⒍ コウモリの能力
「どこか、私が住めそうな場所ない?」
外は冬だ。
でもこの鉱山の中は寒くない。
初めて会う鉱物たちもたくさん居る。
話し相手まで出来た。
完璧なのでは!?
と、言いたいところだが全て足りない。
服も、パンも、武器も、本も、研究道具も!
「どうしよ~う?」
「人間の街に出たらいいだろ?」
「なんでそんなに追い出したいのよ!」
「いや? ここにいていいぞ?」
え……
”ここにいていい”なんて優しい言葉を聞いたのはお母様が死んでからは初めてだ。
――コウモリで良かった。
「ルナの塩、うまいからな」
わかってましたよね――。理由がわかりやすくて助かります。
「あと、オレも行きたい」
「行きたいって、人間の街? 行ってどうするの?」
コウモリの魔物を従魔にしてる人間なんて見たことないけど大丈夫なのかな?
「オレ、ここから出られないんだよ、理由はよくわかんないけど」
なんだ、その一見可哀想エピソードは。
街かぁ……
私の顔知ってる人なんていないだろうけど不安よね。
行くなら、ソラリス王国は論外でしょう?
ラピスアトリウムから近いのはソラリス王国の他に、アルカディアかモルディアだけど。
「出かける方法、ある?」
「あるぞ。原石だからそのままじゃ使えないけどな」
いいね。新しい鉱物との出会いはワクワクする。
「でも親分と違って夜目が利く訳じゃないから見付けるのに時間かかるかも」
「かぷっ」
えっ……
「え――! なんで? どうしてそんなことするのよ――!」
何も言わずに親分が私の首筋に噛みついたのだ。攻撃されると思ってなかったから防御が間に合わなかった! コウモリって血を吸うのか? いや、牙に毒とかあって殺されるのか?
「ヒドイよ……仲良くなれたの嬉しかったのに殺すなんて……」
どうせ私は要らない子だし、生きる価値もなくてここに捨てられたけど、さっき出会ったばかりの魔物を勝手に信用して即殺されるとか、愚かすぎる。話し相手ができたとかって少し喜んだのに……痛くは無いのに涙が出そうだ。
「何言ってんだ? オレの血をわけてあげたんだぞ? 感謝するとこじゃないのかよ」
「毒が体中にまわって死ぬんでしょう……ひっく……」
「泣くとかドン引きだぞ! オレの能力あげたの。周り見てみろって」
「周り?……」
涙をこらえた顔をあげて目を開くと、真っ暗な中にクリスタル岩塩の光でぼんやり見えていた程度の空間がハッキリ見えた。
岩塩層の先に続く道、高い天井には普通サイズの小さなコウモリたちがびっしりだ。ぶら下がってる子、天井に張り付いてる子、ほとんどが親分の10分の1くらいで親分より茶味がかっている。
さらに音が増えた。
石や大地のざわめきに加えて、コウモリたちの音も聞こえる。
そしてこの山、いや、ラピスアトリウム全体の様子が勝手に音から流れ込んでくる。
親分の能力……
「なにこれ、なんかすごい!! 世界が変わったよ?」
「へへん、そうだろ? オレの凄さをやっと理解したか? だから泣くとかやめろ、な?」
凄い! 鉱物の声が聞こえて、暗闇でも石が見えるなんて、私は最強では!?
それに初めて出来たお友達に裏切られたんじゃくて良かった。
二人でならちょっとだけ自信をもって、人間の街にも行けるかしら……




