掌握-2
「目的は何?」
金が必要ない現代で、身代金の要求はあり得ないだろうが。
「匿ってくれないかね?」
「誰かに追われているの?」
何から匿ってほしいんだろう。
「まぁそんなところだろう」
「警察行けば?」
素敵なロボット達が歓迎してくれるだろう。
「その警察に追われているんでね」
「あなた何者?今時テロリスト?」
亡命でもしてきたのだろうか。いや、何のために?
「違う。勿論革命家なんて抜かすつもりもないよ」
「じゃあ名前は?」
無い、と答えたら警察に突き出そう。あ、システムは全て掌握されているのか。これでは連絡が出来ない。
「私かね?」
他に誰がいる。
「私の名前はジョン、火星に行ったジョンの左手、のジョンさ」
男はさも知っていて当然といった口振りで答えた。いや、なんだ?芸能人か何かだろうか。生憎私はテレビが好きじゃないからわからないんだけれど。
「知らないわ」
「いいや。君は私を知っているはずだ。私の話した言葉の中にはキーワードがいくつか含まれていた。君の頭の中には、全てのキーワードに通ずる男がいるはずさ」
無論、男にわざわざ言われるまでもなく、私の頭の中ではしっかり単語がリストアップされている。しかし。
「ホログラフィー使った覚えないんだけど」
ホログラフィー。主に架空の存在を立体映像化することに使われる。
「お嬢さん、あれは作り話なんかじゃない。200年前には確かに戦争があったし、それを止めたのは他でもない私だよ」
「"妄想癖″に付き合ってる暇ないの。生憎私バカだから、悪いけどわからないわ」
「バカを自称する割には″妄想癖″なんて言葉を知っているとは。それに、これだけの非常事態だというのに、随分冷静じゃないか」
「昔からこういう性格なの。それで、もう一度だけ聞くけど、あなた何者?」
「何度問われようが、私はジョンさ。正真正銘の火星に行ったジョンの左手、のジョンだよ」