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魔法が使えない鉱物オタクの王女は、捨てられた山で王になる  作者: May
第二章『ミネラル』

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26. 未熟な加工職人

 

 加工職人のデニスさんの話は私も聞いてみたいと思っていたので丁度いい。

 バレンタインさんに場所を教わり会いに行ってみることにした。


「ところでさ、気を付けるって本当にどうするつもりだ? お前狙われるようなことしたのか?」

「あの街に行ったのは2回目だったんだよ、何もするわけないよ」

 王女時代ならまだしも、本当に狙われる覚えなんてない。

「あ――、一回目の時お前派手なことして目立っただろ、それじゃねーのか?」

「あっ、あれは…………強盗犯以外には顔は見られてないはずだから」



 様々な職人さんの工房が建ち並ぶエリア――

 鍛治工房などからは鉄を打つ音や熱が漏れている。

 デニスさんの工房はとても静かで中で何をしているのか、外からでは全くわからなかった。


 トントン!

「あいてるよー」


 そぅーっとドアを開けると中ではデニスさんと初めましてのおじいちゃんが二人。

 三人で静かにお茶をすすっていた……



「おう! 嬢ちゃんか、待ってたぞ。ほれほれ、こっちに来て座れ! コウモリも座るか?」

「そうだな、ここの天井は低過ぎる」

「ほぅ、この子が外から来た子か。それでこっちがトビラのガーディアン? 俺たちの目の黒いうちに外の客が現れるとはねぇ」

「まったくだ。さぁ、お茶煎れてきてやったぞ。茶菓子も食え」

「若い人はこんな物食べないんじゃないか?」

「あ、あの……お構いなく……」

 バレンタイン邸とは全く違う時が流れている。放っておいたらお茶菓子の話で一日終わりそうだ。だけど、私の緊張はいつの間にか自然とほぐれていた。


「それで? 外に帰るって? バレンタインさんとこは居辛かったか?」

「い、いえ! とんでもない。とても親切にして頂きました」

「ほおーん? まぁいい。で、狙われてるってのは追放された王女だからか?」

「いえ……それはないと思います。地上の世界ではラピスアトリウム、ネクロス大森林に入って生きて出てきた者はいないので、間違いなく死んでると思っているでしょうし、襲われた街はわたくしのいたソラリス王国とはさほど接点がないので(わたくし)の事を知ってる人もいないと思います」

「だったらなんだっつうんだ?」

 おじいちゃん三人が眉を八の字にして考えてくれているが、私にもさっぱりわからない。


「罠は捕縛用の魔法陣でした。殺すつもりはないということです。なので人身売買とかではないかと思っています。だとしたら男の子の格好をすれば平気かと?」

「そんなことで対策になるのか?」

「やらないよりはマシだろうねぇ」



「とりあえず嬢ちゃんが懐に忍ばせてる物騒なもん全部見せてみろ?」

 あれ?転移石の指環とキーパーが入るためのヌーマイトのペンダント、それからトビラの鍵らしいラピスラズリ以外は誰も知らないはずだけど……


「あの……、なんで物騒なもの……なんて?」


 ハッハッハッハ――!

 とおじいちゃん三人がたいそう楽しそうに笑いだした。


「嬢ちゃん、それ、隠してるつもりだったのか!? 石たちは隠れてるつもりなんかねぇぞ!」

「やる気に満ち溢れていて、いつ勝手に飛び出してきてもおかしくないよ」

「そいつらの仲間を使ったことがあるんだろ」


 私は懐に仕込んだマジックバッグ代わりのヌーマイトごとなかの石たちをじゃらじゃら見せる。


「あぁ、あのちょっと整えたスティブナイトを一度使ったら……少々規模が大きく……」


「「「ハッハッハッハ!!」」」


「それでなんか勘違いしてんだろコイツら。自分たちも目立ちたくてしょうがないんだ」


「目立ちたい?」


「あぁ、コイツらは自分たちの危険さはわかってないんだ、ただ目立ちたいだけだ。だから危ねぇ。嬢ちゃんがちゃんと教えてやらねぇと殺したくもないヤツを殺すことにもなりかねない」

「そう、なんですか?……」

「そうだ。石を人間の都合で使うならそれなりの準備が必要だ」


 デニスさんがマジックバックヌーマイトをルーペ越しに覗く。


「ほら、コイツはいけねぇ、ダメだな。クラックが死んでる。物を入れるだけならまぁまぁ役に立つかもしれねぇが、中に入れたものが無くなっても文句は言えねぇ、それにナマモノなんかを入れれば一日で腐るだろうよ」

 クラックとは、地殻変動が原因の内部のヒビだ。クラックの奥は別の時空を作り出している無限の空間になっている。


「えっ! そうなんですか?」


「ちゃんと石と話さねぇからこういう物を掴まされる」

「掴まされる?」

「あぁ、石が面白がってわざと教えたんだろうよ」


 が――――ん!!

 石に騙されるとか……


「あっ! じゃあこっちは?」

 同じく時空までの道を通してキーパーの器にしたヌーマイトのペンダントだ。


「おや? こっちのクラックは最上級だな、全ての時空を操れるほど強力で上質だ。生き物が入ってもさぞ居心地がいいだろうよ」

「こっちの石は、キーパーが選んだ石だからでしょうか……」


「「「あぁ……なるほど」」」


 キーパーが一人だけ偉そうに勝ち誇った顔をしている。


「と、とりあえずだ! コウモリの住処はこのままでいいとして、マジックバックは作り替えた方がいい。それから、この今にも爆発しそうなヤツらもだ。相手を殺すほどの威力の物を持つのは悪くねぇ。だがちゃんと使い分けられるようにしておけ」


 メンタルへのダメージが蓄積されてきた……

 得意だと思っていたことがダメだったなんて……


「それからな……」


 ドキッ!!

 まだあるのか……

 そろそろ致命傷になりそうだ。


「その転移石でここと地上を出入りするのはそろそろ限界だ」



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