玄関が増えた-3
「さて、警部。頼みがある」
「断る!誰が星を滅ぼしかねないテロリストの要求なんか呑むか!」
やっぱりテロリストじゃないか。というか、やはりこの男、ただの奇人ではないみたいだ。
「ピーター。私はただね」
「誰がピーターだ!黙れ!早く床に」
「この子を連れていきたいだけさ」
モソモソと服を着ていた私だけれど、背筋が凍りついた。
「火星に行ったジョンは″ロリコン″だったのね」
呆れながらに言い放つ。服を着た私は何故かリビングに戻った。
大きな溜め息と、がちゃり、という聞き慣れない音がした。
「…貴様もテロリストの仲間だったか」
「え?」
ピーター警部が″拳銃″をこちらに向けていた。
「全く…裸で私の気を動揺させようとは、恐ろしく下劣かつ下らない策だな」
「動揺してたじゃないか、ピーター警部」
男が横から口を出す。
「うるさい!このテロリストに侵入されて困ってますみたいな表情で私を騙そうとするとは…そんな手に引っ掛かる俺ではない!」
「ピーター警部、何を言ってるんですか」
どう見たら14歳の可憐な少女が共犯者に見えるのだろう。
「″拳銃″を下ろしてください。私は何も…」
「貴様はクロだ!」
なんだその飼い猫みたいな呼び方は。
「一般人は決してこれを知らないのだよ。この名称を知っているのは『200年前の真実』を知るものだけだ!」
「あー、ピーター警部。それはつまりこのお嬢さんも逮捕する気かね」
「無論!貴様らは纏めて刑務所行きだ!」
「警部。刑務所は地球上にないです」
「裸女は黙っていろ!」
服着てるんだけど。
「お嬢さん、もう一度聞こう。私と来ないか?」
「そうね。逮捕されるのは嫌だし」
「勝手に動くな!貴様ら、この″拳銃″の恐ろしさを知らんようだな…」
「少なくともセーフティの掛かってる″拳銃″は怖くないですよ」
「何!?そんなはずは」
慌てて確認をし始めた警部。
大きな音がして、ドン、と腕に衝撃が来た。
「セーフティの掛かっていない″拳銃″は確かに怖いですね。ピーター警部」
「うぎゃああああああ痛い痛いよお貴様ぁぁぁぁぁぁぁああああああ」
足から血をダラダラ流しながら、警部はのたうち回って喚いてる。
「お嬢さん、君は私が思っている以上に変な子かもしれないな」
「私はお嬢さんじゃなくて、メリー。それじゃあ行きましょ。ジョン」
新しい玄関から、私は外へと歩み出した。