番外編 その2.鳳凰院家お嬢様支援隊~葛城 視点~
私は、鳳凰院家の執事葛城と申します。
鳳凰院家には、とても愛らしいお嬢様未那様がおります。
現在の私の主な業務は、お嬢様の恋の支援にございます。
お嬢様の恋のお相手は、婚約者の『荻堂一真』様です。
この荻堂一真様は、お嬢様と婚約するための初顔合わせの時に、失礼にも「僕は、幼馴染の神無月愛梨と思い合っております。ですので、この婚約をなかったことにして頂きたいのですが」と言われました。
この場にいる誰もが驚いております。
荻堂一真様のご両親さえ、驚いているのです。
私は、目眩がするようでした。
この婚約は、鳳凰院家と荻堂家の結びつきを強くするためのものです。
ただの婚約ではございません。
そのあたりのことさえ、思い至らないのでしょうか?
思わず、「このクソガキが」と声を出さなかった私自身を褒めたいです。
第一印象としては、顔だけしか取り柄がなさそうでした。
荻堂家でさえなければ、顔だけでしか選ばれないとしか思えません。
その後、お嬢様は一真様と交流されたことにより、一真様に恋をしてしまったのです。
確かに、お嬢様に対する態度は紳士的でした。
調べて分かったことなのですが、一真様がご自分を好きだと思い込んでいる幼馴染に対しては、これで自分に惚れてると思い込むのが無理なくらい酷い態度です。
この幼馴染は本当に、一真様をお好きなのでしょうか?
私は、一真様の思い込みではないかと思っております。
お嬢様は、日に日に一真様の幼馴染が気になり、嫉妬しているようです。
とうとう、私の制止も聞かず、一真様の幼馴染の学校に乗り込むことを決めたようです。
その日、普段のお嬢様の運転手は私なのですが、別の方に変わるようお嬢様に言われました。
不審に思ったのですが、旦那様のお仕事をお手伝いせねばならず、別の者にお嬢様の運転手を務めるよう指示を出しました。
お嬢様は、ご友人の二人を家に連れてこられました。
今夜は、お赤飯にしましょう。
今まで、お嬢様はご友人を家に招待することがなかったのです。
お嬢様とご友人のお話を聞いていると、ご友人でないことが分かりました。
一人は、神無月愛梨様。一真様の幼馴染です。
もう一人は、森川まどか様。森川財閥のお嬢様です。
森川様は、現在誰とも婚約しておりませんが、能力が素晴らしく人気のお嬢様で、引く手数多の方です。
どうやら、お嬢様はご自分の名も名乗らずに、一真様の幼馴染である神無月様に喧嘩を売ったようです。
お嬢様の教育はしっかりしたはずなのですが。
彼女たちの話を聞いていると、やはり神無月様は一真様を心底嫌っているようです。あれだけのことをされたら、誰でも嫌うでしょう。
それでも、神無月様がご自分のことを好きだと思い込む一真様に私は一抹の不安を覚えました。
私は、この日、鳳凰院家のご当主である大奥様にお嬢様が一真様の幼馴染である神無月様と森川財閥のお嬢様が来たこと。そして、その話の内容をお伝えしました。
それを聞いた大奥様は微笑んで、「やはり、荻堂一真には鳳凰院家秘伝の代々伝わる調教と教育が必要ね。大丈夫よ、荻堂家はそのことを了承済みだから」とおっしゃられました。
実は、旦那様も鳳凰院家秘伝の代々伝わる調教と教育を受けています。
旦那様は、ご自分に全く関心がないご友人の幼馴染が、自分のことを好きだと言って奥様との婚約を破棄しようとしたことがありました。ですが、それは旦那様の思い込みで、そのご友人の幼馴染は東京極家の婚約者でした。
はじめから、娘との婚約を破棄させる気のなかった大奥様は、鳳凰院家秘伝の調教と教育を施すよう私に指示なさいました。
そうして旦那様は、鳳凰院家として相応しい方となったのです。
一真様は、昔の旦那様より我儘で横暴ですが、私にかかればそんなことを気にする必要はございません。調教と教育のプランCで対応いたしましょう。
久々に腕が鳴ります。
覚悟をしておいてください、一真様。
あの後、お嬢様は森川様と神無月様とご友人になられました。
結果、お嬢様によい影響をもたらしました。
お嬢様は勉強嫌いで、西咲学園に落ちるかもとこの屋敷にいる者たちに心配されたのですが。
ご友人方に見栄を張りたいお嬢様のために、森川様にお嬢様の受験勉強を見ることをお願いしました。
森川様は、神無月様を巻込みお嬢様を勉強から逃れられないように仕向けました。
森川様と神無月様の努力により、見事お嬢様は西咲学園に合格することになったのです。
このご恩は、一真様の教育と調教をすることでお返ししましょう。
最近の若者は、高校生活になるとますます恋愛に現をぬかすようです。
これは私たち、お嬢様支援隊はますます気を引き締めなければいけないです。
一真様の行動をつぶさに観察し、高校にいるお嬢様支援隊に神無月様との接触を最低限に仕向けてもらいましょう。
一真様は単純馬鹿な方ですので、高校内の行動範囲は一週間もしないうちに分かりました。
神無月様が一真様に惚れる可能性が皆無ですので、その点は負担が減ります。
ですが、お嬢様が本格的に一真様と神無月様の接触をほぼ無くして欲しいと要望してきました。それは、お嬢様の天敵である雲瀬直樹様の機嫌を損ねないためだそうです。
高校にいるお嬢様支援隊の中で、雲瀬様と同じクラスの者は「やりとげましょう!絶対確実に。学校生活がこれで、平和になります!」となにやら訳の分らぬことを力強く言いました。
お嬢様支援隊の活躍により、一真様と神無月様は接触が最低限になっております。
そのことに一真様はイラついているご様子ですが、一真様は外面を非常に大切にする方ですので、あからさまな妨害にも声を荒げて文句を言いません。
とうとう、一真様に対する大奥様の我慢の限界がきました。
「今すぐ、荻堂一真に鳳凰院家秘伝の調教と教育を自ら受けるよう、仕向けなさい!」とのご指示をいただきました。
一真様は、外面をよくすることがお得意の方ですので、簡単です。
体育祭の借り物競走に神無月様に選ばれなかったことにご不満の一真様は、文化祭の出し物の休憩時間に神無月様と一緒に過ごすことを目論んでおられるご様子です。
一真様と神無月様の休憩時間は違うそうです。神無月様が、一真様を心底嫌っているクラスメイト達が神無月様を気遣った結果だそうです。一真様と一緒のクラスにいるお嬢様支援隊の一人がそう報告してくれました。
なので、一真様に一つの提案を持ちかけました。
「文化祭で、神無月様と休憩時間をご一緒できればお嬢様との婚約破棄に鳳凰院家が同意します。できなければ、お嬢様の婚約者として恥ずかしくないよう鳳凰院家が一真様を教育させていただきます」と。
それに対して一真様は余裕で、「幼馴染は俺のことが好きだから、楽勝だ!」と言われました。
この時、私は一真様の脳味噌お花畑具合を憐れんでしまいました。
その結果、一真様は私との賭けに負け、鳳凰院家秘伝の調教と教育を受けることになりました。
これで、一真様をお嬢様の婚約者として相応しくなるよう調教できます。
一真様は、鳳凰院家秘伝の調教と教育を受け、私の本気を知ることになりました。
一真様が、私に逆らうことができなくなるのは、鳳凰院家秘伝の調教と教育を受け終えた後でした。
ちなみに、旦那様も私に逆らうことができません。




