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魔法が使えない鉱物オタクの王女は、捨てられた山で王になる  作者: May
第二章『ミネラル』

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40/45

40. 便利屋の元王女

 

 デニスさんの工房からの帰り道。

 石蒸しパン買って帰ろうかな。


「串焼きだ! あとあのオレンジの果実が入ったフワフワのやつも買いに行くぞ」


 どうしてキーパーはミネラルの商店や屋台に詳しくなってしまったのかは謎だが、自己主張が凄い。


「まぁルナちゃん、キーパーちゃん。バレンタインさんとこに行くのかい?」

「こんにちわ」

「おぅ!」

「こないだはありがとねー。明るさが全然前と違って針仕事がしやすくなったよ。また服が必要になったら言いなよ!」


 前に服を仕立ててくれたお針子のおばちゃんで、先日店に行った時、ちょうど天井の鉱石の光源が弱くなって暗いと言っていたので修理してあげた。


 地上ではキーパーは魔物に間違えられるから一緒に歩けないけど、ミネラルでは最長老のアナグマが二本足で難しい研究をしているくらいだ。

 大型犬サイズのコウモリがケーキを食べていても誰も怖がらない。


 それに私たちは二度も『天井』から降ってきた。

 外の世界から来た存在はちょっとした有名人だ。

 私は正直目立つのは苦手だが、前の王宮のようにあからさまに嫌悪感をぶつけてくる人はいないし、常に隣でキーパーが偉そうにしていてくれるのでそんなに居心地は悪くない。



「よう! ルナちゃん、蒸しパン食べるかい?」

「おぅ! 食べるぞ、二個くれ!」

 慌ててお金をガサゴソと出す。


「いいよいいよー。こないだの礼だ。あんなもんそのまま使ってたら大変なことになってたからな、助かったよ。こっちもオマケだ」

「あぁ……、ありがとうございます」

 ペコリと頭を下げてパンを1個づつとオマケの紙袋を受け取った。



 パン屋のおじさんは石窯用の石を採掘場で自分で切り出してくる強者なのだが、先日、かすかに魔力が内包された物を加工しようとして、寸前で気が付いたのだ。

 ミネラルでは、魔力入の石なんて燃やしたら店ごと吹っ飛んでしまう。

 ほんの僅かな魔力でも大事故なのだ。

 量が多ければそのまま人体に影響が出る。


 それで、私が呼ばれて石から魔力を抜き取って安全に使えるようにした。

 怪我人が出る前で良かった。


 その後、パン屋のおじさんはデニスさんのお仕事仲間のおじいちゃんに怒られていた。


 オマケの紙袋の中は、クッキーが入っていた。パン屋さんのクッキーは美味しいよね。


「お前ってさ、本当に王女だったのか? やってることが地味過ぎるだろ。貴族ってそういうものなのか?」

「いやぁ……? 貴族は、多分手が汚れることとかしないかも?」


 まぁ前から王族として失格だったしね。政治的な駆け引きとかするより、石と話してる方が楽だし。好きなことやってほんのちょっと誰かの役に立つのは寧ろ嬉しいよね。



「フランさんとこ寄ってからおうち帰ろう?」

「お屋敷は寄ってかないのか?」

「バレンタインさんのお屋敷? そうそういつもお邪魔できないよ」

「ほぉーん。まぁオレはなんでもいいけどな。山の家の揺れるベッドは一番寝心地がいいしな」

「そうなの? ハンモック? どうして?」

「わかんないけどゆらゆらして天井にぶら下がってるみたいな気分になるからかな」

「え、じゃあぶら下がって寝れば良くない?」

「うるさいな、ぶら下がるより気持ちいいんだよ」


 全然っ、よくわからないけど、一番気に入ってる、とかは……悪くない。

 私もあの空間が一番だからね。




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