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魔法が使えない鉱物オタクの王女は、捨てられた山で王になる  作者: May
第二章『ミネラル』

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36. お祭りと岩塩と指環と

 

 お祭りかぁ、寒いけど見てみたいなぁ。

 でも夜は危ないかもしれないし。

 うーん、でもキーパーがいるから大丈夫かなぁ。

 先程聞いたお祭りに心を馳せる。



「ところでルナ様、卸して頂いております塩の事なのですが……」

「はい? 今日も持ってきていますが、何か問題がありましたか?」

「いえ、その逆でして。単刀直入に申し上げます」

「はい……」

「仕入元をお教え頂けないでしょうか?」


 なるほど。一度は引いてくれてたのにどうしたんだろう?


(キーパー、どうしよう?)

(なんで悩むんだよ、教えて良いわけないだろうが!)

 ペンダントの中にいるキーパーに助けを求めるが、答えはわかっていた。


「あの、申し訳ありません。契約になっていますので勝手にお話することができないんです……」

「もちろん、ルナ様には情報料と手数料をこれからもお支払いすることをお約束します」


 随分と食い下がってくるのが、なんというか、ローレンスさんっぽくないなぁ、と思った。ローレンスさんの意思、だけじゃないってことかな?


「あの、すみません」

「そうですか。では仕入元の方にお話だけでもしてみて頂けませんか? 全てそちらの条件をのむと言って頂いて構いません」


 そ、それはこれだけの大商人が言っていいことなのだろうか?

 条件の提示すらされていないうちに全てのむなんて、駆け出しの商人でも言わないだろう。


「あ、あの……それはどういう?」

 うっかり口を滑らせた言葉とは思えないが、言葉通りとも思えない。いくら世間知らずの私でもそのくらいわかる。


「実は……あの塩を"ヴェイン"で独占管理するという話がでております」

 ……?

 きょとんと首を傾げる。

 "ヴェイン"とは国際規模の慈善団体だったはずだが、それがどうしてだろう?

 塩なら商品として珍しくもないが。


「あ! まさか、塩まで一括管理される程の食糧難なのですか!?」


 燃料の薪が配給されるくらいだ。

 食料品の価格も高騰しているというし、私の思っている以上に寒波は深刻なのだろうか?


「え、あぁ、いえ、そうではありません。確かに国や地域によっては寒さによる不作から農作物の収量が減り、餓死者もでておりますが、まだ世界的に塩を管理する状況ではありません」

「では……?」

「まだハッキリしたことは分かっていないのですが、ルナ様が卸してくださる塩には冷衰症を改善させる効果があるかもしれない、とのことでして」


 えっ……

 それはまずいのでは……

 返答に窮して黙ってしまった。


「”ヴェイン”の方で研究することにはなっているのですが、そんな折、この燃料の配給が決まりましてね、燃料と食糧の対策が先だということで冷衰症対策が後回しになってしまったんですよ」


 ほう……


「それで話はとまっているのですが、落ち着けばまたこの話がでてくるでしょうからその……”ヴェイン”が乗り出す前に……と思いまして」


 なるほど。ローレンスさんにも()がいるということね。その()がどこなのかはわからないけど。


 それにしてもこれは困ったわね。


「あ、あの……話はわかりました。一応今度聞いてみます」

「よろしくお願いします」

 ひとまず時間稼ぎは出来ているようだし、後でゆっくり考えよう。




「それであの……立ち入ったことをお聞きしますが、前に付けてらした大切な指環は……」

 以前、確か綺麗な赤系の色のフローライトの指環を付けていたと思ったが今日は付けていないので少しだけ気になってしまった。


「あぁ、そうでした、そうでした、少しお待ち頂けますか」

 そう言って立ち上がると机の引き出しから箱を出してきて私の前で開ける。


「あぁ……」

 案の定欠けてしまっている。

「ルナ様はどうして割れそうだとわかったのかと思いましてね」

「あっ、あの、わかっていたわけではなくて……」

 どうしてあの時ハッキリ割れるかもしれないと言ってあげられなかったのか。

「誤解しないでください、責めるつもりなどありませんよ。そもそも私の不注意に過ぎません。教えてくださってすぐに加工し直せばよかったのですが、忙しくて」

「あぁ……すみません」

「いえ、ですから謝らないでください。お見せしたのは、これを直して頂けないかと思ったからでして」

「これを?」


 直すと言っても指環にしたら同じことだしな……劈開面の状態次第ではくっ付けて修復できるかなぁ……いや、削って整えた方がいいか……

「……あの、触っても良いですか?」

「もちろんです」


 そっと指環の金具を持って石を光にかざしてみる。

 すると指環越しのローレンスさんがニコニコと楽しそうに微笑んでいた。


 あっ…………


「あっ! あの、し、知り合いに直せる人がいるかもしれないので……」


 石を前にして夢中になってしまったぁ。


「あ。あの。お預かりします……」


 よろしくお願いします、と笑顔を崩さず箱ごと渡されてしまった。

 私が加工するってバレてないよね……




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