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魔法が使えない鉱物オタクの王女は、捨てられた山で王になる  作者: May
第一章『ラピスアトリウム』

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⒑【ジルコン】ダイヤモンド✕

 

 バルム商会、応接室にて。


「お初にお目にかかります……」


 ローレンスさんは一瞬何かに驚いたように私を見詰めたが、すぐに取り繕ってソファーに案内してくれた。


「素晴らしい物を持ち込んでいただいてありがとうございます。ちなみにどちらで手に入れられた物ですか?」


 えっと……どちら? どちらってなんだろう。


「た、旅の途中でたまたま……」

「そうですか。アルカディアは初めてですか?」

「あ、は、はい。さっき着いたばかりで……」

「そうでしたか。宿はもうお決まりですか?」


 や、やど!?泊まるつもりなんてなかったから考えてなかった。


「いえ……まだ時間も早いので色々見て回ろうと思っております」

「宿のご紹介程度でしたらできますので、いつでもご相談くださいね」

「あっ、ありがとう存じます」



 ローレンスさんが岩塩の入った袋を持ち上げると、横からセオドアさんがトレーに乗せた金貨を差し出した。

「それで、買い取り価格ですが、これでいかがでしょうか?」


 金貨が5枚……

 どうしよう……相場がわからない。調べてから来ればよかった。

「あの……はい。充分です。それでお願いいたします。ありがとう存じます」


 もう当てずっぽうで応じるしかない。売れないよりはマシだ。


「ところでこの塩はまた手に入れることは出来ますか?」


 今のところいくらでもあります!!


「は、はい、多分大丈夫だと思いますけれど……」

「では、沢山お持ちいただければ価格も再考させていただきますので是非お持ちください」

「……わかりました」

「セオドア!」

「はっ」


 またセオドアさんが何かをテーブルの上に置いた。


「ルナ様、これをお使いください」

 茶色の革袋を差し出された。マジックバッグだろう。


「あの……大変申し訳ございません。わたくしは魔力が少ないのでこれを使う事ができません。ご厚意だけ有難く頂戴いたします」


「これは、こちらこそ、大変な失礼を致しました。お許しください」


「いえ、どうぞお気になさらず。慣れておりますので」


 あっ、余計なことを言ってしまったかしら。少し気まずい空気になってしまった。

 どうしよう、この空気感、前に何度も城で経験したことがある。私にはこの処理方法がわからない……


「話は変わりますが、ルナ様はダイヤがお好きなのですか?」


 ローレンスさんがにっこり笑いかけてくれたことで、少しだけ雰囲気が和んだ。

 良かった。


「胸元のダイヤも、黒さの中に深い輝きがございますし、リングのダイヤは素晴らしい透明度です」


 ダイヤじゃないけどねぇ。

 指環に加工した転移石の【ジルコン】はたしかに本物のダイヤモンドのような輝きを放つ。だけど装飾用のカットはしていないし、さらにジルコンにガーネットと磁鉄鉱を差し込んで歪な形だ。

 この世界の人間にはなんの価値もない。


「いえ、どちらも拾った石で、そのようにお誉め頂くような品物ではございません」


「そうですか。ダイヤなども仕入れてきて頂けるようでしたら喜んで買い取らせてもらいますよ」


「良いものに出会えたら仕入れてまいります」


 私は手のひら程の岩塩と金貨5枚を交換してバルム商会をあとにした。




「はぁっ、なんかすっごい疲れた。やっぱり人間って苦手かも」

「お前の心臓の音がずっとうるさくて、暇なのに昼寝も出来なかったぞ、なにが拾った石だよ」


「嘘はついてないもん」


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