18.【ミネラル】地下都市国家
剣先を向けられ、自分の次の行動がわからないまま私の視界は黒くなった。
武装した男たちと私の間に親分が入り込み、大きな翼膜を広げた。私は闇で包まれ守られている。
親分の翼のお陰で向こう側が見えないが、翼を広げた瞬間奥の方から男性の声が聞こえた。
「お前は、いや、其方はもしや、トビラの外を守る守護者か!?」
「何言ってるのかわからねーが、ここはどこだよ、なぜオレたちに剣を向ける?」
私も……なにか言わないと……
目の前で起こってることなのに口も体もこわばってなにも言葉が出てこない。
「ここは『ミネラル』だ。やはり其方たちは外から来た者か? どうやって入ってきた? 何が目的だ?」
「『ミネラル』? 外? 何言ってんのかわかんねーよ、まずは剣を収めろ! コイツは反撃しようともしてないだろ」
固まったままやり取りをただ見ている私を親分がチラっと見る。
暫く睨み合ったあと謎の武装集団は全員武器を収め、私たちから少し距離をとった。
1番後ろにいた濃い銀髪のマッチョな男性が少し前に出る。
「話を聞こう。まず、其方たちが何者でどうやってここに入ってきたのか教えてくれ」
「オレたちは街で襲われて、コイツの石で転移したら上から落っこちたんだよ、それだけだ。オレたちはここが何処なのか知らないし、お前たちに剣を向けられる理由もわからない」
「石? どんな物だ?」
ぼーっと二人(一人と一匹)のやり取りを見ていたがハッ! として、かろうじて指環の転移石を前に突き出すくらいはできた。
「ジルコンか。ラピスアトリウム産の物か?」
「ラピスアトリウムは知ってるのか? あそこはオレの縄張りだ」
「フッ、やはり其方は外側の守護者ではないか。 ラピスアトリウム産のジルコンならこの場所は当然知っているだろう、だが鍵がなければ入れないはずだ。他にも持っていないか?」
他……
いつも親分が入ってるヌーマイトを無言で見せてみる。
「すごいヌーマイトだな、俺は研究者でも職人でもないがすごい石だということくらいはわかる。なんなんだその娘は? だが、そうじゃない。鍵とはコレだ」
銀髪マッチョがピチピチの服の胸元からペンダントを取り出してこちらに掲げる。
……あっ!
「あっ、あ、あります」
やっと声が出た。マジックバッグ代わりのヌーマイトを仕込んだ懐から、母からもらったラピスラズリの指環を取り出す。
私も同じように掲げて見せると、アチラの全員から声があがる。
「本当に入ってきたのか!?」
「しかしなぜだ」
「それにしても濃くないか」
「なにが起きてるかわからないな」
「お嬢さん、怖がらせてすまなかった。謝罪しよう。俺はこの都市『ミネラル』のトビラの内側を守る仕事をしているオーガスタスだ。お嬢さんと、外側の守護者殿の名前を教えてはくれないか」
アチラの方々も状況の把握はしきれてないようだが、私たちはさっきから全く何も理解できていない。とりあえず、ラピスラズリの指環がココに入る鍵だったようだ、ということだけはなんとなくわかった。
少し前までのピリピリとした空気は無くなった。殺気? のようなものをお互い消してくれたのかもしれない。
「私はルナ……です。この親分……、このコウモリの魔物は名前はないです」
「魔物? いや、お嬢さん、魔物は鍵があってもここには入れない。その守護者殿は精霊だよ」
「「…………?」」
親分と顔を見合せてコトリと首を傾げた。
「とりあえずここではゆっくり話が出来ない。其方たちがココに入ってきた時点でミネラル側は侵入者を感知して今頃は対策本部が立ち上がっている。すまないが一緒に来てくれないか」
再び親分が殺気? を出しながら私を闇で包む。
「オレたちを捕らえるつもりなら無駄だ。コイツもオレに守られるだけじゃねぇ。コイツに下手なことをすれば全員命はないと思え」
「やれやれ、こちらの初動が悪かったのは認める。だが、素直に謝ってるんだ。少しは信用してくれ」
銀髪マッチョのオーガスタスさんは本当に困った顔でポリポリと頭をかいている。
後ろから親分の翼膜をツンツンと引っ張ると
「お前はホントに仕方ねーな、安心しろ、オレが守ってやる」
さっきからどこの王子様かと思うくらい目の前の漆黒の悪魔は頼もしい発言を繰り返す。
私たちはオーガスタスさん率いる都市防衛隊「ラピス」に案内されて、ミネラルの最下層にある都市の中心部にやってきた。
私たちがいた上層からはかなり遠いが、大きな箱のような乗り物に乗って一気に下まで降りることができた。
――『ミネラル評議会中央棟』――
「ここで少し待っていてくれ」
小さめの会議室のような部屋に通され暫く待っているとオーガスタスさんと3人の男性が入ってきた。
真ん中の男性は私と似た濃い瑠璃色の髪と瞳の色をした壮年。髪と瞳の色に合わせたのか、仕立ての良い濃い青の上衣は一見地味な見た目だが上質な布と品格漂うデザインがこの場の主役であることを主張していた。
親分がまた私の前に出る。




