほっとくと、良心が痛むのよ」と言われてしました。
校門に着くと、
「愛梨ちゃん、一緒に帰ろう。森川さん、ありがとう」
直樹お兄様がそういうと、まどかさんはなぜか顔を引き攣らせて
「いいえ、お気になさらず。この子、迷子になりやすいから(ヒロイン補正のせいで)、お願いしますね」
「わかった。それじゃあ」
「また、明日。まどかさん」
「うん」
まどかさんと校門で別れて、直樹お兄様と一緒に帰りました。
今日は、先生・生徒会長ルートのフラグをとりあえず折りました。
荻堂一真ルートは、まだフラグを折り切れていません。これからが本番なので、気を引き締めないといけないです。
ここは現実。どこでフラグが新たに発生するのか分かりません。フラグらしきものは叩き折っていこうと思います。私自身のために。