16 瑠璃子の過激な行動
瑠璃子は響子と同じようにかなりの美人だったので、同級生だけでなく上級生の男子からも注目されており、まだ1年生だというのに何度かラブレターを受け取っていたが、すべて読みもせずに相手に突き返していた。
瑠璃子にとっては学校の男子は幼く見えて男としては到底考えられなかった。今の瑠璃子が興味をもっているのは大人の男性、具体的にはこれまで一緒に音楽をやってきた英介だったのだ。
瑠璃子の周りの女子はアイドルや学校のイケメン男子の話で盛り上がっていたが、瑠璃子は特にイケメンというわけではないがまあまあ整った顔立ちをしていてまっすぐな心をもった英介に興味津々だったのだ。
姉の響子が恋愛に疎いというかはっきりしないので、まだ中学生ではあるが英介に近づき、刺激してやりたいなどと思うようになっていた。
もちろん姉の前ではこれまで通りおとなしくしていたが、ある日姉がお手洗いに行くと英介の面前に行き、いきなり
「ねえ、キスして!」
と言って目をつむって唇を英介の方へ向けた。
「何言ってるんだよ。いきなり」
「じゃ、英介さんと響子姉ちゃんは恋人同士なの?」
「いや、そんなんじゃないよ。ただの合奏友達さ」
「じゃ、いいじゃない。私、英介さんが好き。ほら、胸も大きくなってきたでしょ。もう小学生じゃないし。中学生よ」
「そんな、年齢が離れてるし」
「愛に年齢なんて関係ないはずよ。英介さんが好きなの」
するとお手洗いから帰ってきた響子がドアを開けた。その瞬間瑠璃子はとっさに英介から離れて何もなかったかのように振る舞った。
この状況に、平均的な女性だったら何かを感じたかもしれないが、恋愛に疎く、しかもこの部屋にいる女性はまだ中学生になったばかりの妹しかいないせいか響子は特に何も感じることなくピアノに戻り、また練習が始まった。
けれども響子がピアノを弾いている時、瑠璃子はヴァイオリンを弾いている英介のことをじっと見つめているようになった。
もちろん英介はピアノの音を聞きつつヴァイオリンの演奏に集中しているのだが、自分の方をじっと見つめている瑠璃子に気がつき、先ほどの瑠璃子の過激な行動が脳裏をよぎり、時々音を外してしまうのだった。
響子は英介の演奏上のミスには寛大なのだが、
「英介さん、今日は音程を外すことが多いわね。調子が悪いのかしら?」
と優しくはあるし全く咎めるような感じではないが、言葉にはしなくても、もう少ししっかり集中してよ、という気持ちが感じられた。




