侵入者
飽きもせず、胡散臭い話を読んでいた私のもとに、一人の男が訪れた。
いや、正確に言えば、侵入してきたのだから、訪問なんてものではない。
捕捉説明をしておくと、先ほどから述べている通り人類の技術は大変発展している。当然ながら、それは防犯設備もである。
どういう仕組みなのかは知らないが、厳重な本人確認の末にようやく入れるのだから。
もっとも、大して手間が掛かるとか、時間が掛かるとか、そんなことはない。国に登録された個人のデータからどーのこーの…とにかく、間違いようがなく、他人の許可なく家にあがるなんてことは不可能なのだ。
なお、大昔にいた"ハッカー"とか一般的に呼ばれた人達ならば可能らしいが、そんな人達は遥か昔に絶滅している。そもそも、現代社会に生きる人々の大半はバカなのである。無論、私も含まれるけど。
何度も言っている通り、現代における人類は自分のやりたいことだけをやって生きていける。それはつまり、勉学というものが不必要になったことを意味する。趣味でやっているものもいるが、それは世界人口の1割にも満たないらしい。
つまり、大半の人間がバカなのである。
要するに私が言いたいのは、世界人工の1割にも満たないお勉強大好き人間の中から、ほぼ絶滅種同然の"ハッカー"が、わざわざ私一人の家に侵入してくることが確率的にないと思うということだ。