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ミネラル ~捨てられた王女は石の声が聞こえます~  作者: May
第一章『ラピスアトリウム』

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15/15

15.【ガーネット】転移ミス

 

 ローレンスさんの指で光るフローライトはアメジストのような紫でとても綺麗だ。

 常に視界に入る指環に加工したのは娘さんからの贈り物が嬉しかったんだろう……

 できれば壊れないことを祈ろう。



「先日仕入れさせていただいた塩はとても好評でしたよ、ありがとうございます」

「あ、あの、こちらこそ。今日は少し多めに持ってきたんですけど」



 そして今日はもぅひとつ、地味で売れるか売れないかわからないギリギリの物を作って来た! 私としては自信作だ!



「あの……こんな物も仕入れたのですけれど」


 テーブルの上に岩塩(砕いたやつ)と一緒にもう1つ手のひら程の小さな巾着を出した。


「これは鉄粉ですか?」


 はい! 【磁鉄鉱】の砂鉄に【アダマンタイト】を混ぜた鉄粉! 先日親分たちと見に行ったミスリル鉱山で見付けたアダマンタイトはこの世界でも人気、というかほぼ出回っていない。奇跡の魔鉱石じゃないだろうか。硬度に特化した魔剣も作れる。

 魔力と相性の悪い私にアダマンタイトの繊細な加工は無理なのと、硬度故に他の物質に馴染みにくいという欠点を砂鉄に混ぜることで補ってみた。

 ほんの少し剣の素材に混ぜるだけで、あらまぁなんてことでしょう! 劣化版魔剣の出来上がり!

 しかもどこからどう見てもただの鉄粉。

 完璧だ! えっへん。




 ローレンスさんは匂いを嗅ぎ、指でざらりと触って角度を変えて観察している。


「はい、魔力と相性がいい鉄らしくて、剣を打つ時に少しだけ混ぜるといいそうです。鍛造でも鋳造でも、ど、どちらでも……」


「ほう、またおもしろい物を。……うーん、ですが値段の付けようがないですなぁ」


 がっくり……


「とりあえず、今日のところはこれでいかがでしょう?」


 金貨を1枚差し出しながらローレンスさんはまだうーんうーんと唸っている。

 充分ですけど?


「このような物は初めて見ますので、使ってみないことには価値をはかりきれません。次回までに検証させて頂くということでよろしいでしょうか」

「あっ、それなら、お代はその時でも構いません。金貨1枚は頂き過ぎかもしれませんので」

「それはいいのですよ。この様なおもしろい物を見せていただいただけでそれ以上の価値がございますので」


 ホントに良い人なのかもしれない。


「それでは、ありがたく頂戴致します」



 岩塩と鉄粉を売ってルンルンと買い物に向かった。

 今日は先日買った地味な古着にマントのフードで髪も隠して街に溶け込んでいる。さらに金貨はローレンスさんに崩して貰った。念の為に防御用の鉱物は懐のマジックバッグ(ヌーマイト製)に隠し持っている。

 もう強盗には遭わない。



「さっきの鉄、なんか凄い魔力感じたぞ?」

「アダマンタイトを砕いて混ぜたのよ、人間って魔力含有量の多い武器が好きなのよ」

「へー、ルナには価値のない武器だな」

 むぅ……

「わかってるわよ。相性悪くて持てないわね」

「それよりなんで人間の前だとウジウジするんだよ、あの指環壊れそうだってちゃんと言ってやれば良かったじゃないか」

「だって……私なんかが何言ったって信じるかわかんないし、変なこと言って変な子だって思われたら嫌でしょう?」

「なんだよそれ、変なんだからいいじゃねーか、壊れるってわかってるもの教えてやらない方が変だぞ」

「…………」

 そんなことわかってるもん。

 ぷくぅと頬を膨らませてプイ!とペンダントから目を逸らす。



 昼下がりの街は騒がしく、人通りの多い通りだった。誰もが足早に目的地へむかっているようだ。

 前回ゆっくり見て回れなかったので、あちこちの珍しい物に気を散らされている。



 だからこそ、異変に気づくのが遅れてしまった。


 風でも熱でもない、魔力が向かって来る感覚。


 石畳に淡い光が走る。


「――っ!」


 捕縛用の魔法陣!? また私――!?

 引っぱられる感覚。


「おい! 指環使え!!」

 親分が叫ぶ。


 指環の【ガーネット】に向かって

「森の一番奥!!」

 と座標を指定する。

 魔法陣に向かって体勢が崩れるのと同時に視界が反転する。


 間に合った……


 ……って、

 え――――――!!


 視界が開けた瞬間、重力加速度に転移の勢いが加わって凄い勢いで真下に落下している。


 あぁ、とうとう死ぬのね……

 元々、親分のおかげでちょっと永らえただけの人生だったんだ。これ以上生きていたって誰も喜ばないことくらいわかっていた。

 充分だな。

 妙に冷静に辺りを見渡す余裕さえある。

 ところでここはどこだろうか?

 アルカディアの街中でないのは確かだ。

 私は転移石のガーネットに確か、

「森の一番奥」

 と、指定した気がする。


 そんな事を考えてるといつの間にか落下スピードが落ちた。

 ペンダントからニュルりと親分が飛び出してマントのフードを掴んで浮いていた。


「首……締まっちゃうんだけど」

「重いぞお前!」

「ところでここ、どこ?」



 宙に浮いた私と親分の眼下には、アルカディアよりも大きな街が広がっていた。





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