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魔法が使えない鉱物オタクの王女は、捨てられた山で王になる  作者: May
第二章『ミネラル』

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31/45

31. 地上の秘密

 

 私にしか出来ないことなんて存在するだろうか?

 地上世界では鉱物の声が聞こえるのは特別な才能だったけど、ここでは別に珍しくもなかったし。

 地上世界では、鉱物の加工も、その辺の宝石加工職人さんより見方によっては上手いと思うけど、やっぱりここでは上手くもなんともなかったし。


「フフフ、ルナさんは、自分がここに入って来たという事がどういうことかあまりよくわかってないみたいだね」


 アナグマの小さな手でクッキーをお皿に盛り付けながら短いしっぽをふわりとさせる。


「そうじゃのう。お前さんたちはたまたまうっかり飛び込んで来たくらいにしか思っておらんのじゃろう」


 たしかにそんなに深く考えなかった。というより、自分がここでどう見られてるか、ってことしか考えてなかった。


「別に文字を教えるくらい、君が頼めば私たちじゃなくてもみんな無償で教えてくれると思うよ。役に立たないというけどね、私たちにとって、君たちが入ってきた、ということがとんでもない価値なんだ」


 入ってきたことが価値……

 む、むずかしい……

 チラッとキーパーを見ると美味しそうにクッキーまで食べている。

 ダメだ。聞いていない。

 この王子様は頼りになるのかならないのか……


「あの……それで私に出来ることって何ですか? 出来ることがあるならやりたいです」


「ハハハ、そうかい? やってもらいたいことというのは、外のこと、地上世界のことを教えて欲しいんだよ。ミネラルの文字が書けるようになったら皆が読めるように書き残してくれると尚良い」


「あぁ! なるほど! あっ、でも私世情に疎いので教えられることなんてほとんどないかも……」


「難しく考える必要はないんじゃよ、例えばラピスアトリウムの広さや状況は知っとるじゃろ? どんな樹があってどんな果実が成っているのか。他にも、王女だったなら地上世界の地図くらい見たことがあるんじゃないのかい?」


「あっ、そんなことでいいなら……」


 すごい! そんなことが本当に役に立つのだろうか?


「でも、ホントにそれだけでいいのですか? そんな事をお話するだけで文字を教えて頂いて良いのでしょうか?」


「ホッホッホ、そんな事と言うがのう、それを知ってるのはこのミネラルの中ではお前さんとそこのコウモリだけじゃ。文字を教える対価としては充分、いや、過分すぎるのう」


「そうだね、内容によってはお礼を考えなければいけないね」

「そんな! とんでもないです。あの、あ、ありがとうございます」


 ホントに充分かはわからないが、出来ることがあるなら是非やりたい! そしてそれが私にしかできないなら。

 ちょっとだけ前髪をかき分けてお礼を言った。



「そうだねぇ、さっそくだけど、ルナさんがここに来て地上と違う、と思ったことはあるかな? 驚いたこととかがっかりしたことでもいいよ」


 うーん……

 がっかりしたことは今のところ何も無いけど、驚いたことはいっぱいある。


「オレは1番はじめに春っていうやつに驚いたぜ、これ春って言うんだろ?」

 あっ! そうだ、そうだった!


「はい! 私も! 私も初めてみました!」

 思い出して少し早口になってしまった。


「ん? どういうことだい?」

「えっと、地上世界は一年中ずっと寒いんです」


 私がいたソラリス王国はまだマシで、雪が降らない時期が3ヶ月くらいあった。

 一年中雪が解けない国も珍しくはなくて、行ったことがあるわけじゃないけど、地面の奥深くまで凍ってしまって人が住めなくなった所も近年増えてきたと聞く。


「ルナさん……それは本当かい?」

「えっ、えぇ。実際世界中を見て回ったわけじゃないですけど、ソラリス王国については育った国なので本当ですけど……」


「「…………」」

 フランさんとフレデリックさんが考え込むように黙ってしまった。

 機嫌を損ねるようなことを言っただろうか。


「そこまでじゃとはな、ちと甘く考えとったかもしれん」

「あまり時間がありませんね」


 なんの話だろう?

 キーパーと顔を見合せてコテン? と首を傾げてみた。



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