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魔法が使えない鉱物オタクの王女は、捨てられた山で王になる  作者: May
第二章『ミネラル』

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24/45

24. フランさん

 


「今日は色々あって疲れたでしょう? お話はまたゆっくりすればいいわ」

「そうだね、私たちは外の様子を全く知らないから少しづつ教えてくれ。ルナさんが来てくれて楽しみが増えたな」

「あぁ、聞きたいことが多過ぎる、近いうちに工房に来るといい」


 早く休むようにと、フローレンスさんが直々に私の為の部屋に案内してくれた。

 用意してくれた寝室はとても広い。育った王城の離宮の部屋にも劣らないほどだ。

 ブルー系で統一されており、広いのに妙に落ち着いた。

 キーパーはフカフカのベッドが初めてなのではしゃいでいたが、私がお風呂に入っている間にすでにぐっすり眠ってしまっていた。

 私もさすがに疲れたのと、久しぶりのちゃんとしたベッドにあっという間に意識を手放した。


 翌日、午前中はフローレンスさん専属のお針子さんが採寸に来てくれて私が着る服のデザインを、フローレンスさんが決めていた。

 その後はフローレンスさんとクララさんが護衛を二人連れて街を案内してくれた。


 都市国家ミネラルの中心部は見通しがよく、朝市は終わってしまっていたが、大小の商店が建ち並んでアルカディアの街並みと大きく違わない。

 外套を羽織らずに歩ける暖かさと、瑞々しい街路樹や道端の小さな花がなければ、ここが外界とは隔絶された場所であるとは実感できない。


 城にいた頃は街でフラフラ買い物したことは一度もない。ラピスアトリウムに来て、アルカディアに岩塩を売りに行くようになって初めて街歩きを覚えた。

 でも今日はキーパーがペンダントの中ではなくちゃんと私の周りを飛んで一緒に楽しんでくれている。


「そろそろフランは起きたかしらね?」

「そうですね、そろそろお仕事なさっている頃かと」


 私たちは、何階に当たるのかわからないが都市部の上に広がる階層にやってきた。途中には、色々な職人さんの工房のような建物や、大きな建物の研究棟もあった。開けたところには、畑や果樹園らしきものも拡がっており、さすがに異世界に来たような感覚になった。下の都市部よりも鉱物のエネルギーも強く感じられる。

 その細い道をくねくね奥まで進むと、少し小さめのドアにたどり着いた。ドアの中は洞窟に繋がっているように見える。


「フラン、起きてるかしら〜? 入るわよ」

 フローレンスさんが声をかけて小さめのドアをくぐると、ドアの大きさからは想像出来ないほど奥に広い空間があった。

 そしてそこに居たのは、二足歩行のアナグマ。

 やっぱり異世界なんだな……と少しワクワクしてしまう。


「ルナちゃん、こちらはフラン。ミネラルの中で一番長く生きているのよ。昼間は少し寝ぼけているの。キーパーちゃんと同じく高位精霊ね」

 なるほど、精霊だから二足歩行か。

 いや、精霊と二足歩行関係あるか?

 でも夜行性なのはアナグマらしいな。

「フラン、ルナちゃんとキーパーちゃんよ、色々教えてあげてくれる?」


 トテトテトテとアナグマ精霊フランさんが近寄り、小さな手を差し出す。

「やぁ。昨日上から降ってきたという外の客はあなたたちでしたか。初めまして、どうぞよろしく」

 アナグマがとっても紳士的である……

「あっ、あの初めまして」

 私とキーパーはアナグマの小さな手と握手して中に通された。

「今、お茶を煎れるから座ってください」

 アナグマがお茶を煎れてくれるらしい……



「フフフ、あなたは王の血筋ですね、王の匂いがする」

「え? ソラリス王国をご存知なのですか? でももうわたくしは王女ではありませんので」

 フランさんがコテッと首を傾げる。

「ああ、ソラリス王国の王女様でしたか、これは失礼しました。ですが、私が言った王の血筋というのは、このミネラルの王のことですよ」

 ハッハッハ、と笑っているが、小さい頃よく読んでいた物語のクライマックスのようなことを言われた気がしたのは私だけだろうか。



「え? …………え――!?」


「いやなに、そんなに驚くことでもありませんよ。ルナさんの瞳と髪のラピスラズリは美しい王の色だ。ちなみにバレンタインさんも王の血筋ですよ」

 おや? 

 一瞬凄いことを言われた気がして、心臓が飛び出そうになったが、

 フローレンスさんも、あらまぁそうなのね、という感じで楽しそうに聞いているだけだ。

 なんか、大したことない気がしてしまうのが不思議だ。この家の中は精霊の幻惑の力が満ちていたりするのだろうか。

 この後フランさんがなにかボソボソ呟いていたが動揺していてよく聞き取れなかった。



「やれやれ、このタイミングで現れるとはね。どうするおつもりやら……」




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