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魔法が使えない鉱物オタクの王女は、捨てられた山で王になる  作者: May
第二章『ミネラル』

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21. 侵入者

 

『ミネラル』にあるバレンタインさんの屋敷のサロンは高い天井から、柔らかな光が差し込んでいた。

 磨き上げられた石の床はひんやりとして、親分改め、キーパーが齧る果実の甘い香りがゆるく漂っている。

 両翼で器用に果実を抱えて、赤っぽいオレンジの皮に歯を立てると、果汁がじゅわりと弾ける。

「……うま」

 種をぺっ、とお皿に吐き出すと、翼をたたんで満足そうな顔を私に向けている。

 その時だった。

 キーパーの耳が、ぴくりと動く。

 さっきまでの緩んだ気配が、すっと消えた。

「……あー」

 新しい果実に齧り付き、咀嚼しながら、目を細める。

「ルナ、オレちょっと仕事してくっから、お前ここで大人しくしてろ」


 私もキーパーの能力が一部使える。

 ラピスアトリウム、キーパーの縄張りに人間が侵入したのを森に散っているコウモリたちが教えてくれているのが私にも聴こえた。


「私と一緒じゃないと親……キーパーも出入り出来ないんじゃない? 私も行く!」

 トビラの鍵となるラピスラズリは私が持ってるし、そもそもトビラの開け方をまだ教わっていないので転移して出入りするしかない。その転移石も私が持っている。


「どうしたの? 二人とも」

 フローレンスさんが心配してくれると同時にドアをノックしてオーガスタスさんが入って来た。


「失礼致します。バレンタイン様、トビラの外の境界にまた侵入者のようです」

「ああ、今キーパー殿とルナさんも感知したようだ。数はわかるか?」

「おそらく20~30くらいかと」

「増えてるな……」

「はっ、トビラの内側は念の為侵入者に備えております」


「オレが配下たちと蹴散らしてくるから問題ない。感謝しろ」

 配下じゃなくて子分ね……

 やっぱりコウモリの親分は偉そうだ。

 でも頼もしい!


「待って! ルナちゃんは危ないんじゃない?」

「大丈夫だよ! ルナとは接触させない」

「はい! 大丈夫です。行ってきます」


 キーパーと一緒だから全然怖くないし、人間と接触しても負ける気もしない。


「我々に出来ることがないのがもどかしいな……キーパー殿、よろしく頼む」

 バレンタインさんと後ろでオーガスタスさんもキーパーに頭を下げる。

「任せろ」


「ルナちゃん、危ないことしないのよ? 危険だと思ったらすぐ戻ってらっしゃい!」

「念の為、その転移石を見せて見ろ」

 皆が心配してデニスさんが転移石の不具合を確認してくれる。

「大丈夫だ、あと2、3回は余裕で転移出来る」

「すぐ帰って来るんじゃぞ」


「はい!」


 キーパーがペンダントに入り、私はその場からいつもの私の寝室、と言っても鉱山の洞窟の中だけど……に転移した。


「お前はこの山から出るなよ、いいな」


 そう言い残してキーパーはビューンと外に向かって飛んで行ってしまった。

 暗い洞窟の中で石の声と外のコウモリたちの声だけが聞こえる。



 ……やることないな。

 ついてきたのはいいけど、別に私が役に立つ訳でもないので

 トボトボ歩いて光るフローライトに囲まれた鉱泉の縁に座り、外の様子を聞いていた。


 立派な装備の軍人……騎士、だろうか? 2、30人程度とはいえ、何をしにわざわざ死の森「ネクロス大森林」に入ってきたのか。

 キーパーたちコウモリの声で方向感覚が狂い、集団は散らされ、どんどん暗い森の中に閉じ込められていく。

 ちょっとだけドキドキしながら耳を澄ましていたが、戦闘になる様子はない。

 ただ、勝手に迷って狂っていく……


 早く終わらないかな。

 この人たちがどうなるのかは考えないようにして、浄化された場所でじっとキーパーの帰りを待つ。



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