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ミネラル ~捨てられた王女は石の声が聞こえます~  作者: May
第一章『ラピスアトリウム』

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8/14

⒏【ガーネット】森、脱出

 

 私たち(ペンダントのなかに親分が居ます)は自由都市であるアルカディアの近くまで来ていた。


 先日ペンダントを作ってから、親分が早く出掛けたいとうるさかったからだ。

 ペンダントの中ではソワソワした気配を感じて私までなんだかくすぐったい。


 とはいえ、私たちがいたのは高い山が連なるネクロス大森林の概ね中央で、まともに歩いていたら1ヶ月以上かかってしまう。

 それに世界は冬だ。

 私は生まれた時から冬しか知らない。この世界には冬しかないから。


 フフン! だけど私たちには鉱石がある。

 ヌーマイトで親分の器を作ったあと、他にもいくつか必要なアイテムを鉱石から作ることにした。



 まずは『転移石』。

 材料は【ジルコン】【ガーネット】【磁鉄鉱】。

 この世界の魔法でも、魔法陣と、かなりの魔力が必要らしいが転移はできる。

 ただ、座標を定めるのが難しくピンポイントで行きたい場所に行けるわけではない。

 私がポイッと捨てられた時も、ネクロス大森林のどの地点に着地するのかは誰にもわからなかったのだ。要するに、転移は出来るが命の補償はない魔法だ。

 なので、基本的にはソラリス王国のように、人間の処刑や、緊急脱出くらいしか使われていない。



 その欠陥を解決するのは、ガーネットと磁鉄鉱だ。

 磁鉄鉱で方向は定めて、ガーネットが正確な着地点に座標を置く。あとは時を司る最古の石ジルコンの力で飛ぶだけだ。

 ガーネットは魔法には出来ない繊細な仕事をしてくれる優秀な石だ。

 加熱処理で加工して、小さな指環に仕立てた。

 薄いブルーのジルコンを基石にしているので透明度は高いが派手さはない。

 親分と一緒に森の中で何度も試して、今日の本番を迎えた。



「やっぱルナは凄いなー? ホントに人間の街に来ちまったよ」

「フフフ、私じゃなくて石が凄いの。それにしても山の上より寒いってどういうことよ」


 ラピスアトリウムは雪は全く積もっておらず、鉱山の中にいたっては普通に過ごせる程度には暖かかった。

 なのに大森林の外、しかも大河沿いの港まで来たのに雪が積もっている。


「親分は寒くなくていいわよね、私、まず外套が欲しいわ」

「じゃあまず服屋か?」

「ううん? 私、お金もってないもん」

「お金?」

「そう、人間は金貨や銀貨と、欲しい物を交換するの。それをお金って言うのよ。鉱山にある金を加工したやつ」

「へぇー、金じゃダメなのか?」


 ネイティブゴールド(自然金)なんて出そうものならパニックだ。

 私が生きてることを知られたらまずいのに目立つことは出来ない。


 身分証も持っていない私がお金を稼ぐ方法は多くない。

 まず思い付くのは冒険者として地道に稼ぐ事だが、冒険者ギルドは魔力登録が必要らしい。詳しいシステムは知らないが、私の素性がバレたら終わりだ。

 どこかに個人で働き口を探すのも、労務院とか言うところに登録が必要な上に、私には出来ることがない。

 あとは、商人ギルドか職人ギルドだけど……




 アルカディアに来たのは、ラピスアトリウムから1番近いというのもあるけど、自由都市というのが大きい。

 今のところ大国には属さず、それでいて経済は発展している、流れ者も多く、私のような出自不明の人間にも門戸が開かれているのがいい。

 私が秘かに活動するにはこれ以上ない都市だ。


「それでそのお金ってのをどうやって手に入れるんだ?」

「もちろん、岩塩を売るのよ」

「え〜、あれオレのなのにー」

「ちょっとくらい売ったって良いでしょう? あんなにあるんだから。売れたらなんか買ってあげるから」




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