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魔法が使えない鉱物オタクの王女は、捨てられた山で王になる  作者: May
第一章『ラピスアトリウム』

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⒉ 【フローライト】光を発して照らすのは。

 

 目を覚ますと涙の跡があった……


 えっと、なんだっけ?キョロキョロ目だけ動かすと少しづつ頭が働きはじめる。


 そうだ。ネクロス大森林の中の洞窟だわ。

 思い出したくもないけれど、国王であるお父様に呪い呼ばわりされ、実質処刑されたのだった。

 泣きながら眠ってしまったようで、体が痛い。


「いててて……」


 さすがにゴツゴツとした岩に寄りかかって寝るのはダメね。



 石の声が聞こえてここまで来たけど、本当に人の手が入ってないのかしら? 

 入口付近で眠ってしまったようで外の光が入り込んでいる。

 おそらく朝だろう。

 入口と反対側は真っ暗だ。

 生活魔法のライトは、使えるといえば使えるけれど私の魔力では5分ともたない。


「フフフフフ……」


 見えなくても問題ない。

 ドレスをととのえて迷わず進む。

 こんなに強い力を感じるのは生まれて初めてだわ。力というのはもちろん、魔力のことではない。

 鉱物が発する力だ。

 むしろここはあまり魔力が感じられない。だからこそ鉱物の力が強く感じられる。




 導かれるまま進むと青や緑、紫、ピンク、無色透明……色々な色の光がチラホラ見えてきた。


 この先の光景を想像して、私の心臓は一気に早鐘を鳴らし始め、頬の筋肉がピクリピクリと痙攣を始めた。

 辿り着く前に過呼吸で死んでしまいそうなくらいに呼吸も乱れている。

 歩きづらい靴の音を早めるととうとう目的地に着いたようだ。



「あった!!」


 そこには澄んだ水場があった。鉱泉だ。

 鉱泉を囲むように、壁一面色々な色のフローライト(蛍石)が淡く光を発していた。


「はぁっ、はぁっ」


 凄い!が言いたいだけだが興奮しすぎて言葉が出ない。


 キラキラして、これだけの石が光っているのにうるさくない。

 歓迎してくれてる……

「フヒヒヒヒヒ……」

 こんな綺麗な石たちに好かれるなんて、もうここで死んでもいいかしら。



 いやいやいやいや、生きるためにここを探して来たんだから。

 宝石は恐ろしいわね。

 簡単に人の心を奪ってしまうわ。


 恐る恐る鉱泉に近付き、そっと手を入れる。


「フフフ……」


 冷たい。冷鉱泉だった。

 これで飲み水には困らないけど、これ、飲んで平気かしら。

 フローライトに照らされた泉をよく見ると、底もキラキラしていた。

 砂?

 腕まくりして底に手を伸ばすと縁から近いところは浅く、届いた。


「ちょっと見せてね」



 フッ!

 神様はどれだけ親切なのかしら。

 まあ神様なんて方がいたら、私はここに捨てられてないだろうけどね。



 冷鉱泉の底には、砕けたクォーツ(水晶)が砂利のように堆積していた。

 一面を覆うフローライトの結晶壁から滴る水が、絶えずそこへ落ちている。

 水晶はただ沈んでいるだけではない。

 水流と圧力を受け続けることで、結晶格子に蓄えられた歪みが微弱な振動を生み、

 その振動が、水に混じる不純な魔力や瘴気と共鳴すると、静かにそれらを崩していく。


 要するにこの冷鉱泉の水は、澄みきっている。


 フローライトが導き、水晶が整える水だ。

 鉱物だけで完結した、古い浄化の仕組みだった。



 私が手伝う必要がないのが少し残念だけど、このままでとても美味しいお水だった。


 人間ってお水だけでどのくらい生きていられるんだったかしら? 



 鉱泉の側に座り、壁一面のフローライトに頬ずりして抱きしめたい衝動を必死で堪える。

 フローライトは四方向に劈開を持ち、割れやすく摩擦にも強くない。

 私がスリスリしてこの美しさが損なわれたりしたら……

 ブルブルッ。



 こんな美しい光景が見れただけでも生まれてきた価値があったかもしれないわね。




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