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魔法が使えない鉱物オタクの王女は、捨てられた山で王になる  作者: May
第二章『ミネラル』

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34. 二度あることは三度ある

 

 翌日すでに太陽は頭上高く昇っていた。

 新しい転移石を携えて私とキーパーはいつものように、アルカディアの近くの森へと転移し、門へ向かう。

 それほど長い時間が過ぎたわけではないのに、短い間にあまりにも多くの出来事があり、まるで久しぶりに戻ったかのような気分だ。



「ねぇー、ペンダントの中って暖かい?」


 ラピスアトリウムはひんやりしているが寒くは無い。そして『ミネラル』は春だった。

 そのせいか……

 寒い!! 

 すでに日が昇ってかなりの時間が経っているというのに空気は冷たく乾いていて吐く息は白い煙となって消える。


「ん〜? 暑くも寒くもないぞ? 快適だ」

「い、いいなぁ……」


 震える手でペンダントを握ってみるがペンダント自体が温かいわけじゃなく、むしろ石がヒンヤリして慌てて手を離した。


「ねぇー、変じゃない?」

「マントで隠れてるからわかんねぇだろ」

 フローレンスさんとメイドのクララさんに選んでもらって防犯対策として男の子の格好をしてきたのだ。

「ねぇ、これって意味あった?」

 大きなフードで髪の毛はすっぽり隠れているが、せっかく男の子に変装した服まですっぽり隠れている。

「まぁやらないよりはいいんじゃないのか?」

 絶対意味なかったな、と思いながら足早にバルム商会に向かう。



「なぁ? なんで毎回後つけられるんだ?」

「……」

「お前、隙だらけにみえるんじゃないのか?」

 キーパーの呆れた声がペンダントから聞こえてくる。

「でもさ、この前みたいな魔法陣の罠は仕掛けられてないね?」

 一度ボーッと歩いていて捕縛されかけた経験からさすがに今日は微かな魔力に注意しながら歩いていた。そして私以上にキーパーが気をつけてくれている。

「眠らせて逃げる?」

「そうだな、それが一番目立たなくて良いだろう。石、間違えんなよ!」

 ちょっと物騒なのと、派手なのは使わないように気をつけて、と。

 私は胸元に仕込んだマジックバック代わりの石に手を突っ込んで使うべき物を確認しながらさり気なく近くの路地に誘い込む。


 冷たい風に頬を刺され、震えながら路地を曲がる。

 通りからの死角に入った瞬間、背後から低く唸る声。

「おい、そこの小娘、ちょっと寄越せ」

 女の子ってバレてるじゃない。

 振り向くと、薄手の黒いコートを着た男が二人、冷たい目を光らせている。手には短剣。

「なんでしょうか?」

 私の声は震えていた。

「動くな。これ以上怖い思いをしたくなかったら金もマントも全部置いてけ」

 寒くて震えてるんだけど子供だと思って舐めてくれてるのは助かる。お粗末な反射神経の私に呼吸を整える時間を与えてくれるのだから。


 しかし、一瞬躊躇してしまった。

 私はフローレンスさんのお針子さんに仕立ててもらった上等なマントを着ていても寒くて震えているのにこの人たちは寒くないんだろうか? 大人の男性と自分を比べるものではないとはわかるが、なんだかこのアルカディアの街には似合わない人たちなのだ。私が言えたことじゃないけど浮いている。


「何してんだよ?さっさと眠らせろ。でなきゃオレが殺るぞ?」

 いやいや、キーパーが一番物騒なのよ。


「そこで何してる!!」


 のんびり目の前の男たちを観察しながらキーパーを牽制していると、路地の入り口から鋭い足音が二つ重く響いた。


「増えた……」


 ボソッと呟いた私の言葉は絶望だ。

 困ったことになった。大の大人四人も眠らせたらさすがに騒ぎになる! 

「だからさっさとしろって言っただろ」

 またキーパーが呆れている。



「……おや?」

 だがよく見ると後から来た男たちは鎧に黒と銀の紋章がついている。衛兵かしら?

 私と強盗たちの手にある短剣をチラッと見ると二人の衛兵は無言で間合いを詰め、まるで時間が止まったかのように素早く動く。

 一人が右手で短剣をはじき、もう一人は足を滑らせた強盗の腕を掴んで後ろへひねる。二人の動きは無駄がなく、冷たい冬の空気に刃物の金属音や、皮の摩擦音だけが鋭く響いた。

「ぐっ!」

 強盗は抵抗しようとしたが、瞬く間に両手を押さえられ、身動きが取れなくなった。

「街での略奪は許さない」

 衛兵の低い声が路地に鳴り渡る。言葉に重みがあり、凍った石畳にまで響くようだった。

 強盗二人は沈黙し、力尽きたようにうなだれる。

 衛兵たちは簡単な確認だけすると、強盗を連行するため路地を去っていった。


「えっと……?」

「なんだったんだ?」

 私は手に握りしめていた物をそっと胸元に戻した。



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