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魔法が使えない鉱物オタクの王女は、捨てられた山で王になる  作者: May
第二章『ミネラル』

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22/45

22. 鉱石料理は美味

 

 1時間も経っただろうか……

 そんなに経っていない気もするけど、ボーッと泉の底の水晶を見つめてるいるとキーパーが戻ってきた。


「こんなとこにいたのか。後始末はオレの配下たちで充分だからな、急いで帰ってきてやったぞ?」

 子分たちね……

「……うん。キーパーは大丈夫? 怪我してない?」

「直接戦闘したわけじゃないんだ、怪我なんかするわけないだろ。それでどうする? さっきの人間たちの所に戻るか?」


 あの人たちはずっと居てもいいって言ってたけど本当だろうか……

 本当は得体の知れない私を不審に思っていたりしないだろうか。


「気が進まないのか? さっきのとこは見たこともない果実をいっぱいくれたからな、オレは戻っても良いと思うけど、お前が嫌なら無理に戻らなくてもいいぞ? この森にだって美味いものは色々あるからな!」

「うーん、どう思う? キーパーはトビラの守護者? とか言ってたからあの人たちが歓迎してくれるのはわかるんだけど、私は別にあの人たちの役に立つ訳でもないのに親切にしてくれるのはおかしいよね……」

「なんでだよ? 役に立たないと気にいられないのか? 人間って変なんだな? 役になんてたたなくたって気にいることはいくらでもあるし、気に入ったら優しくしたいだろ? それだけじゃダメなのか?」

「そう……なの?」

「ルナはホントにめんどくさいな! だったらオレがあそこに行きたいから連れて行け! ひとりでは行けないオレの役に立て! それならいいか?」

「うん……いい」


「じゃっ! 戻るぞ!」


 キーパーが気に入った場所なら私ももう1回行ってみても大丈夫かもしれないし、なによりあそこは鉱物の声がとても心地よかった。


「転移! 森の1番奥の『ミネラル』」



 …………えっ!!

「きゃ――――っ!!」


「いや、なんでまた上から落ちるんだ?」


 前回と同じ。

 真っ逆さまに『ミネラル』中心部に向かって落下。

 ペンダントからニュルっと出てきたキーパーがマントのフードを捕まえて、

 私は首を吊られている。

 毎回こうやって入ってくるしかないんだろうか……

 トビラの開け方教えてもらわなきゃ。


 今回はそのままゆっくり真下まで落下する。

 下が見えてくるとバレンタインさんやフローレンスさんたち大勢の人たちがこちらを見てるのが確認できた。

 オーガスタスさんが大きく手を広げると、

 ぽとっ……

 あっ……

 キーパーが手(翼)を離し、私には重力加速がついてヒュンと落ちた。

 もちろん銀髪マッチョが見事なキャッチをして拍手が湧き起こる。

 よって……お姫様だっこをされている。

 本当に、ここへの入り方をちゃんと聞こう。



「おかえり〜! ルナちゃん、キーパーちゃん! さぁさぁご飯の用意ができてるわよー」

 フローレンスさんが駆け寄って、私とキーパーを撫でてくれる。

 はて?……



 私たちはフローレンスさんに晩餐の間に案内された。

 もちろんキーパーの席もある。

 ただ、私はあまり食事が好きではなかった。虐げられてはいたが王族として、充分な量の食事は用意されていた。

 飢えることがなかっただけでも感謝しなければならないが、食事を美味しいと思ったことはなかった。



「さぁさぁ、お腹がすいたでしょう? すぐ用意させますからね」

「奥様、俺たちまでご馳走になるわけにはいきませんので」

 オーガスタスさんと、フレデリックさん、デニスさんがさすがに恐縮しているが、

「あら、別に構わないわよね、あなた? どうせルナちゃんとキーパーちゃんと話をする為に食事が終わるのを待つつもりでしょう?」

「はぁ……ですが……」

「ルナちゃんまで気を使ってしまうわ。それに大勢で食べた方が楽しいのよ」


 さぁさぁ早く座りなさい、と有無を言わさず全員を座らせて、晩餐は始まった。


 まず薄い橙色の飲み物が私とキーパーの前に置かれ、他の大人たちは綺麗な桃色の飲み物が置かれた。


「それじゃ、ルナさんとキーパー殿と、我々ミネラルの出逢いに乾杯!」

 慌ててグラスを持ち上げて皆さんと目を合わせる。

 持ち上げると透明なグラスの底から、細い気泡が絶え間なく立ち上っているのが見える。ふわりと甘い香りもした。果実水?

 恐る恐る口をつける。

 次の瞬間、舌の上で小さな刺激が弾けた。

 ちくり、とするのに痛くない。

 冷たいのに、鋭くない。

 シュワシュワした刺激の後は遅れて、柔らかな甘さが追いかけてくる。

 ……なに、これ

 思わず目を見開いたまま、もう一口。

 今度は少しだけ慣れて、泡が喉を転がり落ちる感覚を味わう余裕ができた。

 危うく声が漏れそうになって、慌てて口元を押さえた。

 もう一度グラスの小さな泡を見る。

「おいしい……です。初めて飲みます」

 もぅ少しちゃんと感想を言えれば良いのだが、あいにく最低限の発言しか出来ない。

 でも……

「ホントだ! これもめちゃくちゃうめーな! シュワシュワして面白いし甘くてさっぱりしてうめー!」


「良かったわ。石灰岩で濾過された天然の発泡水はとっても美味しいのよ、それに体にもいいの。私たちはワインを発泡水で割ったものよ」


 その後に饗された物も、どれも知ってるのに食べたことがない美味しさのものばかりだった。

 サラダは体を冷やすので基本滅多に食べないしサラダの野菜は苦くて嫌いだったが、ここのサラダは苦味もなくて、少し酸味があって甘いソースも美味しかった。

 パンももちもち。

 それと、チーズ。酸っぱかったり硬くてモソモソしてこれも嫌いだったが、もぅ私の知ってるチーズじゃない。

 肉に至っては、今まで食べていた物は本当に肉だったのか怪しくなるレベルだ。



「美味しいかい? チーズや肉はジオード(晶洞)で熟成させているんだよ、パンも石蒸しのパンは、普通の白パンより美味いんだ。たくさん食べるといい」


 全部は食べきれなかったが、こんなにお腹いっぱい食べたのは生まれて初めてだ。

 うまく伝えられなかったが、今までの全てをひっくり返すほどの美味しさにしばらくうち震えた……


「おまえが残したものは全部食ってやるぞ?」

キーパーのお腹は大丈夫なのだろうか?



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