村の広場にて
「じーちゃん! ヨロさんだよ!!しゃべる鎧だよ!!」
リクの声が広場に響き渡る。
その声を聞きつけて、ぞろぞろと村人たちが集まってきた。
その数、十人、二十人……。
まさかの、ちょっとした祭り状態だ。
「おい、ほんとか? あの納屋の鎧が動いたって?」
「いや、動かないけどしゃべるらしい。さっきも神託を──」
「マジで!? 俺、昨日あれに手合わせたけど、特に反応なかったぞ……」
「それ、お前が無信心だからじゃね?」
「あっ……かも……」
「やっぱり……あれ、“神様の声”だったんだ……!」
「違うって! アレは“邪神の鎧”だ!近づいたら呪われるに決まってんだろ!」
「でも最近、雨もちょうどいいし、作物の出来もいいんだよな……」
「それは関係ない!いや、あるのか!? 神か!?邪神か!?どっちだ!?」
なんかもう、信仰と疑念と謎のテンションで村人たちがぐるぐる回り始めている。
(……おい、邪神に手を合わせて大丈夫か?
というか、手合わせる前にちょっと確認しような、常識的に……)
俺は地面に置かれたまま、ボヤくように言った。
「……落ち着けよみんな。こっちは動けないただの鉄の塊だぞ……」
「それが神の謙虚さか……!」
「騙されるな!見た目が立派なほど、内面はドス黒いんだ……!」
「いやほんと、どっちでもいいから静かにして……
マジで耳鳴りしてきた。頭痛い……」