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逃げ足最速、新聞記者  作者: ヘッドホン侍
一章 決死結果結成
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4.いやみではなかったんですね

「しかし、これは理想的だよ」


 うなだれた僕にかけられたのはそんな言葉であった。


「え?」


 僕は顔を上げた。そこにはニヤリと笑う男前さんの顔があった。


「もともとお前には戦闘力なんてもん求めちゃいねえんだよ。ほれ、これ見てみろ」


 男前さんは自分の胸ポケットから何かを取り出すと僕に投げてきた。反射的にキャッチすると、パスッといい音が鳴った。ギルドカードだ。

 僕は驚いて男前さんを見ると、彼は首をしゃくってきた。つまり、これを見ろということだろう。

 男前さんはやはり予想通りBランクという達人の領域におわすお方であった。びーとじー。響きは似ているのに、現実には大きな違いがある。むなしい。

 しかし、今見ろと言われているのは冒険者のランクじゃないだろう。

 僕は恐る恐るギルドカードを裏返すと、ステータスを見た。



 ◆ステータス

 名前:立川たちかわ 龍司りゅうじ

 種族:人間

 性別:男

 Lv:54

 HP:309

 攻撃力:612

 防御力:100

 魔力:64

 俊敏値:238

 特殊能力:《豪腕》Lv.3

     《連鎖の頂点》Lv.1

     《強者の余裕》Lv.4



 えっと。これはなんと言えばいいのだろう。Lv.が1上がるごとにステータス値は1か2上がるから、特殊能力スキル自体にHPと攻撃力を上げるものがあるのだろう。

 今世界で確認されているLv.1でのスキルの値は最高でも200だったし、そこから毎回2ずつ上がっているのだとしても、男前さんのLv.は54。

 ということは最高でも200+53×2で304になるはずだ。

 名前から言って、豪腕か、連鎖の頂点か、強者の余裕か。どれも強そうな名前をしている。

 全部僕の知らないスキル名だからそれかは定かではないけれども、その2つを上げるスキルを持っていることは間違いない。

 ステータス値イコールそのままの強さというわけではないのだが、これはすごいと言わざるを得ないだろう。

 ソロで巨竜を倒してしまったというのも納得の値だ。


「普通に強いですよね……?」


 僕は首を傾げた。何だって、ステータスを男前さん――改め、立川さんは見せてくださったのか。

 僕のステータスを見た上で、戦闘力がなくてもちょうどいいと言ってくださったのだ。それからステータスを見せてくださったのだから、当然理由となることが載っているものだろうと思ったのだが。

 俺がめちゃくちゃ強いから、別にカスでも役立たずでもそこに居ればいいよ。ということだろうか。

 本当に虫除けになればそれだけでいいと思っているのか? それはまた随分と豪胆なことだ。それだったら、さっさと適当な奴とパーティを組んでしまえばいいのに。

 嫌がる僕をわざわざパーティメンバーに抜擢するなど、完全に嫌がらせでしかないだろう。もしかしてこの男、ドSか? ドSなのか?


 僕の疑問はそのまま顔に出ていたらしい。立川さんは咳払いをすると苦笑した。


「まずはじめに、自分で言うのもなんだが俺は強い。攻撃力だけで言ったらSランクの奴を超えられるくらいだ。でも、俺は基本的に他人を信用しないことにしている。これがひとつ」


 立川さんはそう言うと僕の目の前で指を1本立てた。


「俊敏値も高い俺についてあんな森の深遠に行ける能力を持つ者は少ない。なのに、その相手が冒険者じゃなく記者をやっているんだ。そいつが弱いからだと予想はできる。だから、もし裏切られても一発で殺されるような状況にはならないだろう、と俺は考えた。これが最初にお前を誘った理由」


 僕はその言葉で納得した。確かに森の奥深くに行ける能力があるなら、記者なんてやっているよりモンスターを狩った方が儲けられるし、その人が冒険者をやっていないとなれば何らかの理由があるからだと考えるのが自然だ。

 それこそ例えば、その人にモンスターを倒せる戦闘力がないだとか。

 更に彼が人を信用しないと口に出すほど、人を信用していないとなれば、自分に害を与えられないほど弱い奴を選ぶのも必然。

 僕なんて弱い奴代表になれるくらい弱い。何たって、攻撃力0である。

 彼の過去に何があって人を信用しないと言っているのか知らない。でも、それなら僕が選ばれたのにも納得である。

 良かった。僕に何としてでも嫌がらせをするドSではなかったんだね。でも、彼には何があったのか。

 やはり僕も記者なので、そういう情報に興味が出てしまう。いかんな。ここは好奇心を抑える場面だ。これ以上彼の恨みをかっても損しかない。


「そして2つ目。俺のスキルを見てくれ」


 立川さんにそう言われて、手に持っていた彼のギルドカードに再び視線を戻した。やっぱりどれをとっても強そうな名前の数々である。


「強そうなスキルですね」

「……ああ、うん。強そうだよな。でもそれがな……《ステータス》」


 感想をこぼせば、立川さんは苦い顔。どうやら、ステータスを表示させているようである。何もない空中に視線が向かっている。

 ステータスと唱えればステータスが空中に浮かぶのだが、それは自分しか見えないからな。

 はたから見ると、何もないところをじっと見ている不審者になる。


「《強者の余裕》……どんな場面でも冷静になり、精神攻撃にかからなくなるが、そのかわりに周囲の気配を一切感じることができなくなる。この一見強そうな名前のスキルが言わば、危機感がゼロになる地雷スキルなんだよ」


 どうやらステータスの詳細表示を読み上げてくださったみたいだ。

 彼の口から話された情報に今度こそ僕は衝撃のあまり目を閉じた。見開くこともできないくらいの衝撃であった。

 ――それは地雷スキルだ。

 メリットも大きいけれど、デメリットが大きすぎる。周囲の気配を感じられないとか、他人を信用できないと言われても納得できてしまうデメリットである。


 そして、僕の能力がちょうどいいと言われた理由も。


「それに僕の《気配察知》があればちょうどいい、ってことですね」

「ああ。しかもLv.4とか化け物じみてるからな」


 思わず僕と立川さんは目を合わせた。お互いの目に浮かぶのは、哀愁と若干の諦めの色である。

 ああ、きっとこの人も苦労したのだろう。

 気がつけば口を開いていた。


「パーティのお話、引き受けます」


 この人も僕の同類なかまだ。僕のほとんどないだろうほんの少しの動物的本能が強くそう語りかけてきた。



ステータスの数字とか割と適当なので気にしなくて大丈夫な部分ではあります。

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