15 嵐の予感
喧嘩をして国交断絶のような感じになっていたのに、信じられないほどすんなりと自然に元通りの合奏練習が始まった。これが音楽のちからということなのだろうか。
少女から少し成長した感じの瑠璃子は姉を手伝って譜めくりをしたり、たまに姉と代わってピアノを弾いたり楽しそうにしていた。
瑠璃子がいるおかげで、妄想にはほとんど悩まされることなく、音楽を通じた清らかな交わりが始まっていた。
この状態に戻れて3人とも心楽しく、穏やかな気持ちになれていて、またパガニーニの『カンタービレ』の美しさ、そしてそれが少しずつではあるが完成に近づいている喜びを存分に味わっていた。
練習の途中では必ず休憩が入るのだが、その時はいつもミルクティーかアップルティー、和菓子の場合は緑茶に何らかのスイーツがついていた。
瑠璃子は上機嫌で
「今日のお菓子はきんつばです。小豆は体に良いらしいですよ。緑茶とも合いますからね」
こうして極めて自然に月に1回の合奏練習が再開し、楽しく練習をし、練習が終わると次の練習の日を楽しみにして日々を過ごしているのだった。
心穏やかで楽しい合奏練習。響子と英介の関係は奇跡的に修復されたようだった。
ところがここで意外な問題が生じようとしていた。
これまでいつもおしとやかだった瑠璃子の心の変化だ。
これまでは姉と英介がおかしなことにならないようにいつも二人にそっと付き添っていた。姉の響子と同じように控えめで大人しい妹のように振る舞っていたが、実は響子と瑠璃子はかなり性格が違う姉妹だったのだ。
瑠璃子は実は女として激しいものを内面にもっていたのだ。これまでは小学生だったのでまだそれが目覚めていなかったのだが、この春から中学生になったことに伴って急速に男女の関係、恋愛というものに興味をもちはじめていた。




