社畜はお疲れのようです
村人たちのざわめきが少し落ち着いたころ、
人混みをかき分けて一人の老人がゆっくりと歩み寄ってきた。
白髪にくしゃくしゃの笑顔。リクによく似た目元の、
──多分、じーちゃんだな。
「じーちゃん!」
「おう、リク。あの鎧が……ヨロさんかい?」
「うん!喋るし、怒るし、ちょっとぼやくけど、でも優しいよ!
ほら、僕のお守りもちゃんと受け取ってくれたんだ!」
リクが誇らしげに胸を張る。
ヨロさんの胸には、リクの貼った手作りのお札がまだペタッと残っていた。
にじんだ墨の文字が「まもり」と読めなくもない。
「あれか……あれを受け取ってくれたのかい、ヨロさん」
ヨロさんは、それを聞いてちょっとだけ目線を落とした……気がした。
(※実際は視線動かないけど、気配でなんとなく)
「村の皆、聞いておくれ!」
じーちゃんは周囲に向き直って、ゆっくりとした声で言った。
「ヨロさんは……確かに不思議な存在じゃ。
でも、ちゃんと話せば返してくれるし、何より……“お守りを断らん心”がある。
神か邪神かなんて、もうどうでもいい。
この方は、ちゃんと“わしらの言葉”で話せる存在じゃよ」
少しざわめいていた村人たちが、静まり返る。
「だからな──あんまり崇めすぎたり、おどろきすぎたりせずに、
普通に話しかけてやってくれ。神でも、話せば人だ。……そうじゃろ、ヨロさん?」
「……まあ、話しかけられりゃ……返すよ。暇だし」
ヨロさんのぼそっとした一言に、村の空気がふっと和らいだ。
「ほらな。神様でも、疲れるんじゃよ」