25. 王の血
アナグマ精霊のフランさんと楽しくお茶をして、帰宅するとまた素敵な夕食が準備されていた。王城の生活よりは派手じゃないのかもしれないけど、ご飯は美味しいし、お風呂もあって私専用の部屋でキーパーと過ごせるのはとても幸せだ。こんなことで幸せって感じられるものなのかと初めて知った。
でも……
「キーパー、私やっぱり外に戻ろうと思う」
「んー? なんでだ? お前もここのご飯気に入ってただろ?」
「うーん、やっぱり私ここでも邪魔な気がする。今はそうでもなかったとしても……すぐに邪魔になると思う。外から突然入ってきたよそ者が王の血筋だったなんてきっとみんな複雑だよ。キーパーはここにいたい?」
「別にどっちでもいいぞー。ここの生活も悪くないがオレは外で仕事があるからな」
「仕事……」
「縄張りを守るのが仕事だろ? トビラ? とかってのは正直よくわからないけど、あの森は全部オレの縄張りだからな」
「あぁ、なるほど。……じゃあ、一緒に来てくれる?」
「いいぞ! というかお前がいないと出入り出来ないんだから当然だろ? それにお前はすぐ泣くからな、オレがいないと生きていけないだろ」
「別に……生きては……いける……よ?」
翌日私はバレンタインさんとフローレンスさんにここを出ていくと話した。
「どうしてなの? ずっとここに居ていいって言ったじゃない? 居心地が悪かった?」
「フローレンス、責めるような言い方をしてはいけないよ。ルナさん、ミネラルの王の血筋の事なら気にしなくていいんだよ」
「…………」
そう言われてもね。
「ミネラルが王政じゃなくなってかなりの年月が経っているんだ、君や私だけじゃなく、最後の王の血を継いでいる人間は結構いるし、そもそもかなり薄まっている。はっきり言ってここでは王の血は意味が無いんだよ」
たしかに現在のミネラルは王がいない。評議会制で、基本的には世襲制度も身分差もない。ソラリス王国や、外の世界の感覚とは違うのかもしれない。
「たまたま私は今評議会の議長をしているから変な勘違いをさせてしまったのかもしれないが、息子達は今のところ評議会とは関係ない仕事をしているしね」
王族なのに……
と言われて育ったせいか、血統は何よりも大事なものだという感覚が抜けないが、バレンタインさんの言うことも理解できる。
だけど、それだけじゃない。
「そんな事を気にしていたの? フランも余計なことを言って、悪気はなかったのでしょうけど困ったものね。じゃあ解決ね! 出ていくなんて言わないで」
「あ、あの、そのことはわかりました。ですが、お金を稼ぐために外で商人の方と約束もしているので、どのみちずっとここにはいられません。あの……ご親切にして頂いてありがとう存じます」
ローレンスさんたちとの約束があるのは本当だけど、他にも……こんなに親切にしてもらってもやはり何も返せないのは心苦しい。
与えてくれた服などの代金を払おうとしたが、地上の金貨とは違っていて、溶かして金にするにしてもすぐその辺でネイティブゴールドが採掘できるミネラルで、どのくらいの対価となるのかもわからない。
「街で襲われたって言ってなかった? また襲われたりするんじゃなくて?」
「そうだね、それは心配だな。誰に襲われたのかわかっているのかい?」
あ――すっかり忘れてたけど、そういえば捕縛の魔法陣の罠にかかって逃げたんだっけ――?
――誰だったんだろ?
「いえ。わかりません。でも今度は気をつけるので大丈夫です」
「気をつけてなんとかなるものでもないだろう?」
「そうよ! やっぱりここにいるのが安全よ、ここに居ればお金を稼ぐ必要もないじゃない」
だからそういうわけにもいかないんだってば……
困った顔で黙って俯くしかない私をみて、バレンタインさんがポンッと手を打つ。
「だったらデニスに相談してみるといい」
「デニスさんに?」
今回がデニスさんとたっぷり鉱物談義に花を咲かせる回のつもりだったのですが。。。全く石なんて出せませんでした;




